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10年前の少女が泣いた  作者: 冷凍みかん
episode1: あと、365日が5回だけ
12/19

11




 

 いくつも設置された客室のうち、枢は1番ダンスホールから遠い部屋を選んで入っていた。


 ダブルサイズのベッドに女を寝かせ、自分は端の方に腰掛けている。


 客室はホテルのように設備が良く、居心地が良かった。枢はああいったパーティをあまり好まないため、女を看ているという口実の元にサボっているのである。


 この静かな都合のいい部屋で、枢は片手で器用に小説を読んでいた。枢は読書の時間が仕事の次に長い。


 時が止まったかのような平穏と静寂。時折聞こえる少女の寝息と紙を捲る音は雑音などでは決してなく、枢にとっての心地よさを助長している。


 目の前の大きな鏡には、絵画のような穏やかな風景が広がっている。


 そんな素晴らしいこの空間に、突如衝撃が走った。




 パァン




 遠くから、微かだが確かな銃声。


 枢は反射的に本を閉じ、スーツのポケットに仕舞った。



 「どこのおバカさんかな…発砲したのは」



 独り言で枢は呟く。


 その枢の後頭部には、銃口が突きつけられていた。








 パシュ













 「もう…本当に酷いわね」


 冬馬が撃った麻酔弾は女には当たらなかった。太腿を狙った軌道を読まれ、華麗に避けられたのだ。一切の動揺を見せず、女は冬馬に笑いかける。



 「でも、貴方ってなかなか素敵。神崎…冬馬さんだったかしら…?私だけ名前を知ってるなんて失礼よね。教えて差し上げる…私は『ニコ』。そう呼ばれてる」


 「ニコだァ?バリバリのコードネームじゃねェか」



 実名にはあまり聞かない珍しい名前。冬馬が言うようにコードネームだと思っても仕方がない。



 「私はこの辺りでお暇するわ、神崎さん。また遊びましょうね♡」


 「なっ…おい!」



 「ニコ」と名乗る女は手摺に乗ったまま重心を後ろに傾けた。


 そのまま重力に抗うことなく真っ逆さまに落ちていく。


 冬馬は手摺から身を乗り出して下を見渡したが、人影は既に無かった。



 「チッ」



 冬馬は標的を完全に見失ったのだった。







感想など頂けると嬉しいです

次回の投稿、来週中にはと思います

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