prolog
「茜色の空の下 独りの私」
「や、やめろ…なんなんだよ、その目…気持ち悪いんだよ!!」
女がヒールの音を響かせながら男に近付いていく。
「愛おしく輝くあの月を 毎日見上げるのはここ」
「やめてくれ!!」
男は仰向けで床に倒れ込んでいて、腕で必死に体を引きずって逃げる。
男の恐怖を帯びた目線は女の瞳に注がれている。
「月光の眩しい宵のころ その光に目をくらまし」
「やめ…ひっ!嫌だ!助けてくれぇぇえええ!!」
女は何か呟きながら一定のペースで男を壁際へと追い込んでいく。
男は頭を勢い良く壁に打ち、逃げ場が無くなったことを知らされた。
40代半ばほどで少し髭を伸ばしたその男は、両の瞳から涙を流し、額には脂汗が光っている。
男は女の瞳から目をそらすことが出来ないでいた。
女の瞳はーーー深い紅の色。
女は右手を少し上げて、その手に持っていたデリンジャーを構えた。
カチャリ、と小さく金属音。
「…その思いに目を閉じて」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
パシュ
初連載です。拙いところばかりですが、暖かい目で見守って頂けると幸いです。
どうぞよろしくお願いします。