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第五話「殺伐少女珍道中」(前)

 娼婦街にそびえる宿屋の三階個室にうら若き乙女が二人、取り残されていた。

 ――転士だとバラされたくなければ、従え。

 無言の圧力になすすべなく、アケミとタカノは連れ込まれた。立地が立地な上に一階が浴場といういかにもな如何わしさに、彼女達は怯えた。貞操の危機だと。

 ところがこの部屋に押し込めたドラーと名乗る商人は、少女の柔らかな肌に一切触れることなく、多少話をしただけで夜遊びに行ってしまった。朝の八時に迎えが来るからそれまでゆっくり休むといい、などと言い残して。

 馬小屋よりはマシな寝床に、油臭い服とところどころ裂けた僧衣、それから気前の良い男が置き去りにした外套と帽子が吊るされている。その隅でアケミは布に包まって体育座りをしていた。流水の音が止むと、一糸纏わぬタカノが傍に来る。


「いや~部屋にシャワーがあって助かったね。下のお風呂は多分、如何わしいことに使うし……」

「タ、タカノちゃん、見えてる!」


 自身の髪の色に負けないくらい頬を赤く染め、アケミは目を逸らす。そんな初心な反応をされたものだから、タカノは少し友人をからかうことにした。


「じゃあアケミちゃんのタオル貸して」

「え……それだとボクが丸見えなんだけど……」

「へぇ、友達が濡れっぱなしでいいんだ。ひどーい、風邪引いちゃうかも」

「わ、わかったよ、ほらどうぞ……ってえっ、ちょっと!」

「二人で共有すればいいじゃない、ね」


 布の代わりにタカノに覆い被さられ、アケミは一層赤くなった。荒い息まで相手の顔にかかって隠せない。心臓の音を聞かれるのさえ恥ずかしく思った。

 見られている。見えている。天使のように美しい肢体を前にすれば、ただただ魅入られる。耐えられなくなる。


「タカノ、さん……悪ふざけがすぎるよ……」

「ごめんごめん。日本人は裸の付き合いとか普通って聞いてたから、ちょっとやってみたくなって。でもアケミちゃんはそういうの苦手だよね、やっぱり」


 アケミは返答に困った。なんとも複雑な気分である。今はもう女の子同士とはいえ元を正せば異性の関係か、いや性別などはこの際さて置き――友情と愛情の一線を超えたスキンシップになるのが、怖いのかそれとも本意なのかもわからず。

 ――しばしの沈黙。

 間が持たず離した手で、タカノは胸元を覆い隠した。気恥ずかしいのを作り笑顔で誤魔化して、


「そ、それにしても無事で良かったよ。あの人紳士で、転士に手を出すなんてとんでもないって」

《安心しな、オマエラ転士に生殖能力はない》


 空気を読まず傍観者がニタニタと話しかけてくる。そういう問題ではないとツッコまれても生娘の初々しい反応に悦ぶばかりだ。


《まぁ正確には子供が出来ないというより作る余地がないんだがな。オマエラは神のクリスタルを孕んだ妊婦なんだよ。男じゃなくて女の体なのは合理的って奴だな。赤ん坊とは逆にそのクリスタルが母体を生かし、支配している。だから取られたらおしまいっつーの。タカノ、わかってんのか?》

「クリスタルを奪われたら、私の残機無限(コンティニュー)も意味ない……だよね?」


 そう言って、タカノは腹部を擦った。古今東西の不死身の英雄には決まって弱点があり、そこを突かれて死ぬのが常だ。


《でもまぁ生きてんじゃん。オマエラが必死こいて逃げてる間に始末された二人よりラッキーだ。明日もそうとは限らねーが。精々しっかり反省会をやることだな》


 てんせーくんは欠伸のふりをしながら消える。口こそ悪いが彼なりに応援してくれていることは二人にも感じ取れた。もっとも転士を戦いに焚き付けるのがゲームマスターの仕事でもあったが。


「ラッキー、かぁ……」


 格上の転士に見逃されたことを思い出し、アケミは震える手をじっと見つめた。ワルグリアがあの性格でなければとっくに敗退していたという事実に苛まれる。確かに今生きてこうしているのは幸運だが、ちっぽけな自尊心についた傷は時間が経つほど痛む。

 不意に、そんなアケミの手をタカノは掴んだ。すれば震えが止まる。いつものように。髪と全く同じように蒼く濡らし、されど強い決意を固めた真っ直ぐな瞳で、


「私が、不死身の私がアケミちゃんの盾になるから。今度は絶対、守ってみせるよ」


 口説くものだから、アケミは再び紅潮すれどようやく破顔して言った。


「ありがとう、タカノちゃん。一緒にいてくれて」

「当然だよ。一緒に生き残ろう!」


 いつか最後の最後には、二人殺し合う運命と知りながら――

 夜が更けていく。少女達はひとまず身を寄せ合い、十分な睡眠を取ることにした。



 疲れ切ってすぐに寝付いたものの、アケミは三時間程で目を覚ました。

 どうしても本能が警戒を怠らない。先に寝ないで見張りをすべきだったかと後悔しつつも、ひとまず相棒が無事であればそれでいい――伏したまま体をひっくり返せば寝る前と変わりない彼女が確かにいた。背中を向けて何か呟いていることを除けば。

 寝言だろうか。アケミは傍耳を立てる。いや、寝言にしてはハッキリと、声が震えているのがわかった。


「神よ……貴方様は何度も死を味わわせる為にこの体をくださったのですか……どんなに痛くて苦しいか……これほどまでに、私は、罪深いというのですか……?」


 鼻を啜る音も聞こえてくる。きっと泣いているに違いない、見ずともアケミにはわかった。そう、タカノは泣き顔を見せない。見せまいとしている。

 アケミは声を掛けようとして――できなかった。また裏返って、聞かなかったことにした。実際タカノはどうかはわからないが、自分なら聞かれたくない弱音だったから。辛いのはアケミ一人ではない、それだから余計辛くなった。

 不死身だから死が怖くない、なんてそんなはずないくらい、想像できなかった馬鹿な己を殺してやりたい。アケミは必死に唇を噛む。抗えない眠気に再び誘われるまで、ずっと――



「大変、アケミちゃん起きて、起きてってば!」

「待って……あともう一皿……ハマチ……」

「兵隊が来てるんだって!」


 寝坊助をベッドから叩き落とし、タカノは慌てて服を着ている。アケミが吃驚して窓を覗けばとっくに太陽が燦々と照らしているばかりか、宿屋の前に銃剣を担いだ衛兵達が続々と集結しているではないか!


「な、なんで……いや、あいつの仕業か!」


 すぐさま昨夜のでっぷりとした胡乱な商人の笑顔が思い出された。とんだ狸親父である。彼はこんなことも確かに言っていた、「商売というのは十の種を蒔いて一の成功という果実を収穫できれば良い、何が実るかわからない凡才故、私は百も千も種を蒔く」と。敗走する転士達を助けたのも、後で通報したのも、等しく蒔いた種の一つに過ぎなかったのだ。

 寝起きで頭の回らないアケミはただただ憤慨するが、先に目覚めたタカノは彼の意図の全てに気付いた。恩を売っても怨みは買いたくない商人が逃げ道を用意してくれていたことにも。そしてそれを無駄にしてしまったことも。


「あ、『八時に迎えが来る』ってこういう意味だったみたい。ごめんアケミちゃん、私がもうちょっと早起き出来てたら」

「いやタカノちゃんだって疲れてたし、二度寝したボクのせいだ……どどどうしよどうしよう」

「落ち着いて! と、とりあえずこれ着て」


 タカノ自身パニックになりそうなのを抑えながら、ドラーが残した外套をアケミに渡す。今更変装したところでどうにもならないのだが。それでもいつもと違う衣に袖を通せば転士アケミであるという事実を隠せるような気がして、少し安心感を覚えた矢先。

 ――コンコン、響くノック。

 部屋に立てこもる二匹の仔羊は戦慄した。さっき外にいた衛兵がもう迫っているというのか。アケミはホテルの人かもと呟くが、いかにもそうだったらいいのにという希望的観測に過ぎない。だとしても、追い詰められている状況に変わりない。

 ガチャガチャと開錠する音がする。その強引さは儚い楽観論を容易く吹き飛ばした。逃げ場はない。扉が開かれるのを囚人達は固唾を飲んで見守る他なかった。

 満を持してそいつは現れた。

 衛兵ではない、むしろより性質の悪い者だ。ゴシックロリータを思わせる帽子とドレスに身を包み、カールを巻いた栗色のロングヘアーはいくら高級娼婦でもここまで令嬢風ではないという場違いさを醸し出している。さらに眼鏡がここクリスタリカで一般的な鼻眼鏡ではなく、現代的な耳に引っかけるタイプだった。異世界人特有の美意識がなせるファッションと言って差し支えない。


「ハロー、ニーハオ、グーテンモーゲン。それともオハヨー、かしら? 目覚めの気分はどうかしら?」

「……最悪」

「グッドモーニング。はい、朝刊。一面に嘘書いてあるけどね。だってそっちの方、死んでないじゃない」


 配達人は丸めた紙をぽいっと投げつける。毎度お馴染みソレイユ新聞だ。見れば昨日の応天門前での出来事が克明に書かれていた。当然、記者の目の前でタカノが射られたことまで。


「さっき商談のついでに小耳に挟んでね、一階ロビーで待ってたんだけど……やっぱり私自ら確かめに来て正解。本当に二人ともいるとは。つまりタカノ、アンタのチートは回復力、防御力……あるいは蘇生能力! そういうの一つは持っておきたいわよね」

「貴方はもしや、サタニエさん? 文化王の十二志士、それに……」

「へぇ、どこかで会った? いや、転士というより企業家で知られているかしら。いかにもロフォカレ商会をやってるサタニエよ。以後お見知りおきを」


 そう言って今度は名刺を投げる転士サタニエ。彼女は先帝時代に召喚された先輩であり、同時に経済界の大物でもあった。成金ドラーもビジネスパートナーの一人なのは言うまでもない。

 新聞、名刺の次にサタニエは拳銃を突きつける。前門の虎、後門の狼。冷徹なるビジネスウーマンは取引を迫る。


「さて外は働き蜂が集っているわよねぇ。女王蜂が来るのを待っているのかしら。八勇者の誰だろうねぇ。武闘派のラスカルとかなら一秒ももたないわ。逃げるなら今しかない。どう、逃がしてほしい? いいわよ。けど定員は一名様。代金として……もう一人のクリスタルを渡しなさい!」

「何だって!?」

「一人の命で一人助かる。わかりやすくて公平でしょ」


 そう騙って二人とも殺すつもりでは、とアケミが叫ぶ。第一逃げられる確証などないと疑いの目を向けて。それを信じないのはおかしいとサタニエは嘲笑した。


「帰る手段もなく飛んで火に入るものですか! 私は超が付くお金持ちだからね、下っ端の役人を買収するなど容易いの。理解した? ちなみに取引を断ったら……それくらい想像しなさいよ」


 悪徳商人は銃口を向けながら三分間の相談時間をやると言った。依然入口を塞ぐように立ち、距離を詰めさせない。タカノは耳打ちで思いを伝える。


「私はアケミちゃんを売ったりしないから」

「ボクもだよ。一緒に頑張ろうって言ったじゃない」

「ありがとう。なら、私が体を張るから、後ろからブーメランを」


 コクリとアケミは頷く。その時何か思いついて、タカノに耳打ちした。


「相談すればと言ったけど、コソコソされるとむかつくわね。もういいや、答えを聞かせてもらえないかしら」

「わかったよ。ぼ、ボクのクリスタルをあげるから、タカノちゃんを助けて」

「へぇ。アンタ自己犠牲とかするタイプに見えないけど? 声震えてるじゃない。それに私としてはタカノのチートの方が欲しかったわね」

「そう? ボクのチートも結構スゴイぜ。取引の前に見せようか、それがフェア、だろ」


 アケミは宝箱を出現させた。十分警戒しながらサタニエは詳細を問う。中を見ればわかると使用者は答え、箱を開け――蹴り倒した。

 眩い光がサタニエの視界を一瞬奪う。攻撃されたとすぐに判断し、闇雲に一発撃った。しかし銃弾は肉の壁に遮られ、アケミには届かない。白い光が収束すると、突進するタカノだけが目に映った。

 手筈通りアケミがブーメランを投げようとした時にはもう、タカノはサタニエの手を押さえるどころか勢い余って押し倒していた。華奢な令嬢は抵抗空しく動けない。チートを使う素振りが見えないのは戦闘向けの能力でないことの証左である。そうでなければ銃を脅しには使わないし、まどろっこしく取引を持ちかける必要も無かったろう。


「くっ放せ、放しなさいってば!」

「死んでも離さない! 私も一緒に戦うんだから、アケミちゃん!」

「タカノちゃん、ごめんどいて!」


 確実に仕留める為にブーメランを持ったままアケミは駆け寄る。タカノを避けて敵を刺すつもりで。

 しかし、その時ダンダンダンと激しい足音が三人の動きを止めた。階段を駆け足で登る音だ。反転してアケミは窓を覗くと、先程より衛兵の数が増えるでなく減っていた。血気盛んなのか仕事熱心なだけかはともかく、先走って突入したのが今音を響かせている。

 この緊迫した状況にサタニエは血相を変え、より激しく訴えた。


「いいから退きなさい! まとめてお陀仏したいわけ!? 私の金で活路を開いてやるから、お願いだから!」

「そんなの貴方を倒せば……」

「バッカじゃないのッ! 私のチートが金を生み出してるんだから、私を倒しても能力を引き継げなきゃパーよ! 博打で死ぬ気!? 相棒も道連れに?」


 気迫に飲まれタカノの手が緩む。その隙にひっくり返し、逃れるサタニエ。その勢いで窓際まで一気に走り、アケミまで押しのけて出口を開く。

 外のやや冷めた衛兵達も一斉に三階の窓を見上げ、慌てて銃を構えた。


「転士様!? じゃなくて国家に仇なす不届き者、投降しないとう、撃つぞ!」

「大丈夫なの!?」

「ふ、見てなさいよ」


 いざ衛兵に包囲されてアケミは心配になるが、サタニエは余裕綽々とした態度を崩さない。数十年の経験の差か、あるいはチートによるものか、彼女は大胆不敵に外の狭い屋根に飛び移り、一礼してスカートを捲し上げた。するとなんと、中から大量の金貨札束が零れ落ち、降り注ぐ!

 金だ、金の雨だ。衛兵達は思わず目が眩む。ましてや通行人などにはお祭りだ。朝から物々しい事態を不安げに眺めていたギャラリーも続々と乱入してくる。その混乱に乗じて暴走車まで突っ込んでくる。


「お嬢! 迎えに来やしたぜ!」


 退け退けと周囲を散らしながら運転手が叫んだ。サタニエも「来たかガヴァン」と相手を呼ぶ。この四輪馬車は布を貼っただけの天井に、座席にはクッション材が敷き詰められていた。いざという時の為に。

 まさに今がそう。躊躇いなくサタニエは三階から飛び乗った。ドン、と大きな音が響く。特注の馬車はよく耐え、止まることなくその場を走り去った。


「全く無茶しやがりますぜお嬢。こんなことなら俺に全部任せてくださいよ、転士相手でもお嬢よりは戦えますぜ」

「図に乗るなガヴァン! それとお嬢はやめなさいよ、せめて社長でしょうが!」

「へいへい。社長なら湯水のように金使えるんだから、下々に札束ビンタでやらせりゃいいんじゃないでしょうか? ん?」


 到底雇い主に対する返事ではないが、ガヴァンという男は誰に対してもこうだ。体が筋骨隆々として大きければ態度はそれ以上。だが飼い主も負けじと言い返す。


「いいことガヴァン、金で信用まで買えないわ。アンタだって、本当にヤバくなったら仕事投げだして逃げたり裏切るでしょ。信頼を勝ち取るにはまず自ら体を張ること、これが鉄則」

「そりゃまぁそんなもんですが。そいつぁ前世で得た教訓ですかい?」

「だったら何よ……それより、アンタたちいい加減退きなさいってば!」


 サタニエは怒号を上げてアケミとタカノを跳ね除けた。あの時二人もまた続いて馬車に飛び移っていた。他に逃げ場などなかったのだから。しかし撃たれた傷に加え打ち所の悪かったタカノは一回休みで動かないが。

 アケミは咄嗟に拾ったサタニエの銃を持ち主に突きつける。状況を悟って運転手も雇い主を撃ったら殺すと釘を刺した。


「はいこちらロフォカレタクシー、お好きな場所まで連れて行きますぜ。運賃としてお嬢の銃を返してもらうがね。それでどうだい?」

「……わかった。けどボクらも安全を確保したいから、それまでは」

「構わないぜ。な、お嬢」

「アンタが仕切らないの! それと社長!」


 ケケケと従僕は主人を笑った。その微笑ましさにアケミもつられて笑ってしまう。先程まで敵同士であったのにもかかわらず。


「お、お嬢にもようやく友達が出来やしたか」

「まさか、こんな奴と組む理由なんてないわ! 大体アンタさっきの光る箱がチートなわけ? しょぼすぎない?」

「お嬢だって自分の財産増殖インフィニットインカムはハズレ能力だっていつも愚痴ってるじゃあないですかい」

「だってそんなチートなくてもいくらでも富を生み出せるもん、ビジネスで。徒に金だけ増やせば物価を上げてしまうでしょ。第一怪獣相手じゃ役立たないし、前線に出ないからって馬鹿にされて……」

「でもやりよう次第ですぜ。今回みたいな戦いじゃいかに人を使うかが大事ってもんでしょ。金で簡単に駒を動かせるお嬢は強いですって」


 客人に対し自慢するかのような言い草だ。それがプライドの高い主人をなだめるのに最も効果的だとガヴァンは知っている。このようなやりとりが出来るのも信頼関係あってこそかとアケミは思った。

 ところでどこで降りる気だとサタニエは問うた。地理に疎いアケミは答えに窮してタカノを見るが、まだ蘇生する気配はない。


「決められない? いや行き場がない、よね。もう王都のどこにも。じゃあ私が決めてやるわ。南西区の駅で降りなさい。八勇者様に目を付けられた以上、一旦郊外に逃げることね」

「とまぁお嬢は外の情報を欲しがってますが、それはともかく俺からもオススメしておくぜ。北の大山脈は流石に苛酷ですがまぁ、農業区の東の山なんかは行楽にもピッタリなもんで」

「……そうしてみます。助かりました、ガヴァンさんと……社長」

「なんか、社長って呼ばれるのもむかつくわね。サタニエでいいわ。次会う時は敵か味方か、アンタ達の利用価値次第よ」


 それ以上は話しかけても無駄であった。一方が話しかけられなかっただけでもあったが。相棒ならもっと気の利いたコミュニケーションが行えただろう――アケミはもどかしく思った。



「殺伐少女珍道中」(後)につづく

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