第4話 竜は構ってちゃん
竜なんて始めて見た。
まあ当たり前なんだけけどね、竜なんて早々見れるもんじゃないよね。
その竜は手足を物凄くデカイ杭で壁に刺されていて凄く痛そうだ。
そして物凄いデカイ鎖を体中に巻かれてその鎖も壁に刺されている。
封印されているみたいだ。
(そこの者、おい聞こえるか)
頭の中に声が響いた。
これってもしかしなくてもこの竜じゃね?
(おい! 無視するでない! 聞こえているのだろう!)
どうしよう、てかこれどうやって返事したらいいの?
物は試しで念じてみた。
(なんですか?)
(やはり聞こえているでないか)
おお! 通じた。
念じれば話せるんだね、これって便利かも。
(脆弱なる者よ我の近くに来い話しにくい)
え、いやだって、なんか見るからに危なそうですし。
近づくの勇気いるよ。
だって、この竜物凄くデカイもん全長50メートルぐらいあるもん。
普通に怖いよ。
それにこの竜鱗が黒くて禍々しく感じるんだよね。
(何もしないですか?)
(ああ、何もしない)
(本当ですか?)
(くどい、我は見てのとうり封印されていて何も出来ん)
あ、やっぱり封印されているんだ。
まあそれならいいか。
私は竜の近くに行った。
近くで見ると本当にデカイね。
(脆弱なる者よ貴様は何者だ?)
え? スライムじゃないの?
(どういうこと? 私スライムじゃないの?)
(いや、それはそうなのだが……何故此処にこれた?)
ますます意味が分からなく成った。
何故もなにもただ扉から来ただけだけなのに。
(扉からすり抜けて来たんですけど)
(そもそもそれが可笑しいのだ。この迷宮の最下層である此処のは魔物が入ってこない様に結界が張ってあるのだ。勿論此処で魔物も生まれん)
(正直何言っているのか全然分かりません。私スライムに生まれて間もないですよ、ちゃんと説明してください)
(う、うむ。わかったぞ)
アレ? 何も出来ないと思って強く言ったら一瞬怯んだぞ?
てっきり我に対して失礼な! とか言うと思ったのだが。
(それにしてもスライムに意思があるとは、やはり特殊固体のようだな)
(その特殊固体ってなんですか?)
(うむ、それはな……)
この竜以外と親切だね。
私が疑問に思ったことを懇切丁寧に教えてくれた。
分かった事はこんな感じだ。
魔物とは魔素でできた集合体で、魔物が生まれる時は大抵魔素が集まっている所で生まれるらしい。
魔素とは、酸素とか窒素と同じでこの世界の元素的な何かというのが私の見解だ。
生き物は皆魔力を持っているが魔素は魔力の元となる物体の様だ。
この世界は魔法などもあり魔素が濃いほど魔法を使い魔力を消耗したら回復が早い様だ。
特殊固体は偶に強力なスキルや、確固たる自我を持つ魔物の個体の様だ、魔素の有無関係なくらしい。
次にスキルこれは生物の魂がもつ潜在能力を具現化したものらしい。
スキルは魂の質によって会得出来るか決まるらしい。
質がよければ直ぐに会得でき、悪ければ会得に時間が掛かるらしい。
そして此処は昔、賢者が張った結界によって魔物は生まれず魔物はこの迷宮、ヘレ迷宮に最下層には侵入出来ないらしい。
だからこの竜は疑問に思ったみたいだ。
この竜はかなり饒舌のようだ。
さっきから話すのが楽しいような感じがする。
もう怖くないね。
(じゃあなんで私入れるの?)
(それは分からん。結界が弱まったか、もしくは貴様が結界を上回ったか。どちらにしろ我は分からん、今は封印されていて力の大半が失われているのだ)
それじゃ結界が弱まったんだね。
スライム如きが賢者の結界を上回るとかありえないでしょう。
(てか、なんで封印されてるの?)
(うぐ、それはな。我が人里で構ってほし……遊んでほ……人間を鍛えてやるために暴れていたら封印された)
(おい)
(い、いや、暴れたと言っても別に人間如き殺すかちもないし、怪我も出来るだけ無い様に頑張ったし。そもそも、構って欲しくて暴れたんじゃないし)
この竜自分で暴露しちゃてるよ。
もう化けの皮が剥がれてしまったか。
分かった、この竜構ってちゃんだ。
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