第32話 ギルドマスターからのお願い
てか、ギルドマスターって冒険者ギルドで一番偉い人だよね? なんでこんなところに。
さっきのお前らってたぶん、この何だっけ? まぁいいや、ハゲたちのことだろう。
もしかしたら、こいつら問題起こし過ぎてギルドから、いや、俺が直々にって言ってたからギルドマスターを怒らしたんじゃないかな。
うわぁ、なんか面倒くさいそう。
リントヴルムの方を見ると。
「殺す殺す殺す! お前はいつか殺す!!」
「はっはっは!! いつでも受けて立とう」
うん、案の定ボコボコにされたようだ。
ナー何とかさんは床に大の字になって、リントヴルムに怒号を浴びせている。
それをリントヴルムは、綺麗に受け流して、いや、受け取っていた。
ちょっと面倒なことになりそうだ、ギルドマスターが周りの冒険者に事情を聞いている今のうちにずらかろう。
「リントヴルム、行くよ」
「お、もうか」
「早く早く」
「そう、せかすな」
だって、ここにいたら確実にギルドマスターに狙われるそうだもん。
出来るだけ早く逃げようとしたのだが、遅かったようだ。
くそう。
「君達、ちょっと待ってくれないか」
うう、結局ギルドマスターに声掛けられたよ。
「何ですか? まさかやり過ぎとか言いませんよね。先に仕掛けてきたのは彼らですよ」
そうそう、あいつらの自業自得なんだよ。
そりゃ、ちょっと魔法の威力調整をミスったりもしたけど。
あいつらがそもそも絡まなければ良かった訳で、つまり、私は悪くない。
「いや、文句言いたくて呼び止めた訳じゃないんだ。そもそも冒険者どうしの揉め事はギルドは関与しない。だが、彼らは少々度が過ぎた。だからお礼を言いたかったんだ、これで少しはやられた側の事も分かっただろう、ありがとう」
「いいえ、私達が勝手にやったことなんで。それじゃ」
何故か、いや気のせいだろう。
ギルドマスターが私達のことを、獲物を前にした獣の目をしている気がするのは。
さっさとここから立ち去ろう、そうしよう。
厄介ごとはごめんだ。
「そう急ぐことも無いだろう。少し話がしたい、どうだ俺の部屋に一旦来ないか?」
……ああ、これ絶対に厄介事だわ。
でも、逃げれそうにない。
目で絶対逃がさないって言ってるもん、仕方ない、嫌だけど、ほんと嫌だけど。
「少しだけですよ、私達も用事があるんですから」
「分かっているよ」
ほんとかなぁー。
とことで、今はギルドマスターの部屋にいます。
「さて、さっきも言ったがあいつらのことは助かった、ありがとう」
「それはもういいです、本題は何ですか?」
「ははは、直球だな。駆け引きとかを知らんのか。まぁいい、君達は見ない顔だけど、どこから来たんだ?」
これっていいの? 普通冒険者のことを詮索するのはご法度なんじゃ。
まぁ、言い訳は考えてあるしいいや。
「私達は田舎から出て迷っていたらここに着いたんです」
「へーどんな所だい?」
ギルドマスターの目が明らかに詮索する目だ。
「こことは常識が違いますね、というか冒険者の詮索っていいんですか?」
「おっと失礼。ただそれは詮索されたくない奴らが多過ぎて出来たよルールだからね、別に規定はないんだよ」
「それはいいとして、早く本題のは言ってください」
「本当にせっかちだな」
だって、なんかこのおっちゃん胡散臭いんだもん。
「君達の強さを見込んで頼みがある」
「お断りします」
「え?」
いや、だってどうせ面倒事でしょう。
「では」
私は席を立って部屋から出ようとすると。
「は、話だけでも聞いてくれ。君達にも利益あることだ」
「話だけですよ」
まぁ、話を聞いてからでもいいでしょう。
「じゃあ話すけど最後まで聞いてよ」
「分かった」
「ここ最近、ここから少しした所に盗賊が出すようになったんだ。これが只の盗賊だったら直ぐに依頼をして討伐出来たんだけど、それがブリガンド盗賊団だったんだ」
いや、名前だけで言われてもわかんないよ。
なに? ブリガンド盗賊団? もっと詳しく言ってよ、そんな当たり前みたいに言わないでよ。
「そのブリガンド盗賊団ってなに?」
「え? 結構有名なんだけど、まぁいい。ブリガンド盗賊団は別名悪魔の盗賊団と言われている。人数は10人前後、そこまで多くはないがこいつらは悪魔と契約を交わしていて普通ではあり得ない力を持っている。契約の条件として襲った人の魂を差し出すイカレタ奴らだ。もう人の心は残っていないだろう。こいつらは各地を転々としていて捕まりにくい、私が今日直々に討伐に向かおうと思っていた所だが。正直、私だけでは心もとなかった、運悪くランクBパーティーが遠征中なんんだ。依頼ランクはAだ。難しいのは分かっている、だが頼む一緒に行ってくれないか。そいつらに苦しめられている人達が居るんだ。報酬も弾むし私の権限で無条件でランクCまでしてやる。頼まれてはくれないか」
そして、ギルドマスターが頭を下げてきた。
って、一番偉い人が頭下げたらいけないでしょう。
でも、それだけ今は戦力が欲しいんだろう。
仕方ない、か。
私が了承する前に反応したのはリントヴルムだった。
「ほう!! 悪魔か!! 奴らはなかなか遣る奴らだ!! 我と何時もぶつかってただった奴もいたぞ!! 懐かしい!! その話受けよう!!」
「おお!! 受けてくれるか!! 何か気にある言葉も言っていたがありがたい!!」
うん、私も気になってた。
リントヴルムといつでもぶつかってたってどんなにヤバイのよ!!!
あれ? これ受けちゃいけなかったんじゃ。
……まぁいっか。
考えても仕方ないしね。
「では、一時間後に西門前で」
「分かったぞ」
さて、なに準備しようかな。