第2話 転生
――暗い……。
何処だろう此処。
何も見えない……アレ? 私死ななかったけ?
体の感覚が曖昧で良く分からない。
でも曖昧だが感じる。
どういうことだ? まさか此処があの世とかじゃないよね。
もしかしたら此処が地獄なのかもしれない。
私は院長先生に酷い事をした地獄行きに決まっているからだ。
瞳が開かない。
一先ず私は周囲を確認する為に起き上がろうとした。
だが起き上がれない。
これは、寝ている様な、立っている様な感じだ。
どういうことか分からない。
そうしていると段々体の感覚が鮮明に成ってきた。
だが、目は未だに見えない。
でも歩ける感覚はする。
取り合えず私は辺りと探索する事にした。
ズルズル、ん? なんだ?
石みたいな硬い感覚の上を、ズルズルと滑る様に歩いている様な感覚がする。
……まぁいいや、今は探索が先決だ。
私は歩いて? いると壁にぶつかった。
不思議と痛くは無かった。
手を伸ばそうとする、でも伸ばせなかった。
アレ? 手が無いのか?
でも、不可解な感覚がする。
私が手みたいな者を作って壁に触れている感覚がある。
分からない、でも仕方ないと思い、私は探索を続けた。
歩いて行く。
また変な感覚がした。
最初は水に浸かる感覚。
そして今度は沈んでいる感覚。
不思議だ、溺れていると思うのに苦しくない、気持ちいいとすら思ってしまう。
自然に身を委ねる、何て気持ちいんだろう。
溶けてしまいそうだ。
ずっとこうしていたい。
こんな感じに何者にも囚われずに生きていけたら良かったのに。
院長先生を悲しませずに、自然と人と人の輪の中に入れたら――今更悔やんでも仕方が無いか。
私はこの感覚に身を委ねた。
どのくらい時間が経ったのだろう。
分からないが結構の時が経った様な感じがする。
もうこの感覚から抜けてもいいんじゃなかろうか、と思った時だった。
砂浜に上がった様な感覚がしたそれを幸いと思い私は探索を開始しようと思った。
それにしても、地獄って変なところだね。
まぁいいや。
私は歩き出した。
それにしてもいい加減視界が欲しいところだ。
どうしたらいいんだろう、こういう時、立ち読みで読んでいたファンタジー小説によると、周囲感知とか言うにをしたら周りを見えるんだけどそんなの無いだろうし。
在ったら欲しいね。
《認証……成功しました。スキル[周囲感知]を会得しました》
ん? なんか頭の中に声が。
そんな事を思っていると視界が開けた。
どういうことだ? でも視界が啓けたのならそんなのいいか、どうせ考えても分からないだろうし。
啓けた視界に写ったのはなんとも新秘的な空間だった。
きれいだ、此処が地獄だ何て思えない。
白く透き通る砂浜に透明な湖まさに天国のようだけど、薄暗く壁は岩で、私が流れてきたところを見ると水の流れで此処に来たようで海の浜のよう、いや、洞窟の浜の様だ。
でも綺麗だ、という風に湖を見ていたら、ふと視界に何かを捕らえた。
そこを見てみると――
――スライムが居た。
スライムと言うしか無い青色の物体が私を見ているのだ、湖の中から。
私は驚いて体をビクンとした。
同じくスライムもビクンとした。
ん? なんでスライムも?
もしや、いや、そんなバカな。
私はそう思いながら左右に移動した。
同じくスライムも左右に移動した。
……こいつは、このスライムは、――私なのか?
そうとしか思えなお様にこのスライムは私と同じ動きをする。
これはもしや、私が立ち読みで見たことの有る、異世界転生と言うヤツではないだろうか。
でも可笑しい、異世界転生は人間に転生とか神様とか魔王とか。
神様とか魔王は無いにしてもせめて人間にしてほしかった。
スライムとか直ぐに殺されちゃうじゃん。
……まあいいか。
命があるだけましなんだし。
隠れて生きていけばいいか。
これで、祐樹 葵は新たにスライムとして生きていくことと成った。
ご感想お待ちしています。