第六話 ここは異世界?
窓の外を眺める。外は暗くなり始めているようだ。
よく見てみると月も出ている。
……月か。
ここは異世界だと思っていた。
そう決めつけるのは簡単だ。
だが本当にそれでいいのだろうか。
まだここに居ても問題はないようだし、一度今までの情報を整理してみよう。
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ここに来た時、俺は女の子とぶつかった。
女の子の髪の色はピンク、瞳もピンク。
パッと見でおよそ日本人ではないだろうということが分かった。
重要なのはこの女の子の喋った言葉が「日本語」だということだ。
本来普通に考えれば住む世界が違うのであれば、使う言葉も違うはずだ。
同じ地球上で住んでるだけでもあれだけの言語があるのに、たまたま全く一緒の言語を使っているというのは考えにくいだろう。
さらに彼女の名前はエモトリサという。
日本では珍しくはない名前がこの異世界で使われていた。
ということは彼女は地球人の可能性がこの情報のみで推測すると極めて高い。
しかし、彼女は日本を知らないといった。アメリカも知らないといった。
地球に住んでいて、尚且つ日本語を話す事が可能であり18歳前後(だと思われる)の人が日本とアメリカを知らないというのもまずないと考えていいだろう。
ここで矛盾が生じたわけだ。
では一旦これは置いて、次の情報を整理する。
俺は彼女、エモトリサについていくことになり、俺はようわからん試験を受ける事になった。
この会場にいた人も、皆日本語を話していた。
つまり、日本語は異世界、少なくてもこの街では共通語ということになる。
ちなみに街の名前は、ヴィ、ヴェヴ? ヴァなんたらみたいな感じだ。まあこれはどうでもいい。
さらにそこの筆記試験の内容だ。
バルサンや、火災といった元の世界でしか使われないような言葉まで書かれていた。
問題の内容的にも元の世界の言葉と似たような意味があると思われる。
他にも人物の名前を並び替える問題では、また一人日本人と思われるような名前があった。
こうなると元の世界と、この異世界。なんの関係性もないということはないと俺は思う。
さらにはついさっきみた外の月だ。
ここに来たときは明るかった、つまり太陽もあると考えていい。
月と太陽があるってことは、つまり―――――――――
「おい」
はっ、受付の時のグラマー美女。
「時間だ。ここは閉めるぞ」
「え、もうそんな時間ですか! す、すみませんでした!」
考え事してたら、時間が経つのは早いな。
「……はあ、西田だっけか。お前、家ないんだろ」
な、なんで知ってるんだ。まさか。
「心読術の使い手……!?」
「なにわけのわからん事を言ってんだ」
む、わからないか。そりゃそうか。
「なんとかしてやるから、受付のところでしばらく待ってな」
「ほ、本当ですか!?」
それは非常に有難い。助かる。
「嘘ついてどうする……まあ、いいならいいんだが」
「いや、お願いします‼‼」
この機を逃す手はない。
……エロいし。ぐへへ。
「わかった。じゃあ私は他のところの戸締りがあるから、10分後ぐらいにはいくよ」
「了解です! ゆっくりで大丈夫ですからね!」
「へいへい」
やった。なんとか今日は凌げそうだ。
……まあ、異世界どうこうはまた今度ゆっくりできる時に改めて考えよう。
どうせ今はまだ推測でしかないしな。