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きみが僕をよんだから

作者: 龍川夏樹

   今でも耳に響く あのきれいなさえずる声が…


 後悔している 

 あのとき、傍についておきながら何もできなかったことに・・・

  あの子に何もしてあげられなかったことに・・・

 

 冬のとても寒い日のことだった

 「生き物はいつかは天に昇っていくのよ」涙ながらに母は言った

私は泣けなかった   無く権利なんて私にはなかった   私があの子にしてきたことは、とてもひどいことだったね

薄情と言われても、私の目に涙がたまってきたとしても、私に泣くことは許されない 

 私が許さない


季節はめぐり、春

 掃除をしようと外に出た瞬間、ふと懐かしいさえずり声が聞こえた気がして空を見上げた

木の枝にあの子にそっくりな一羽の鳥がとまっていた 

 懐かしい、さえずり声だった   ふいに言葉が口をついて出てきた



元気だった? 寂しくなかった? どこか遠いところに行ってただけだよね?

 死んだなんてウソだよね? またあたしのところへ戻って来てくれるよね?

 

鳥は何も答えない さえずり声もやんだ


涙があふれた_押さえきれないほどの涙が目から流れ落ち頬をつたっていく_


もう言葉は出てこない 私は心の中で声の限りに叫んだ



もう帰ってこなくていいよ。 あたしはキミに優しくできない キミの世話だって時間が無いってまかせっきりだった 

   さみしかったね  悲しかったよね  つらかったね

今キミに声が届くのなら伝えたいことは山ほどあるし、謝りたいことだってとてもあるんだ

  だけど


キミにどうしても聞きたいことがある 

この家にやってきてからずっと一人だったのだからきっとそうじゃないだろうけど


 幸せだった?  


 キミの生きた跡に意味はあったの?

 私はその意味を消してしまわなかった?


キミがきてくれてあたしはとても嬉しかった それだけは自信をもっていえるよ・・・

  ありがとう



 顔を上げると鳥はもう姿を消してしまっていた

 馬鹿だな あの子な訳が無いのに…

私は掃除を始めた あの子がいなくなったあの日から私は心の中でずっとあの子はまだここにいると思って信じてきた

 私は今からずっと生きていくけどあの子と過ごした時間も、それにともなう悲しみや後悔、うれしさや楽しさも忘れることは無いだろう

 

 今もまだキミのさえずるきれいな声 聞こえてるよ





遠くはるか、空の上 一羽の鳥がはばたいている

 高く 高く 高く 鳥は天を目指していた

  


 確かにさみしかったよ  悲しかったよ  つらかったよ

 だけどそれ以上にきみと過ごした時間は楽しかったし、安心できた


 ほかの鳥の何万倍も僕は幸せだったよ


 最後に この声を届けることができるのなら、どうかきみに届いてほしい



 僕の生きた跡に意味はあった


 意味はあったよ     これだけは胸を張っていえる

 絶対に意味はあった

 だってさ 



 きみは僕をよんだから




 きみが僕をよんだから

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― 新着の感想 ―
[一言] 何か心がすっとしました。なんか、ありがとうございます。
[一言]  この書き方には、どのような意味があるのでしょうか? 何かしらの考えがあってのことですか? 申し訳ありませんが、僕には理解できませんでした。  内容的にも、何かしらを感じることができませんで…
[一言] 内容は切なくていいお話だったと思います。 自分は少し読みづらい感じを受ける書き方でしたが、それでも主人公が鳥のことをどう考えているのかはしっかりと伝わってきました。 アドバイスできる程上手な…
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