自己顕示欲
数日後、購入した高級車に乗って女を迎えに行った。安物の香水の匂いが鼻についた。高層ビルの最上階にあるレストランで食事をとる。女は思ったとおり、料理を一皿ごとに写真を撮り、SNSにアップを始めた。
ナカノは自己顕示欲にまみれている。自分がどれほど幸せな生活をしているのかを常に誰かと競争している。そしてそういう人間の周りには、やはり似たような人間が集まる。だから芋ずる式に、金の亡者を釣ることが出来る。
金を持っているところには人が集まる。人が集まっているところには、もっと人が集まる。
それで釣れた人間を片っ端から全員売ってさらに金を儲けて、オレは金持ちになってやる。
食事が終わると、タワーマンションの最上階の部屋に案内した。一ヶ月の家賃は100万かかっている。その分、夜景を一望出来る。ナカノはまたSNSで発信してくれている。彼女のスマホはさっきからずっと鳴りっぱなしだ。
「本当はずっと好きだった。成功したから、告白するのは今だと思った。付き合ってほしい。君を愛している」
オレがそういうと、ナカノは満面の笑みを浮かべて承諾してくれた。
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ナカノとの生活が始まった。
初めの頃こそ、オレに愛想を振りまいてくれていたが、三日が経つころには金の催促が始まった。ナカノが欲しいものを欲しいだけ買ってやった。するとナカノはSNSで拡散をしてくれる。
オレが大金持ちになったということは、地元の殆どの人間に知れ渡っているようだ。おかげで次のターゲット候補も数十人抱えることが出来た。
一週間が過ぎたころ、オレはナカノを拘束した。口をガムテープでとめ、目隠しと手枷をつけた。暴れられないように、足を折りたたませてそのままガムテープでぐるぐる巻きにしてやった。ダンボールにナカノを入れて、そのままガレージまでの直送エレベーターで車に入れる。
そしてそのまま、例のマンションへ向かった。
他の奴に場所を知られると真似する人間が出てくる。これはオレしか知らないからこそ出来る稼ぎ方だ。だから場所がバレることは絶対にあってはならない。
ナカノの拘束を解いた。このマンションでのことは一切口外しないことを誓約書で契約させた。黙って従えば大金が手に入る、と伝えると女は嬉しそうだった。こんなよく分からないマンションに突然連れて来られたというのに呑気な女だ。心底呆れる。どういう脳の構造をしているのだろうか。
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「それでは600万円お渡し致します」
分かってはいたが、やはり前回のように一億円とはいかなかった。そう甘くないということだろう。もっと上手くオレに惚れさせれば、もっと高額で売却出来るのだろうか。
それからオレのスマホにナカノから連絡が来ることはもうなかった。




