戦う男(2)
尚美目線
脩悟と過ごす時間は楽しかった。
他愛もないファッションの話を延々とした。
この色使いがカワイイ、この素材がいい、
彼の趣味が洋服を作ることだと知ったのはしばらく後で。
「ちゃんと1から学べばいいのに」
と、パタンナーの友人は呆れ顔で彼がミシンを走らせるのを眺めていた。
「やー、それも思ったんだけどさー、
あ、すみません、考えたんですけどね、中々時間がとれなくって」
連日何かしら不規則に仕事が入っていると、そう言うものなのかもしれない。
「ま、今回みたいに、イメージ通りにならないとかあったら呼んでよ。
俺でよかったら、いつでも来るし」
「ありがとうございます」
「お礼は尚美に言ってよ。
尚美がいなかったら、俺はただの視聴者で、あんたは雲の上の人だし」
「いや、それでも、こうしてワザワザ時間とっていただいているんで。
お忙しいのにありがとうございます。
困ったときに連絡させて下さい」
「遠慮なくどうぞ。
じゃ、失礼します」
そういって、楽しそうに笑いながらパタンナーの男は出ていった。
「才能、あるのね」
正直、「もしパラ」のメンバーだから、才能あるってチヤホヤされているのだと思っていた。
だけど、本職から見ても、ちゃんと才能があるらしい。
「ん?
なんで?」
不思議そうに彼は言う。
「彼、才能ある人が好きなの」
正確に言えば、才能のある人を育てるのが好き。
「そうなの?
俺がもしパラのメンバーだからじゃなくって?」
「じゃないと思うな。
彼、別にパタンナー以外に収入源あるから、そんなにガツガツした仕事の仕方してないし。
どっちかっていうと、猫みたいな感じ」
「ふーん。
でも、これが形になってよかったー」
さっきまでいたパタンナーの話そっちのけで、ミシンを走らせる。
「ね、尚美、
本当にありがとう」