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いい始めたのは、誰だ?
健目線です。
最初に口にしたのは誰だっただろう?
誰だったのかは、分からない。
でも、誰もが思っていた。
匠は、隠し事ができるタイプじゃない。
荷が勝ちすぎる。
だから、匠には言えなかった。
必死に、匠に隠した。
匠が隠し事をしなくてもいいように。
嘘をつきたくないという、匠の信念をねじ曲げないように。
「俺はさ、こんなのイヤなんだよね」
某グループのライブ映像を見ながら親友は言った。
「俺が死んだあと、こんなライブをみんながしなきゃいけないとしたら、スッゲーやだ。
俺のことなんて忘れてほしいよね。
俺のことなんて忘れて、スッゲー楽しんでほしい」
そうだったら超サイコーじゃん、と、親友はにーっと笑った。
最後のライブの構成を、彼は最後の仕事だと言って、密かに張り切っていた。
そのライブが出来なくなるくらい、彼の病状が悪いなんて、このとき誰も知らなかったんだ。