テンプレ小説とは「カレーライス」である。異論は認めます。
小説家になろう、というサイトに投稿される小説達の中には、テンプレ小説と呼ばれるものがある。
王道の展開というか、お馴染みの展開を指す言葉だ。
例えば男性向けテンプレ小説なら、ファンタジー世界に転生して神様からもらったチート能力……凄まじい能力で圧倒的な活躍をして人気者になる、という展開が多いだろうか。
私はこういったテンプレ小説のことを、「カレーライス」だと考えている。
……ただの食いしん坊に思えるかもしれないけど、お暇な人は少しばかりお読みいただけると嬉しいです(汗)。
まず前提として、「カレーライス」は日本において子供から大人まで親しまれている、人気メニューだと思う。
そんなことはない、カレーライスなんて大嫌いだ。そういう人はハンバーグでも、ラーメンでも何でも大丈夫なので、貴方の納得できる「広く親しまれている人気メニュー」を代用してもらえたら助かります。
とにかく、「カレーライス」といえば人気があり定番の――所謂テンプレ料理だと思います。
テンプラ料理と書き間違えそうですが、テンプレ料理です。
初めて入る飲食店で何を食べるか困った時に、メニューの中に「カレーライス」があれば、とりあえずカレーでいいや、と思う人もいるのではないでしょうか。
最悪、出てきたのが明らかにレトルトカレーの味でも、値段が安ければ「まずい料理よりはマシか……」と出された「カレーライス」を食べて店を出るでしょう。
最近はレトルトカレーもおいしくいただけるものが多いので、無理にオリジナリティを求めると所謂メシマズ料理に遭遇する可能性もあるかと思われます。
これらは、テンプレ小説にも当てはまると思います。
読む側としても何から読んでいいのか悩むし、とりあえず定番と評判になっている「テンプレ小説」でも読んでみようかな、と。ランキング上位に並ぶ作品から少しずつ読み進めていく。
後はその日の気分次第で、ギャグからシリアス、ファンタジーやSFなど、色々と味わいの違う小説を読み比べていく。
そんな感じで多くの人々に読まれてきたのが、テンプレ小説だと思うのです。
そう考えると小説家になろう、というサイトは「飲食店街」で、毎日のように投稿される小説は「飲食店街に立ち並ぶ飲食店」でしょうか。
小説家になろうは、「カレーライスが名物の飲食店が立ち並ぶ飲食店街」で、読者の方々は「外食に来たお客様」です。
読者の方々は代金ではなく「時間」を使って、「小説」を味わいに来ています。
――いくらおいしくても、毎日カレーライス食べてたら飽きますよね?
「いやだったらカレーライス以外を注文しなよ」と思うかもしれませんが、飲食店街に並ぶ飲食店はほとんどカレー専門店だらけという感じです。
メニューを見ても端から端までカレーライス。トッピングや味付けがちょっと違うくらいで、カレーに違いはありません。
探せば他の料理もあるのですが、目につきやすい立地にある飲食店にはテンプレ料理の「カレーライス」がいっぱい。
女性向けとして、恋愛や悪役令嬢といった小説も、そこかしこにたくさんあります。
これが自分の思う、小説家になろうというサイトの現状です。
そして私は、それはそれでいいのではないかな、と思います。
もちろん、読み応え(たべごたえ)のある小説が、もっと色々な種類を用意してもらえたなら、それはとっても嬉しいことです。
毎日通っても目移りするぐらい、豊富なメニューが数多く存在する飲食店街。すごく楽しめそうですね。
けれどだからといって、少しでもおいしいカレーを作ろうと努力されている店長さんに「カレー(テンプレチート)は飽きた! 他の料理を出せ!」とカレーを注文して食べながら叫んだって、「嫌なら何で食べてるの?」と言われちゃいそうです。
どうしてもカレーばかりの外食生活が嫌なら、好みの料理を自炊してみるのもいいかもしれません。
あるいは、普段は行かないような路地裏(ランク外作品群)で隠れた名店探しや、別の飲食店街を見に行ってみるのも新たな発見を楽しめるかも。
それに、毎日カレーを作り続けた結果、料理の腕が上達した店長が、別の料理に挑戦することだってあるかもしれません。
カレーうどんなどの「テンプレ同士の合体」の他にも、「その発想はなかった」という意外な料理を、生み出すかもしれません。
人気店はショッピングモール(出版社)にスカウトされるという話が有名になって、「本気で料理人を目指す人達が集う修練の場」として期待のハードルが上がっているかもしれませんが、「無料の店舗で、気軽に出店できる」という側面も併せ持つのが、小説家になろうという飲食店街ではないでしょうか。
馴染みの飲食店街にカレー(テンプレ小説)しかないと悲しむよりも、もっと気軽に考えた方が、毎日が楽しめるのではないでしょうか。
自分はたくさんのテンプレ小説をこのサイトで味わった結果、自分も書いてみたいと思って自分の読みたいと思う作品を書き始めて、その毎日を楽しんでいます。
途中で挫折してしまったり、落ち込んだり、迷走してばかりで申し訳ないのですが(汗)。
頭の中に浮かんだ「テンプレ小説=カレーライス」という訳の分からないトンデモ論を一通り書き終えたところで、次の一文でこのエッセイもどきを締めさせていただきたいと思います。
……深夜にこれを書いていたせいで、お腹が空いてきました(汗)。