準備3
今日だけ、少しだけ早く投稿
「(はぁ、そういうことかよ。ちょっと教室の事に関わらなさすぎたのか)」
元カノの真意は明らかだった。恐らくこのまま俺に疑いの目が向けられるようにするこだろう。きっとここまで想定して準備していたに違いない。
「どういう事だよ……これ…」
藤村が声を漏らす。
「ひどい……何でこんな……」
「あんなに頑張ったのに…」
教室の雰囲気は沈んでいる。
そして担任の成瀬も入ってきた。
「これは……!」
流石に絶句しているようだ。
そして何とか場を整えようとする。
「みんな、取り敢えず片付けましょう。話はそれからにしましょう。私は1度職員室に戻るわ」
そう言って成瀬は出て行ってしまった。
徐々にみんなは動き出す。しかし体の動きはゆっくりだ。
「誰がこんな事を…」
悲痛な声を上げるクラスメイト達。
「おいっ!やった奴は誰だっ!出てこいよ!ふざけんじゃねぇぞ…ぶっ飛ばしてやる!」
吠えたのは藤村だ。
「おい落ち着けって。まずはこれを片そう。な?こんなんじゃ出てくるものも出ないだろ?」
宮島が宥める。
「〜〜っ!クソっ!」
壁に拳を叩きつける。
教室の空気はさらに重くなる。
その後しばらくして、成瀬が戻ってきて言葉を告げる。
「こんな事があって、悔しい気持ちもわかるけどみんなに犯人探しなんてマネはやめてほしい」
そう言った。
何人かが息を呑む音が聞こえたような気がした。藤村が反対する。
「なんでっすか先生!おかしいじゃないっすか!みんな頑張ってきたのにっ…」
「そうですよ先生!桐島くんや美香の頑張りはどうなるんですか!」
それに便乗してさらに声があがる。
「ごめんなさい、会議して決まった事なの。みんなには従ってほしいわ」
先生も苦しそうな面持ちで答える。
そして藤村がまたしても反対しようとする。
「でも———」
「みんな!……仕方ないわ、従いましょう。」
控えめな彼女が大声を出した。
周りにはそう見えただろう。
少し抑えた声で藤村が再び喋ろうとする。
「でも—」
「いいのよ藤村くん。今重要なのは犯人探しでも嘆く事でもないわ。文化祭を成功させる事よ。だから少しでも準備しましょう?」
優しく元カノは答える。
そこで宮島が言う。
「準備って言ったって展示する物が何も—」
「俺のパソコンがあります。」
桐島が答えた。
「俺のパソコンにデータは入ってるからプロジェクターを使って写そうと思う。どうかなみんな?」
ちょっとした間の後、
「これだけなら何とかなるか?」
「となるとプロジェクターとスクリーンは準備してあるから、空いた場所に椅子でも置くか?」
そんな声が聞こえてきた。そしてそこを見逃す元カノではない。
「じゃあみんな、もうやる事は決まったわね。早速準備に取り掛かりましょう」
それに応えるようにクラスのみんなは動きはじめた。先ほどよりは体が動いている。先生も用事があるようで話がまとまるとすぐに教室からいなくなってしまった。そして流石に今回は俺にも仕事が回ってきた。
しかしこのまま丸く収まるはずがなかった。誰が犯人なのかはみんな気になっているだろうから。
準備も終わりそうなところで佐山がポツリと言った。
「結局、犯人て誰だったんだろうねー。」
「確かにな。ホントそれ思うわ。」
相川がそれに答える。
そこから不和は広がる。今この場にまとめ役の元カノは居なかった。だからだろうか、藤村がまたしても喋り出した。
「なぁ、結局誰だったんだよ。」
それをはじめとして、少し騒がしくなる。
そこで誰かが口を開いた。
「もしかして、木下くん…じゃないかな。」
口を開いたのは鹿又だった。
活動報告にて同名に近い作品について