準備2
何故?元カノは何故そんな事を言っている?
俺には理解ができなかった。今まで、クラスメイトの敵意をこちらに向ける事をしていたのに、急にまとめる方向に動き出した。
そしてあいつは言葉を続ける。
「せっかくの高校の文化祭だよ?みんなでまとまった方が楽しいって。ね?みんなもそう思うでしょ?それにまずはやってみないとわからないよ?」
そう言うが、視線は完全にこちらを向いていた。
「(そうか、あいつは俺がいじめられていた事を使って動いてる)」
てことはその真意は、
「(従わなかったら俺みたいになるぞってか)」
元カノのグループは既にクラスの半分近くを掌握している。あいつは藤村を使って裏で操っているのか?だとしたらそうとうスゴイ。
正に計画通りだな。
もしこの真意が伝わらなかったとしても、クラスの中心人物の意見を断るというのがどれだけのダメージを被るか、分からない彼らではないだろう。
そして反論していた奴らも静かになった。
「ま、まぁそうだよな。やってみないとわからないよな」
「あぁ、俺たちも頑張るよ。」
「本当にっ!?ありがとう!」
全て丸く収まってしまったか。きっとこの文化祭が終われば敵意はさらに増えるのだろう。
「(もうお手上げ状態だな。あいつと直接関わらなかったのが救いだな)」
そこから文化祭の準備は日を追うごとに進んでいった。そして徐々に俺へのイジメもなくなっていった。文化祭に集中しているのだろうか。
文化祭は桐島や元カノ、藤村を中心として動いていた。俺も彼女以外は無視しているわけじゃないから、頼まれた仕事はやるつもりだった。
しかし仕事は何もこない。自分から取りに行くも元カノのグループの人間にいつも邪魔をされる。中立のクラスメイトの反応は様々だった。
戸惑うが周りの空気に押されて無視してしまったり、完璧に居ないモノとして扱う人も居たりした。自分が標的になるのが怖いのだろう。
そして藤村が主導でやっているのだろう。
だから俺は作業の時間は何もする事が出来ず、自分の机にいたり、1人で校内をぶらぶらしていた。
1人でいるとまたしても生田に声をかけられた。
「その…ごめん」
開口一番に謝られた。
別に謝られても困るし、元カノのやった事は変えられないから素直な気持ちで答えた。
「生田が謝ってどうすんだよ。別に俺は生田に何もされてないぞ。」
「でも…無視したから…ごめん」
「俺がそうしろって言ったんだ。気にすんな」
俺の本心を話す。
生田は無言になってしまった。
「じゃあな」
俺は逃げるようにその場を後にした。
「(なんか前にもこんな事があったな)」
たった2週間前のことなのに随分と昔のことに感じた。
そして文化祭の準備は進んでいく。
ついに文化祭の4日ほど前に作業は終わった。みんなが集中して取り組んだおかげか、かなり早めに終わったのだ。他のクラスはまだ作業に取り組んでいる。
「ふぅー、終わったー疲れたー」
大きな声を上げる藤村をはじめとして、みんなが労いの言葉を掛け合っていた。
結果、クラスはかなり団結を強めていた。
俺を除いて。
「(これが元カノの策略か。さすがだな。)」
本当にどこにも関わる余地がなくなった。俺が望んだ事だから、それはそれでいいのかもしれない。
「(後は作業も無くて楽だな、元々何もしてないけど)」
などと俺は思っていた。
しかしそれは思い違いだった。
文化祭の前日。一日中準備に費やされる日に事件は起きた。
教室に置いてあった展示が見るのも無惨な形になっていた。
全て壊れていた。
9月30日の事だった。