亀裂2
本日2本目です。
翌日、起きて家を出る。どうやら寝すぎてしまったらしく、ギリギリの登校になりそうだった。しかし彼女は居ないようだ。
その事にホッとする。
しかし教室に入るとその気持ちは吹っ飛んでしまった。
俺が教室に入ると途端に静かになる。もちろん話を続けているやつもいるが、クラスメイトの大体の意識はこちらに向いている。
周りを見て彼女を探してみる。
すると彼女は椅子に座り、下を向いて私が被害者ですと言わんばかりの雰囲気を出していた。俺は興味無いように振る舞うために、一瞥して自分の机へとむかった。
「ちょっと、あんた今こっち見たでしょ?」
またも相川が絡んでくる。
「たまたまだ。気のせいじゃないか?」
「そんなはずないよ…目があったもん」
横からあいつが入ってくる。
そして目は合ってないのにあいつはそう言う。それに同調するように周りの人も俺に疑いの目を向けてくる。毅然とした態度を取る俺も悪いのだが状況が状況だった。彼女に同情するような空気に変わってしまっていた。もしこのために早く学校へ来たのなら素直に凄いと思う。
そこから彼女はさらに畳み掛けてくる。
「なんで…無視するの…?悪い所があったら直すからさ、お願いだから…」
消え入りそうな声で俺に言う。
俺は彼女の演技力は相当すごい物だと変な所で感心していた。これも客観的に見るようなった弊害か。
クラスは彼女の言葉が通るくらいに静かになっていた。ここで俺が謝ってしまえば、完璧に再起不可能だ。二股の事実も本当に無かった事になるだろう。そしてまた彼女と関わる事になってしまう。それだけは避けたかった。感情は抜け落ちていたため、誰にどう思われても良いと思っていたが、彼女と関わることは本能が拒否した。だから俺は言ってしまった。
「悪いけど、関わらないでくれますか?今の俺は貴女と会ったばかりで喋るつもりもありません。」
完璧にクラスから孤立した瞬間だった。そして1度入った亀裂はどんどん広がっていく。
別に俺はそれでも良かった、彼女と関わる事がなければ。
そしてあいつが声をあげた。藤村だ。
「おい悟、お前はそんなにクズだったのか。」
「(俺が言いてぇよ。お前はカスだったのかと。
1年間仲良くしてきたお前は偽物だったのかと。)」
「なに無視決め込んでんだよっ!ふざけんじゃねぇ!」
胸倉を思い切り掴まれる。周りも流石にマズイと思ったのか少し騒がしくなる。
「(あぁ、俺は殴られるのか。でも別にいいや。
俺の人生なんてそんなもんだろ。
もういいよ、諦めた。好きにしてくれ。)」
そう思った時、タイミングよく先生が入ってきた。
「あれ、なにしてるの?プロレスか?高校生にもなって。」
「…あはは…そんな所ですよ。」
そう言って藤村は手を離す。
俺は席に戻った。
その日は特に何かをされる事はなかった。
9月2日のこと
週末を挟み月曜日になる。
また学校へと向かう。