新たな火種
それから数日経つと、毎年行われているクラス対抗の球技大会が開催された。種目はドッジボールやバレー、バスケ、サッカーなどが行われている。
「じゃあ、どれに出るか決めようかー」
声を発したのは新しく学級委員となったのは大山では無く、一橋 里見だった。その相手も金谷 悠介と、カップルで学級委員をしていた。
去年も一昨年も学級委員として大山は立候補していたが、今年はしていなかった。有名で人気のありそうなあの2人には流石に割り込みづらい所もあるのかもしれない。
「1人1つだからねー。順番に言っていくから。あ、悠介は書記をお願いね。」
「ん、了解。」
その光景を俺はじっと眺めていると勝田と生田が集まってきて声をかけてきた。
「おい、大将。今年は何に出るんだ?」
「悟は何出るか決めたのか?」
微妙に食い気味に2人に同じ質問をされる。
「えっと……まだ決めてはないけど……去年と同じバスケにしようかな。」
「なら、俺も大将と一緒に出るかー!今年こそ、勝たねぇとな!」
そう言って俺の肩を叩く勝田。勝田は運動に関しては高スペックなため、大体の競技はなんとかなる。勉強も高スペックとは言い難いけども。
「じゃあ、私はドッジボールでいいかな。得意だし。」
一方、生田はドッヂボールにしたようでやる気満々と言った感じ。勝田と同じようなタイプなのは分かりやすい。
「なぁ、大将。バスケの合間にドッジボール観に行こうぜ。」
「そうだな、行こうか。去年は見れなかったから今年は見ておきたいな。」
「任せろ!今年も優勝狙ってやる!」
生田の目は異常に輝いていて、殺気に溢れていた。
生田は去年、2年ながらもドッジボールで大活躍してクラスを優勝に導いたらしい。らしい、というのは俺が見てないから伝聞で聞いただけなんだが、とにかく凄かったという。決勝では異例の2年同士という事もあり、情報はよく伝わってきていた。
「じゃあドッジボールはー?」
一橋の呼びかける声が聞こえると生田は思い切り手を挙げてアピールをしていた。
そんな生田に微妙に呆れながらも一橋はゆっくり計上していく。
「そうね……じゃあ後は私が出るわ。じゃあ次はバスケね。」
人数を調整しあっさりと決めていく。そんな手際の良さで、種目決めはすぐに終わった。
「それじゃあ、それぞれでちょっと集まってもらえる?ルールの紙とか渡す物があるから。」
一橋がそう言うと、みんなは動き出し適当なところに集まり始め、生田もドッジボールの集まりに向かっていった。勝田と自分を含め、ここには6人ほど集まっていた。
「えっと、この中で運動出来そうなのは……勝田くんと木下くんかな?」
そう言ったのは同じバスケをやる事になった金谷だ。割と余った人が集まったが微妙に俺は少し疑問を持つ。
「えっと、金谷は運動苦手なのか?」
記憶では金谷は自主的に手を挙げていたはずだ。
「え?あぁ、すんなり決めるのはここが1番かなと思って。それに里美もここに押し込みたそうだったからいいかなって。」
「なるほどね。」
聞いていて、選択というよりも押し付けられたと言った方が正しいような気もするが、彼自身はあまり気にしていないようだ。
「それに僕は演劇部だから使い物にならないし、できるのは空気を読む事くらいだよ。」
金谷は少し困ったように笑いながらそう付け足した。
「じゃあ、俺と大将はずっと出る感じか?」
「まぁ、そうしてくれると助かるかな。」
「分かった、ならずっと出るか。大将、すぐにバテるなよ?」
「善処します……」
勝田が少し挑発気味に問いかけるが、俺は自信なく返事するしかなかった。
そして球技大会は当日を迎える。そこで何も起きなければ良かったのだが、そういう訳にも行かなかった。
遅くなりすみませんでした