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嵐の後2

生田の告白に返事をしてから数日が過ぎた。元カノは未だに動く気配は無い。あの性格からして行動を起こさない筈は無いと思っているが、俺の思い過ごしなのだろうか。

いつも通りに見える日常が今日も過ぎて行く。常に1人でいる元カノとそれを避け続けるクラスメイト。

事態が終息してから、この構図だけは変わらない。今はもう12月に入ろうかという時期なのに。


「悟、今日も一緒に食べよう?」


「ちょっと待ってくれ。……よし、片付け終了っと。」


生田の声に返事をしながら、俺は机の上を片付けていた。それを手早く終わらせ、いつも買っているコンビニ弁当を出した。


「またそれか?悟はそれ好きだな。」


呆れたように生田は言うが、最近のお気に入りだから仕方ない。


「いやだって、美味いからさ……」


「もうちょっとバランスとか考えろよ。」


「そのうちしようかな……」


「それは何回も聞いた。」


「はい……」


「まぁ、いいや。早く食べよう!」


生田はそう言って、自分の弁当箱を開けた。中身はいつもお母さんが作っているようで、とても美味しそうな弁当だ。そしてそれを美味しそうに生田は食べている。

それを見て俺もプラスチックの蓋を開けて食べ始めた。


「なぁ、悟。」


「なんだ?」


「その……1つの提案なんだけどさ……弁当作ってきてあげようか?」


それを聞いてつい、食べ進める手が止まる。


「最近練習しててさ、どうかな?」


「そうだな……なら頂こうかな。」


「じゃあ早速明日から頑張る!……けど失敗したらごめん。」


「最後なんか言ったか?」


「いやいやっ!なんでも無いよ。」


「? そうか」


俺の問いかけに妙に焦る生田。

後半の声は小さくて俺には聞こえなかった。多分そんな大事な事でも無いだろうと思い、俺は気にしなかった。そうこうしているうちに昼ご飯は食べ終わった。

生田と付き合って1ヶ月と少しが経っていた。最初は変に緊張しているようにも見えたが今ではだいぶ砕けた態度になっている。遊びに行くのも、少しづつだが増えるようになった。

しかし、俺は異性と触れ合う事に少し抵抗を感じ始めていた。生田に歩み寄ろうとする度に、あの時の事を思い出してしまう。手を繋ぐくらいは平気だったが、キスはまだ出来そうになかった。

それでも生田は俺のペースに合わせてくれるようで、ゆっくりと付き合って行こうという事になっていた。


———————————————


「起立、礼」


放課後になり、教室からは続々と人がいなくなる。俺もその流れに乗って教室を出る。廊下で勝田や生田と少し喋る。


「またな、悟!明日な」


「じゃあな、大将!」


「おう、じゃあな。」


そう言って俺は学校を出た。そしていつも通り家と向かって歩く。そして家に着いて鍵を開けようとする。

しかし、鍵穴に鍵を入れて回しても、カチャリという音が聞こえない。

鍵がかかっていないのだ。

いつもは両親が夕方頃に出るため鍵はかかっているはずだ。しかし今日は開いていた。

ドアを開ければ玄関には見慣れない靴が一足あった。

それをみた瞬間に体が強張る。リビングからはテレビの音が聞こえているが、それ以外には何も聞こえない。

そっと玄関の扉を閉めて、リビングへと向かう。そこに居たのは他でもない、元カノだった。


「あら、帰ってきたの?お帰り〜」


妙な安心と共に嫌悪感が浮かび上がる。


「……なんで家にいるんだ。」


「別に良いじゃない、昔はよくあった事でしょ?あとね、近場だったから靴は適当に選んできたの。びっくりした?」


そう言って微笑む元カノ。バカにしている雰囲気が思い切り伝わってくる。


「さっさと帰れ。」


「冷たいわね〜、別に良いけど。」


そう言いながら立ち上がり玄関に向かう。そこで俺は気になった事を質問した。


「お前の目的は何なんだ?なんでこんな事をした?」


そう聞くと元カノは俺に振り返って答えた。


「楽しいからよ?ただそれだけ。」


「楽しい?」


「ええそうよ、楽しいのよ。積み上げてきたもの思う存分壊したり、周りの人間を支配してみたり。そういう事が楽しくてたまらないの。

悟と一緒にいる事が1番楽しいと思っていたけど、そうじゃなかった。この支配している感覚が私には1番気持ち良いの……」


「やっぱりお前はイかれてるな。」


「別に理解されなくても良いわ。そんなもの求めてないもの。ましてや恋愛なんて、それ以上に下らないものだと気づいてしまったし。」


つまらなそうに返事を元カノはした。表情もそんな空気を醸し出している。


「悟も本物に触れれば気づくわ。どれだけ愛が醜いかなんてね。」


「訳がわからないな。」


「まぁいいわ。その時を楽しみにしてなさい。」


そして家から出て行った。

俺は安心したのかその場に座り込んでしまった。しかしそんなものは長くは続かない。元カノの言葉で、そう意識せざるを得なかった。


12月の修学旅行も終えて3学期に入っても、

受験モードに変わる気配はまだしない。一部では夏頃から準備しているものもいるが、殆どはテスト勉強だけという形だ。

そんな3学期が過ぎていく中、俺の警戒とは裏腹に何か起こる事はなかった。そして進級し、4月になった。

クラス替えがあったが結果は、他にも何人かは同じだったが生田、勝田、大山と同じクラスという結果だった。

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