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本性

クラスの全員が俺の味方となり、元カノの敵と化した。そんな状況にもかかわらず元カノは俯いたままだ。表情を読み取ることは出来ず、何を考えているのか分からない。

そしてこの状況をひっくり返す事も不可能だろう。元カノを擁護する者は誰もいない。

そんな時元カノの口から、ふふふと堪えるような、それでいて堪えきれず漏れてしまったような笑い声が聞こえた。


「……フフッ……あなた達を見ているのは飽きないわ。」


そうして声はさらに大きくなり、元カノの高らかに笑う声が教室中に響く。元カノが本性を表した瞬間だった。

殆どの人が呆然としていて、何が起きたか分からないといった顔をしている。

ひとしきり笑った後、元カノは急に静かになり喋り出す。


「本当に飽きなかったわ。お礼を言いたいぐらいよ。」


「ど、どういう事……よ。」


相川と言い争っていた女子が元カノへと質問を投げかける。


「どういう事って言われてもねぇ。貴女はこの状況を見て、まだ分からないの?頭にお花でも咲いてそうね。」


元カノは鼻で笑いながら話す。その姿をまだ認められないのか、そう言われた彼女は反論する事も出来ない。


「こんな人にも分かりやすく説明すると、藤村を誘ってヤッたのは私。被害者ぶって悟をいじめたのも私。文化祭で作った展示を壊したのも私。その後に藤村を嵌めたのも、相川をイジメさせたのもぜーーんぶ、わ・た・し。」


元カノは抑揚をつけた喋り方で話し、最後は甘く囁くように締めた。

そんな元カノに対して俺が口を開こうとすると、それよりも早く桐島が声をあげた。


「もしかして……今までのは全部……演技だったの?」


「ええ、そうよ。私が退屈しないためにね。」


「じゃあ、みんなをまとめたのも?」


「そうよ、そっちの方が面白くなるかと思ってね。」


「文化祭の前に問い詰められた時の事も……演技だったの?」


「当然でしょ?演技でないはずが無いわ。そろそろ、この手の質問にも飽きたのだけど?」


それから桐島は口をつぐんで大きく息を吸い込む。


「大山ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


普段の桐島からは考えられない程の声が聞こえた。そして、元カノの方へと向かおうとする。


「勝田っ!」


俺は桐島の近くに居た勝田に、止めるように意思を込めて叫ぶように声を出す。

勝田はそれに反応し、すんでのところで桐島を抑えた。その拘束から抜け出そうとするも、桐島の非力さでは勝田に勝てそうもなかった。


「桐島っ!落ち着け!冷静になるんだ。」


勝田が桐島に呼びかけて落ち着かせようとする。その声が届いたのか、桐島の勢いは収まった。しかしまだ息は荒く、勝田が拘束を解けば今にも飛び出してしまいそうな雰囲気さえあった。


「こっちに来てくれても良かったのに。どうせなら貴方の童貞っぽさも無くしてあげるわよ?」


「クソが……喋るんじゃねぇよ。」


勝田も頭にきているようで、口が悪くなっている。


「あぁーあ、怖い怖い。」


しかし、元カノは相手にはしていないようだ。そして俺へと向きなおる。


「よくここまで準備したわね。特に藤村を使うのは意外だったわ。あんな事をされたのにね。でも、とても柔軟性があって良い対応だと思うわ。」


「それはどうも。さて、アンタの悪事はみんなにバレたワケだがどうするんだ?」


俺は努めて冷静に元カノと話す。


「別に……特に何をする気も無いわ。それに公にしようにも、イジメがバレてしまうものね。」


元カノの言う通り、これを公にすればクラスのほぼ全員が損害を受けるだろう。それは恐らく自分を保護する考えの多いこのクラスには、悪手でしかない。


「あぁ、公にはしないさ。でも、アンタの学校生活までは保証出来ないけどな。」


「そこらへんはどうでも良いわ。それよりも私は悟に対して思うところがあってね……これでも怒っているのよ私は。」


微笑みながら元カノは話を続ける。


「せっかく作った私の居心地の良い空間を、壊してくれちゃってさぁ。本当は奥深くまで突き落としてあげたい気持ちで一杯なんだよね。」


「そうか……俺も似たような気持ちだな。」


「やっぱり悟は飽きさせてくれないわね。今日はもう白けちゃったし、帰らせてもらうわね。じゃあね。」


そう言って元カノは教室から出て行った。クラスメイトの大半は動くことができない。起きたことの大きさが認められない者や、怒りを持っていても桐島の行動に唖然としている者もいたりと様々だ。

この状況になって初めて、勝田は桐島の拘束を解いた。桐島からは先程の雰囲気は感じられなくなっていた。


「俺も帰るよ……」


フラフラと立ち上がり、自分の荷物を持って桐島も教室を出て行った。

その流れに乗るように、続々と教室内に居た人は帰って行った。残ったのは、俺と勝田、生田と相川、そして藤村の5人だった。

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