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崩壊3

「悟。何があったの?」


元カノからは先程の声とは違う、柔らかさを持った声が聞こえる。


「俺は別に何もしてない。間違えて送った音声が勝手に広まっただけだ」


「音声?」


「文化祭の時の会話だよ。間違えて送ったんだけど、何故か噂になっていてな」


その言葉を聞いた何人かが目を反らす。そして怪訝な顔をする元カノに、俺はどうでもいいというような雰囲気を交えながら答えようとする。


「ちゃんと噂にならないように言っておいたんだけど……まぁ、仕方ないな」


「なら!みんなも勘違いしてるだけ——」


「それはどうかな?」


俺は元カノの声を無理矢理切った。


「だって変だよな?藤村の言った事もそうだが、あまりにも可笑しい点が多すぎる。なぁ藤村、なんで俺をいじめていたんだ?」


俺は藤村にそう聞く。緊張が張り詰めた教室内では、唾を飲み込む音さえ聞こえそうだ。そして、藤村は答える。


「そんなの大山に言われたからに決まってんだろ」


教室がざわつく。そこで俺はさらに言葉を付け加える。


「ここにいる全員が分かってるんじゃないか?発端は大山、しかし直接は参加しないって態度。それでイジメてしまえばもう戻れないって。」


「そんなの嘘よ!みんな信じてっ!」


大山の必死な声が聞こえる。


「今更何を言ってるんだよ。そう考えれば、お前の証拠以外が綺麗に繋がるってのに……」


「どうしたの、悟?何かあったの?」


彼女は意味が分からないとでも言うように振る舞う。これを見るに、まだ諦めていないようだ。


「何があった、かぁ……お前の二股ぐらいしか起きてないけどな。」


俺は言葉の後半は小さく呟くように言った。思わず漏れた声に自分で気を引き締めようと心の中で喝を入れる。まだ終わりじゃない、ここからが正念場だ。


「取り敢えずそれは後でだ。水掛け論にしかならないしな。それより今はこの状況をどうにかしないと。なぁ、相川?」


「え?えぇ、そうね。……でもどうやって?」


急に話を振られて慌てる相川。しかし、すぐに落ち着きを取り戻し俺に問いかける。

この話の始まりである、イジメがあり証拠が残ってしまっているという状況では、相川かイジメの主犯格のどちらかが折れなければならない。ならばどうするというのか。


「どうやっても何も無いだろ?そもそもコレが起きた原因はなんだ?」


「? それは……大山さん……なのかしら?」


俺の望んでいた答えが聞こえた。


「だよな。なら操られていたクラスメイトに非は無いよな?そうだよな、みんな!」


「ちょっと、それどういう事——」


「このイジメも全て大山が原因だって言ったんだよ。イジメていた人達も、無視していた人達も何も悪くない。だろ?」


「もし、大山さんがしていたら……そうね。」


「だよなぁ。せっかく取った強力な証拠が意味なくなるけど、それは仕方ないよな。」


そこでクラス全員の空気が変わる。


「えぇ、そう、ね……」


途中から気付いてた人もいたみたいだが、俺の最後の言葉で全員が真意に気づいたようだった。俺はクラスメイトに言外に脅しをかけたのだ。

『もしここで元カノに罪をなすりつければ、イジメは見逃す、しかし元カノの味方をするならばイジメの証拠で何をされるか分からない』という脅しを。

もしイジメに加担していなくても、藤村の先程の言葉で、自分も関係あると思わせる事は出来ているだろう。

そして、その言葉の後に続く声は無い。徐々に広がるのは、どちらに味方すれば安全かという考え。それと同時に元カノの周りにいた人は離れ、気づけば元カノを中心に空間が出来ていた。

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