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崩壊2

「あぁーあ。変わんねぇな、お前らは」


そんな静かな空間で声を上げた人物。それは藤村だ。そしてそんな声に、彼女は過剰に反応する。


「どの口が言ってんのよ!」


焦りからかイジメていた時の雰囲気などまるでなく、気が立っていた。元カノの方は、まだ静観という態度を取っているが、藤村の様子が気になっているようには見える。


「だってよ、考えてもみろよ。俺が居なくなった所で何も変わらなかった。イジメは止まらないし、周りも関係ないと言わんばかりの態度。全員揃って俺を批難するくせに、自分の時は無関係ってか。ホント、笑えるよ」


さらに煽る藤村。そして、この言葉を聞いて耐え切れなくなった人達は、口々に藤村を罵倒し始める。


「久々に来たと思ったら、煽っただけかよクズ」


「あんたにだけは言われたくないわ!」


「黙ってろよ、犯罪者」


そんな言葉の中でも、藤村はそれを遮って声を上げる。


「犯罪者?よく言うぜ!お前らは俺と同類だってのによぉ!保身の為だけに動いて、自分が良ければ周りはどうでもいいくせにさぁ。俺の行動と何が違うんだ?」


その言葉に教室はさらに罵倒が強くなる。


「それにちょっと待ってくれって。少なくとも犯罪者じゃないからな?なぁ、大山」


その言葉に静かになる教室。大半は何を言っているんだという疑問のようだ。藤村は元カノへと矛先を向ける。


「何を言っているの?わけがわからないよ」


元カノは準備していたように、演技を始めたようで声は小さめだ。


「お前と一緒に木下の事を罵倒しながら楽しくライムしてたのを忘れたのか?」


「そんな事、藤村君の捏造じゃない……それにスマホに声だって——」


「それだ」


「えっ?」


藤村は声を低くして、話し始める。


「そこなんだよ。俺がおかしいと思うのはよ」


藤村は一息ついて、話を続ける。


「俺もさぁ、調べたんだよ。どうやって音を録ったのか知りたくてな。そしたらさ、スマホってのは簡単に別の端末に、送れるんだよ」


「私が送ったとでも言いたいの?」


「そう焦るなって。ただ、聞いて欲しい事がいくつかあってな」


全員が藤村の言葉に耳を傾ける。誰もが聞かなければならないと感じていた。


「さっきも言ったが、スマホ同士で音は簡単に送れる。特別な物は必要無い。そして驚くべき事に、証拠が殆ど残らないんだよ。それこそ一般人には到底無理なレベルでな。そうだろ、桐島?」


「え、あ、うん。それは構造をしっかり理解している人か、専用の道具でも無い限り、無理だと思う……実際に出来るかも分からないし…」


急に話を振られた桐島は驚きながらも慎重に話した。そして、その言葉を聞いていた誰もが、頭に疑問符を浮かべたような表情をしている。


「それがどうしたのよ、藤村君」


そしてその芝居掛かったように喋る藤村に、元カノは答える。藤村は更に煽ろうとする。


「その反応だと、知ってたみたいだなぁ、大山」


「使われる機会が少ないだけで、使った事ある人なら履歴が残らない事くらい、誰でも分かると思うけど……」


「そうだよな、使われる機会は少ないからなぁ。知らない人も多いだろうな」


「藤村君は何を言いたいの?私が捏造したっていうなら、そう決定付けるものを示してよ!」


徐々に声が大きくなっていく元カノ。訳のわからない事を話す藤村に、少しイラついてる様にも感じた。周りにもそんな元カノの雰囲気が伝わったかは分からないが、藤村を睨む視線が少し強くなった気がした。


「だから、落ち着けって。俺は1つの可能性の話をするだけだよ」


そして一瞬、間を作って再び話す藤村


「お前らは証拠が残らないって事が、どういう事かわかるか?それは送ったとしても、わからないって事だ。という事は、俺が意図的に録音したという情報自体が間違っている。そうは思わないか?」


人を小馬鹿にしたように喋る藤村だが、その言葉の意味は、十分過ぎるほどに浸透した。


「だって考えてもみろよ。あの音声、別のスマホでお互いが撮ったって割には、音が似すぎていなかったか?普通に考えれば可笑しいと気づくだろうなぁ」


そしてそれでもなお、話を続ける藤村に元カノは大声を上げる。


「私が捏造したっていう証拠も無いのに、何を言ってるのよ!話にならないわ!流石の私でも怒るわよ」


「そうキレんなって。ただ俺は、『俺が自分で録音したという証拠が無い』と言っただけだぞ?付け加えれば、俺がそれを使って本当に脅したのかも怪しいなぁ」


元カノの怒りは眼中に無いという様な態度でニヤニヤしながら藤村は喋り続けた。


「藤村君……私はもう、許さないわ。みんなはどう思うの?」


元カノは教室にいる全員に聞こえる様に声を張って喋る。

通常ならば、ふざけた様な事を言う藤村に対して、全員が許さなかっただろう。しかし、今は違う。元カノの呼び掛けと教室には温度差が大きくあった。


「…………」


誰もが閉口する。


「どうしたの、みんな?みんなも藤村君には思う所があるでしょ?藤村君はみんなもバカにしたのよ?」


それでも教室の空気は重い。


「なんでこうなってるんだろうなぁ?よく分んねぇなぁ。木下、なんか知ってるか?」


全員が一斉にこちらを向いた。

ここからは俺の出番だ。

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