始まりの日2
スマホからなので見にくいかもしれませんが許してください。
「えっ?何言ってるの?」
「貴女こそ何言ってるんですか?ちょっと理解できませんね」
「だって私たち付き合ってるよね。家も隣だよね?」
どの口が言ってるんだよ。まぁ別にいいや。
「そんな事実、ありましたっけ?覚えてないですね。」
微笑みながら答える。
「ねぇちょっと、本当に大丈夫?記憶喪失?」
「(もしそうだったらどんなに楽だろう)」
そんな事は思っても顔には出さない。
すると異変に気付いた何人かが声をかけてくる。
「どうしたのー、なんかあったんー?」
「なになにケンカかー?」
「どうしたんだお前ら?」
その声に彼女が反応する。
「いや、それが…悟がなんかおかしくて」
「悟が?どうしたんだ悟?なんかあったのか」
そう聞いてくるのは、藤村 大河。
彼女を寝取ったやつである。
心の底ではおまえのせいだ
と思いながらも平然を装って返す。
「何もないよ?彼女が急に話しかけてきたんだよ。」
「えっ?」
と驚きの声を藤村があげる。
騒ぎが大きくなりそうなところで遠くで勝田が声をあげる。
「おーいみんな、早く体育館に行こうぜ。ウチが1番遠いんだから」
その声に反応するように周りに集まっていた人(主に女子)が離れていき、その流れで他の男子も離れていった。
ただ体育館に向かう途中1人が話し掛けてきた。
「おい、どうしたんだよ。何があった?」
話し掛けてきたのは生田 美咲。
高校からの付き合いである。男勝りな性格で言葉遣いが乱暴な事以外は運動ができるただの女の子である。
「いや何でもないよ。気にすんなって」
そして向こうからよく話しかけてくる。そのおかげで少し仲がいい。みんなで遊びに行く時の参加率が高いというのもあるかもしれない。
「いやなんかあるだろ。お前は無意味にこんな事する奴じゃないだろっ。」
少し強く言われる。
まぁ確かにそうなんだけどと思いながら俺は巻き込みたくなくてスルーを決め込んだ。
「そうか?案外適当かもよ?まぁ何もないから気にすんなって」
そういって俺は足を速めて生田から逃げるように体育館に向かった。
始業式が終わった後に声をかけられる。
「貸し1だぞ?大将。」
顔をニヤけさせながら近寄ってきたのは勝田だ。
「さっきはサンキューな」
「大将を助けるのは当然だろ。何かあったみたいだから助けたが大丈夫か?」
俺はあまり話したくはなかった。寝取られたなんて情けないし信じてもらえないかもしれないからだ。だから俺は再び避けようとした。
「大丈夫だよ、何もないって。」
「嘘つかないでくれよ大将。もう5年経つ仲だぜ?1年ぐらいはアレだったが。」
俺はそれより長い関係の奴に裏切られたけどな。
「本当だって。俺の彼女に誓ってもいいね。それにその話はしなくていいよ。」
俺は笑って答える。
すでに俺の中ではいないからね。誓ってもいいと思う。…たぶん。
「まぁ、大将がそこまで言うんならいいけどさ。なんか企んでんなら1枚噛ませてくれよっ!」
と言って思い切り俺の背中を叩く勝田。
「いって!手加減しろよ、力強いんだから。あんなのはもう御免だからな。」
「わるいわるい」
と言ってあまり反省する様子は見えない。
そして走って先に行こうとする。
しかし思い出したように戻ってきて、
「しばらくは何もしねぇよ。でも大将がヒドイ顔してたら、もっかい声かけるからな。」
と言ってトイレに駆け込んで行った。
「(こいつ伊達に一緒じゃねぇや)」
ちょっと心にきた。
しかし同時に、心の奥底に信用しきれない自分の姿も見ていた。
「(全部に疑ってかかるなんて最低かよ俺は)」
今思うと朝の生田から逃げるように去ってしまった事もこの気持ちが隠れているからかもしれない。
教室に戻ると朝の話がまた聞こえてきた。