会議
話し合いは、どうやって元カノに勝つか、という内容に切り替わっていた。
「今のままじゃ確実に無理だ。元カノに囲われてる奴は、元カノが被害者という前提で動くからな。その点、相川はまだ考える余力があったようだけど」
俺は現在の状況について考えを述べる。
「だから今は手が出せない時期だと思うんだ。だけど元カノの性格からして、藤村を切った今、何かを仕掛けてくる可能性が高いと思うんだ。だから向こうが手を出してくるまで待つ。そこからカウンターを決めたいと思ってる。どう思う?」
「そうだな。木下ので大丈夫だと思う」
「大将の考えで概ね良いと思うぞ」
2人はそう言って肯定してくれる。相川も特に異論は無いようだ。
「それで、恐らく向こうが仕掛けてくるのは次のLHRの日だと思うんだ」
「根拠はあるの?」
「根拠というほどのものでもないけど、もう直ぐ、修学旅行のグループ分けだからだな。ホームステイ先は変えられないけど、自由行動の班はこれからだしね。元カノの性格を考えれば、ここを狙ってくるはず」
この学校は修学旅行が12月に行われて、行き先は海外だ。そこでホームステイをしたり、学校指定のレクリエーションなどをして、最後に自由行動の時間がある。俺はそこで元カノが絡んでくると思っていた。『俺と一緒いる』か、『俺をイジメる』かのどちらかしか考えていない元カノなら、これを逃す筈がない。
「そうか、それは分かったがどうやってカウンターを決めるんだ?」
「それなんだけど…もしかしたら相川に負担がかかるかもしれない。それにコレに元カノが乗ってくるかどうかも分からない…大丈夫か?」
そう言いながら俺は、相川を見つめる。相川しっかりと俺の目を見ながら、答える。
「大丈夫よ。少しぐらいは我慢するわ」
「そうか、ありがとう。じゃあ説明する」
そう言って俺は説明を始める。
俺の考えでは、元カノが班決めの時に俺と一緒の班になろうと提案してくると予想していた。元カノからすれば、了承されればOK。されなくてもそこから、周りを煽りながら被害者になれるからだ。その攻めてくる所を俺は利用するのだ。そして全てを話し終えてその日は終わった。そして問題のLHRがある日を迎えた。
「じゃあ今日は修学旅行の班決めだから自由に決めて良いぞー。後で纏めて教えろよー」
担任の成瀬がクラスのみんなにそう声をかける。教室では徐々に会話が多くなる。そこで元カノが俺の所にくる。
「悟…その……自由時間、一緒に周らない?」
そう声をかけてくる元カノ。一緒に相川と佐山もいる。そして、そこに割って入るのは生田と勝田と桐島だ。基本は4人で組むようになっている。そして勝田が俺を呼ぶ。
「大将!一緒に周ろうぜー!」
「えっと……」
俺は困ったフリを見せる。そこで助け舟を出すのは相川だ。
「まぁ、木下も女子3人じゃ居づらいと思うわよ?」
「そうかなぁ?でも、私は悟と周りたいんだけどなぁ」
食い下がる元カノ。
「大将、どうしたんだ?」
「いや、ちょっと重なっちゃって」
そこでまたも相川が喋る。
「まぁ、今回は仕方ないよ。諦めよう?」
「うーん、じゃあ分かった。悟、また後でねー」
そこでやっと引いてくれた。
俺は断ると確信していた。何故なら、ここはみんなの前だからだ。常に猫を被る元カノには、強要する事が出来ない。そして被害者というお面も、相川の言葉により被りにくくなる。俺が元カノを否定する前提で成り立つ手段だからだ。元カノからすれば、正に飼い犬に手を噛まれる思いだっただろう。
だがまだ、仕掛けてくる筈だ。その全てに対して、上手く対応しなくてはならない。ここからが本番だ。




