公開2
教室には、すすり泣く声が響いていた。その音を響かせているのは、大山 美香だ。
「……うぅ…ごめん…なさい。私がやったんです」
教室はざわつき出す。俺は元カノが嘘泣きしている事に気付いていた。そして次の行動を元カノは起こしたのだ。
「…うぅぅ……脅されてたの…藤村君に」
この瞬間、元カノは藤村を切り捨てた。そして元カノの言葉に反応するのは相川。
「脅されてた?どういう事よ美香?しっかり教えてくれない?」
相川の声は微妙に震えているように聞こえた。まるで何かに怯えるように。そして、その声を聞いた元カノは自分のスマホを取り出す。そしてボイスメモを開いた。再生して流れたのは藤村と元カノの会話だ。
『お願いだから落ち着こう?ちょっと怖いよ?』
『まぁまぁ、そんなに怖がんなって初めてじゃないだろう?』
『だから止めて、お願いだから。そんな事したら大変な事になるよ?」
『そんな反応されると、そそられるね〜。ほらっ!』
そのタイミングでガタンっ!と大きな音がする。
『きゃっ!やめっっ……」
そこから音声は行為の途中で切れた。そして口を開く元カノ。
「ごめんなさい……これで脅されてて……」
唖然とするクラスメイト達。それは藤村も例外じゃない。
「藤村君の……せいで。……みんなには言っておきたいんだけど…このクラスの秘密にして欲しい…誰にも言わないで欲しい」
そう言うと、藤村はなんとか喋れる様になったのか腑抜けた声を出す。
「は?…どういうことだよ……こんな事俺はしてねぇよ…みんな、信じてくれ…向こうから来たんだよ。美香が誘ったんだよ…なぁ、そうだろ?」
懇願する様な声に途中から変化していった。
しかしそれに対する元カノの返答は無情なものだった。
「藤村君のスマホにも入ってるよ……悟に聞かせてやろうかって脅してきて…!私は何かの為にと思って自分のでも録音してたの…」
「嘘だっ!そんなの入ってねぇ!本当だ!確認してくれ」
「あぁ、確認させてもらう」
藤村は必死な声で訴える。その流れで勝田は藤村のスマホを探し出し、確認した。そこには1つだけ録音データがあった。再生させると先ほどの音声と、非常に似ているものだった。
「嘘だ……なんでだ……そんな事俺はしていない……ちがう、ちがう、ちがう」
魂が抜けた様になる藤村。そこでさらに喋る元カノ。
「お願いします…このことは先生にも言わないでください。警察にも。私はそんな事、願ってないから。この呪縛から解放されただけで十分だから。もう、いいから。そっとしておいて欲しい」
涙を流しながら喋る元カノ。そして俯く。そこでさらに声が上がる。またも藤村だ。
「そうか木下…お前の目的はこれだったんだな……妙に静かでいると思ったら。なぁ、どうなんだよ?人を陥れる気分はよぉっ!楽しかったか?スッキリしたか?なぁ、教えてくれよ?」
「何言ってるんだ藤村。そもそも俺は、自分の疑いを晴らしたかっただけだ」
「そうか、そういう反応か……お前はただ、俺を潰したかっただけだろ?それともなんだ?復讐したかったとでもいうのかぁ!あぁ!」
思い切り大声を出す藤村。しかしまたしても他の男子達に抑えられる。そこからは全く抵抗もしなかった。しばらくして、先生がやってくる。その状況を見た先生は藤村を連れて行く。藤村の大声が発していた、宮島も一緒に連れて行かれた。宮島は元カノの告白を聞いてから、終始とても驚いた顔をしていた。そこから先生はみんなに帰るように促した。
それを機に誰もが帰り始める。誰も喋らない。あまりの事の大きさに喋れない様だった。今後の事を、勝田と生田で話す予定だったが、ゆっくり話したいとの事で土曜日になった。そしてゆっくり歩きながら俺は帰る。
家に着いて中に入るが、いつも通り誰も居ない。家には夕日が射していてそれなりに明るい。俺は自分の部屋のベッドに真っ直ぐ向かって倒れこんだ。最後の事を考えていた。藤村の放った言葉を。
『そうか、そういう反応か……お前はただ、俺を潰したかっただけだろ?それともなんだ?復讐したかったとでもいうのかぁ!あぁ!』
あの瞬間、藤村は『俺と元カノが共謀して自分を陥れた』か、『俺が藤村に復讐した』かの2つを考えていたのだろう。しかし、藤村自身は元カノに捨てられた事により、前者の
可能性が高いと判断したのだろう。残念ながら元カノは、最初から藤村の味方では無いからこんな結果になったんだろうけど。
しかし、何より気になったのはそこでは無い。藤村が放った『復讐』という言葉。それだけが妙に心に残った。
10月26日の事だった。
翌日、学校に来るが何もされていなかった。代わりに、俺が疑われていた時よりも、重苦しい雰囲気が教室を漂っていた。そして朝のHRが始まる。藤村は学校に来なかった。
そろそろ、書き溜めが切れてきたので毎日投稿とは行かないかもしれません。そうなってしまった場合は申し訳ありません。許してください