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用意

「木下、先ずは謝りたい。冷たい態度をとって悪かった」


宮島は開口一番にそう言った。実際には宮島には、何もされていないのだが、謝罪を受け入れなければ進まないと思ったから、俺は受け入れ、そこから話を切り出した。

ちなみに内容を全て話していいと勝田には言ってある。


「あぁ、大丈夫だよ宮島。それより協力をしてくれるっていうことか?俺を信じてくれるのか?」


「あぁ、お前の方が信じれる。まだ藤村を信じたい気持ちはあるが、取り敢えずは木下側だ」


どんな事を勝田はしたのだろう。きっとあの内容は宮島からしたら、荒唐無稽な話のはずだ。人望の違いだろうか。


「ありがとう。勝田、全部宮島に伝えてあるか?」


「もちろんだ、大将。明日にでも決行出来そうだ」


「じゃあ、明日からやってしまおう。あいつが次にいつ動くのか分からないうちは、早く行動した方が良い」


「だよな。宮島頼んだぞ!」


元気づけるように声をかける生田。

そして物事はついに動き始めた。



翌日、テストが終わった後、宮島は藤村に話しかけていた。その様子を俺は陰から見ている。宮島はスマホを胸ポケットに入れていた。録音をするために。俺が考案した作戦である。


「藤村、テストはどうなんだ?」


当たり障りない会話に見えた。しかし藤村はとてもイラついている。


「あ?宮島か。そんな事は今、関係ねぇんだよ」


声に怒気がこもっている。宮島はどの様に話を引き出すのだろうか。


「まぁまぁ、そう言わずに。何があったんだよ?俺に教えてくれよ」


重くならないように、明るく話しかける宮島。


「はぁ、お前になら良いか。ちょっと来い」


そう言って2人で歩いていった。藤村の後ろを歩く宮島は少し振り返り、俺たちに来ないように合図をした。

俺は少し心配だったが、勝田は信頼しているのか「取り敢えずは、大将の家に行こう」と言い出した。





そして暫くすると宮島が俺の家に来た。玄関の扉を開き俺は宮島を見る。表情はとても暗い。そして口を開く。


「木下、藤村はかなり喋ってくれたよ。聞いてもいないのに、行為の事まで。勝田から聞いた話を疑ってたわけじゃないが、藤村から直接聞いて、初めて実感したよ。昔はそんな奴じゃなかったはずなんだけどな。友達だと思ってた奴がこんなだと辛いな」


「まぁ、取り敢えず中に入れよ、宮島。録音したのを確認させてくれないか?」


外で話していると、聞かれる可能性もあるので、俺は家に入るよう促した。宮島はそれに応じて俺の部屋まで来た。


部屋では生田と勝田が待っていた。宮島の雰囲気を感じ取ったのか、真面目な顔だ。そして勝田が口を開く。


「まずは、宮島。ありがとう。それと悪かった。お前に友達を裏切るようなマネをさせて」


俺と生田も宮島に、感謝と謝罪を込めて頭を下げた。すると宮島は、


「いや、いいんだ。俺が木下にした事に比べればこれくらい。それより、本当に確認するのか?」


謝られるのを嫌うかのように、話題を変える宮島。そして言葉を続ける。


「正直、木下は聞かない方が良いような気もする。もちろん、どんな内容かしっかり把握しなきゃいけないのは、わかってるけど……」


「俺は大丈夫だ、宮島。俺は何が録音されてても、現実から目を背けないから。だから聞かせてくれ」


「……わかった。あと俺の喋ることには何も言わないで欲しい。喋らせるためだったんだ」


「わかったよ、宮島」


俺は最初から聞くつもりでいた。だから聞かない選択肢はなかった。そして、それを宮島が再生させた。内容はある程度予想されたものだった。そして必要な情報はしっかりと入っていた。元カノが展示物を壊したという事、藤村のイジメが元カノの指図によるという事、そして元カノが二股をかけているという事。

いくらか藤村の言葉に気分が悪くなったが、生田が手を握ってくれたからか、落ち着いた。そして音が途切れた。最初に勝田が言葉を発する。


「こいつはいいな、ありがとう宮島」


「感謝なんてしないでくれ」


宮島の表情は暗いままだ。


「それでも言わせてくれ。感謝してる」


俺はしっかりと頭を下げた。


「……そうか」


宮島の反応は仕方ないといった感じだ。


「で、大将。どうする?これで仕掛けるか?」


俺は迷っていた。あいつには、まだ策はあるのか、それとも無いのか。この録音した物をみんなに、聞かせたところで信じてくれるのか、それとも作り物だと思われてしまうだろうか。

黙っていると宮島が言葉を発する。


「なるべく早く出さないか?その方が木下にとってもいいだろう」


それは明らかな事だ。だから、ここで躊躇しても何も意味が無いかもしれない。俺はそう思う事にした。


「わかったよ宮島。テストが終わって次の週。そこで行動を起こそう」


俺はそう答えた。遂に行動に移す時が来たのだ。

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