表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/38

策略2

「ほんっとうに面白かったわ。この1ヶ月間。」


「何がそんなに面白かったんですか?」


「全て、かしら。悟が私に刃向かった日から今日までずっとよ。退屈な日なんて1日もなかったわ。」


まるで感謝を述べるように答える元カノ。


「どうせアレでしょ?私が藤村とヤッていたのを聞いてたとかでしょう?」




自然と背筋が伸びて鳥肌がたった。




「いつから気づいたんだ?」


「んー、藤村と喧嘩したあたりかしらね。最初は他に女でも出来たのかと思ったけど。そうじゃなかったわね。」


そういって微笑む元カノ。


「一応聞くけどなんでそのタイミングだったんだ?」


俺はこれが気になった。最初から気づいていたわけでもなく、最近でもない。そのタイミングで何故気づいたのか気になった。


「そんなの簡単よ。悟の顔よ」


は?俺の顔?


「どういう事だ。」


すると元カノは


「どういう事って酷いわね。悟とは幼稚園の時から一緒なのよ?その私が悟の気持ちが分からないわけないじゃない。」


当然だと言わんばかりに笑いながら答えた。

さらに元カノは続ける。


「あの時の悟は酷い顔してたわね〜。私しか気づいてないみたいだけど。藤村が近づいたとき少し表情が変わったのよ。大方、恨んでるような、でも諦めてるような、そんな感じだったわ。それで、あの時の物音の事も考えれば答えなんてすぐ出るわ。」


「……」


俺は言葉が出なかった。


「面白そうだから精一杯、利用させてもらったわ。感謝しているわ。」


「そうか……」


「悟は全然壊れないし、逃げたりもしない。やりがいがあったわね〜」


そう言ってまるで良い思い出だと思っている反応を見せる。


「それにどう?今回の私の策略は?私がみんなを纏める。でも頑張って作り上げた物が壊されるの。私はゾクゾクしたわぁ〜」


そういって自分を抱きしめるように自分の肩を抱く。


「……あれはお前が壊したのか?」


「そうよ?他の奴にやらせようと思ったけどね。やっぱり最後くらいは自分で詰めなきゃね。本当は失敗させるくらいのつもりだったんだけど、桐島くんが予想外だったわね。パソコンを持ち帰られちゃ、何も出来ないじゃない。」


そう言ってあいつは軽くため息をつく

そしてさらに続ける。


「でも教室に戻った時の空気で確信したわ。悟が疑われてるって。どうかしら?楽しめたかしら?」


「……狂ってるなお前。」


「そう、嬉しいわ。」


「……」


その場で俺は動けなかった。


「あら、もう良いのかしら?もっと面白い事を悟に聞いて欲しかったのに。」


「まだあるのか…」


「まだたくさんあるわよ?藤村を操ったりだとか。クラスを掌握するのも楽しかったわ!そうだ!後で聞いた話だけど鹿又さんが言い出したみたいじゃない。悟は驚いたでしょ?鹿又さんが主張してきて。」


「……」


「彼女、少し煽るとすぐに誰かを頼りたくなっちゃうの。悪い癖ね。恐らく彼女自身も気づいてないわ。まぁ、序盤から煽った甲斐があったわ。悟の事、ずっと見ていたもの。」


そう言って話を続ける。


「彼女からは何もされないと思っていたでしょ?いえ、彼女は何かしたと思っていないから、結局のところ何もしていないのかしら?難しいところね」


黙って俺は聞いていた。


「取り敢えず、私と戦うんだったら、もっと準備は上手くやらなきゃね」


「もう1ついいか?」


「何かしら?」


「何で藤村とヤッたんだ?」


冷や汗が流れ落ちるのを感じる。


「端的に言うと退屈だったから、かしらね。悟と付き合うのも楽しいけど、もっと別の刺激が欲しかったのよ。藤村も少し誘ったら、すぐ調子に乗るから驚いたわ。あの後社会的に殺してあげようかと思ったけど、結局は暇つぶしに利用させてもらったわ。」


あいつはさらに言葉を続ける。


「でも藤村と楽しいのは最初だけだったわ。すぐに飽きちゃった。それに彼は浮気性だしね。悟とは真逆ね。その後気づいたわ。悟と付き合ってるって言うのは贅沢だってね。正直、藤村があんなにつまらない男だとは思わなかったわ。」


吐き捨てるように言う。

俺もやっとの気持ちで声をひねり出す。


「人の気持ちを……考えた事はないのか?」


するとあいつは答えた。


「考えるだけ無駄よ。1番大事なのは自分がどう感じるか。悟もそうでしょ?」


そう冷たく言い放った。


「そうかよ……」


俺の最後のたった一握りの思いさえ粉々になった。


「そうそう、ネタばらしなんてついでよ。本当の目的はこれじゃないのよ」


「……」


「話の長い女は嫌われるわね」


そう言ってあいつは笑う。


「悟、どうかしら?私とまた付き合わない?」


俺はこいつが何を言っているのかわからなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 殺せ殺せ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ