策略1
鹿又の声によりみんなが一斉にこちらを向く。そして各自で小声で話し始める。
そんな時、俺の中では疑問がでた。
「(誰が話すのかと思っていたら中立の鹿又か。何故そんな事を)」
そして俺に藤村から声がかけられる。
「なぁ悟、ホントにお前なのか?」
まるで俺に決定しているかのように言い放つ。
俺も流石に嘘までだんまりでいるつもりはない。
「いや違うよ、俺はそんな事はしない。」
教室は騒がしくなる。また鹿又が喋り出す。
「でも…一番参加してなかったし…美香さんとは喧嘩してるし……それにイジメられてたから…仕返しかなって……」
「(憶測で物を話しちゃいけないってのがよくわかる状況だな。)」
そう思いながら俺は答える。
「とにかく俺はやってない。本当だ」
そこで藤村が乗っかってくる。
「本当かよ悟。実はお前がやってんじゃねぇの?今言えば許してやるぞ?」
「だから俺はやってない!何もしてない!」
俺は思わず大声を出してしまった。
静まり返る教室。
そこで生田が口をはさむ。
「ほ、ほら、木下もこう言ってるんだから一回やめないか?」
「…チッ」
舌打ちをして藤村はどこかへ行ってしまった。
しかしクラスメイトの疑念は全てこちらに向けられていた。最後の準備を終える。
そしてその重苦しい雰囲気の中、文化祭は始まったのだった。
9月30日のことだった。
文化祭中は何もされることは無かった。むしろされなさすぎて空気だった。もちろん、あの疑念は文化祭中も晴れることなく続いた。
前日に渡されたシフト表には俺の名前は載っていなかったし誰も文句を言わなかった。誰がこのシフトを準備したかなんて明白だ。ただ1人、生田が何か言おうとしていたが俺が抑えた。
うちの学校は文化祭に来るのは1日だけでいい。なので1日目は学校に行かず、2日目だけに参加した。
参加した日も特に何もせず、ぶらぶらしているだけだった。そして歩き終わり、
「(さっさと帰るか)」
と空き教室で思っていると生田が声をかけてきた。
「……その、文化祭はどうだった?」
「どうだったも何も1人で適当にすごしてたよ。」
「そ、そうだよな……わるい。」
「だから謝るなって。俺が悪いんだし。」
むしろ助けられたくらいだ。そういえば礼も言ってない。だからってあの事を蒸し返す気にもなれなかった。
「だからって!………いや、……何でもない。」
謝るのをこらえたみたいだ。
「そうか、じゃあな俺はもう帰るわ」
「ちょっと待ってくれ!今日は話が……」
また何かを言いたそうにしていたが俺は無視した。そして歩いて家に向かった。
家に着くと、いつかと同じように元カノが立っていた。
「やっと帰ってきたのね悟。」
「何のようですか?俺は知らない人は家に入れたくないんですが?」
「悟の家に入る気なんてないわよ。ただ悟に会いにきただけ。2人きりになれるところで。」
甘い声で喋る元カノ。
それを断ち切るように俺は喋る。
「そうですか、俺には喋る事なんて何1つないですよ。」
「釣れない事言わないでよ悟。せっかくの幼馴染よ?」
「悪魔か何かの間違いでは?」
「面白い例えするわね、やっぱり悟ね。」
「(やっぱり?別れでもしたのか?いや、それだとあの俺が責められる流れはおかしいか。)」
「何考えこんでいるの?可愛い子が前にいるというのに。」
「すいませんが醜い人間の姿しかありませんね。」
「ひどいわね、全て話してあげようと思ったのに」
「(全てだと?)」
元カノはそういった。