007.二戦目の敗因
一ヶ月以上開けての投稿ですみません。楽しんでいただければ幸いです
「このプラズマトーチってチャンバラに使えるのかな?」
「ん?チャンバラ?えっと、たしかおサムライさんが斬り合うアレだよね?そういう使い方は見たことないの」
サイのような外見のライノガンズには頭部にプラズマトーチが四つ装備されている。古都子はこの装備の使いみちが気になったようだ。
「え?じゃあどう使うの?」
「トーチは切るんじゃなくて、押し付けるものなの。超高熱のプラズマがブワッーっと噴射されるからそれを押し付けて、相手を溶かすの。あとは、松明代わりに使ってもいいの!もったいないけど」
「んじゃさ。ライノガンズの場合は頭突きする感じかな?」
そう言いながら古都子はライノガンズの首を軽く回した。冷静に考えれば、女子高生が四つん這いで歩きながら、首を回したようなものである。他人が冷静に眺めたならば、色々と考えさせられる絵面かもしれない。
「そうなの!正解なの!というか、ライノガンズの頭部が稼動するのはトーチをぶつけるためなの!」
のんきに話してはいるが、今はゲーム中である。二人は、再びドローンクラッシュにルーム参戦していた。寝る前の一戦というヤツである。ちなみに、アイザックは既にログオフしていたので、合流するしない以前の問題だった。
マップは先程と同じ雨天山地で、今回は古都子の要望で味方本隊と一緒にトンネルを目指している。
「けど、鈍足のライノガンズに接触武器のプラズマトーチって、完全に死に武装じゃないかな?」
「これだから、トウシロさんはこまるの。古都子くんには、分からないの。そのトーチは最後の手段なの。ロマンなの」
「そっか、ロマンなら仕方ないね。それに、格闘が最後の手段って、たしかに必殺技みたいだよね」
「え?う、うん」
ヴァイオレッタの言うロマンとは暗器やカウンター的な一発逆転要素の事だったのだが、まさかサイの分際で格闘を必殺技と考えるとはヴァイオレッタは思わなかった。古都子侮りがたしである。ちなみに、サイはライオンに追いつけない程度には鈍重である。
「へー。トンネルってこんな感じなんだね」
「不自然な鍾乳洞トンネルだけど、ゲーム性考えると仕方がないの」
ヴァイオレッタと古都子は並走している。そして、今回の試合には航空機は参戦していない。マッチングしなかったのである。ヴァイオレッタも飛行機ではなく、無限軌道型ドローンである“ガンベッド”という名前のドローンを操作している。その名の通り、砲台まみれの戦車である。
「この試合は負けるかもしれないなぁ」
ヴァイオレッタが憂鬱そうにつぶやいた。
「なんで?」
「今回のチームメンバーはみんなトリガーハッピーっぽいの。典型的なポイ厨なの」
ヴァイオレッタがこのように愚痴るのには理由がある。この試合のチームメイトは定石の間接砲撃とは別に、その辺の地面やマップ中央の山地に向かって、敵も居ないのにバカスカとレールガンやレーザーを乱射しているのだ。いわゆる、暇つぶしや景気付けである。無論、戦場でそんなマネをするのは無駄を通り越して、一種の自殺行為でもある。
「え?なにそれ」
(ポイ厨とは、ゲーム内の得点獲得や自分のランキングアップに固執して、チームや同僚への迷惑を顧みない人たちですね。ある意味、システムに最適化された行動を取る人たちとも言えます)
「うへぇー。そうなんだ」
自滅的なトリガーハッピーとポイ厨は結びつかないように見えるかもしれないが、勝敗や戦いそのものを軽く見ているという点では同じである。要するに、背中を預けるには餓鬼すぎる。という事である。
「あ、古都子くん、シャルルとシャルロッテもルームチャットに参加させるの。なんか古都子くんが電波受信してつぶやいている変な人みたいなの」
「ええ、ある意味、彼らは電波なのでまちがっちゃいないですよね。というか、ボクがヤク中の変人みたいに言わないでよ。軽くヒドイよ。ちょっとぉ!」
ヴァイオレッタの冷静な皮肉と要求に、古都子は茶化すように答えた。顔芸の可能なリアルならば、口をへの字に曲げて柳眉も少しだけ逆立っていただろう。トンネルに差し掛かると、ヴァイオレッタが真面目な口調で古都子にレクチャーする。
「このトンネルを利用して遮蔽を取って撃ちあうの。遮蔽は障害物だけじゃなくて、角度とかにも気をつけて取るの」
「分かったよ」
ゆるく右にカーブした鍾乳洞は、その先に居るだろう敵の姿を見通せそうで見通せない。出口から差し込む光は見えるのだが、出口の向こうの景色までは見通させてはくれなかった。
「あ、なんか向こうの方から砲弾が飛んできているっぽいよ。いま、ちょっと見えた」
「こっちが姿を見せていないのに砲撃するとか、敵さんたちもダメダメなの」
鍾乳洞トンネルに古都子たちが侵入すると、ゆるやかなカーブの向こう側から、敵の砲撃によると思しき砲弾が幾つかトンネルの壁に突き刺さるのが見えた。古都子たちは、素早く鍾乳洞内に遮蔽を取りつつ陣取ると、射撃と隠身を繰り返しての砲撃戦を開始した。
遮蔽をとっての打ち合いだと、実は連射の利くの小型電磁レールガンよりも一発の威力が大きいソレノイドクエンチガンの方が有効だったりする。それは簡単な話で、放熱時間を隠れる時間や回復を図る時間に割り当てれば良いからだ。
敵味方が神経のすり減る遮蔽を利用した打ち合いを繰り返す。ヴァイオレッタはメディックのヒールウェーブが届く範囲での打ち合いと遮蔽隠蔽にこだわり、古都子はメディックのカバー範囲内から外れないように後方に下がりつつ、タイミングを見て射撃のために身を晒すという戦いを基本と決めていた。
どんなに耐久力自慢のドローンでも、敵の一斉射撃に晒されれば、一瞬で溶けるように撃破されるのだ。
そして、しばらく遮蔽をとっての砲撃戦を続けると、皆じれてきた。
「ねえ、ボクたち、この打ち合いをいつまで続ければいいんだろ?」
「勝つまでなの。じゃ、分からないよね。相手がヘマして撃破されるか、後ろに引っ込む頻度が増えて、銃弾の雨がゆるくなるまで続けるの」
「ゆるくなったら突っ込んで良いの?」
「ダメなの。あっ!」
敵の戦車タイプが一機、逃げ遅れて蜂の巣になり始めたところで、味方の戦車が前進して殺到し始めた。すると敵味方識別センサーによる安全装置が働いて、最前列以外の味方戦車の砲撃が阻害された。最前列の戦車は確かに敵を撃破するチャンスを得るのだが、それは同時に敵の集中砲火にその身を晒される事も意味していた。
「キルスティールするんじゃねーよ!ハイエナ野郎!」
真っ先に突っ込んでいったバカどもにあとから突っ込んだポイ厨が、チャンネル回線で罵声を挙げた。ヴァイオレッタと古都子はその声に聞き覚えが有ったように思うが、スルーしてルーム回線での会話を続けている。
「出て行く奴もバカなの。さらに罵っている方もバカなの。こういう時は、ゆるくなったら突っ込むんじゃなくて、露出する時間を伸ばして射撃するの。そうしないと、今の連中みたいに簡単に撃破されるの」
「これ、ヤバい流れだね。味方が引くまで支えないと……」
「うーん。どちらにしても逃げ切れなさそうなの。ライノガンズは脚が遅いから、適当に砲撃しながら下がって欲しいの。その後にガンベッドも大急ぎで下げるの」
ゲーム的なセオリーで言うのならば、この局面の勝敗は決定したと言える。ヴァイオレッタたちのチームは戦力の二割以上を失い、各個撃破の危険に晒されている。意を決した敵チームが一斉に洞窟内に突入すれば火力で押し切られるだろう。そうなれば、あとは如何に突入部隊に出血を強いれるか?という点を除けば、全滅の運命は決定的なものである。
「なんとか、みんなが逃げ切れるまで時間稼げないかな?」
「無理なの。というか、ライノガンズは鈍足だから真っ先に逃げてほしいの」
「わ、分かったよ。すぐに後退するよ」
ヴァイオレッタの焦った声音から事態の深刻さを察した古都子はすぐさま後退を開始する。二人共に熟練ならば、前方への投射火力を維持したまま撤退するという真似もできるのだが、あいにく古都子はルーキーだった。彼女は振り向くと全力で遁走を始める。
ヴァイオレッタは視界の端に古都子の撤退する様子を捉えつつ、シャルロッテに視界の切り替えを命じる。
「視界の右上に車体後部の視界をディスプレイして欲しいの。正面射撃を継続したまま後退するの」
「畏まりました。ターゲッティングを視線から分離して、センターへの固定射撃を行いますか?」
「さすがにそれはしない。相手が優秀なら、それでこちらの意図がバレるの」
「視線を車体後部ウィンドウに合わせたまま射撃を行うと、火線があからさまにズレますのでご注意ください」
「分かってるの!」
効力射を維持しながらの後退というのは中々に面倒なことなのだが、驚異的な集中力を発揮してヴァイオレッタがそれ実行していると、洞窟の入口まで後退した古都子が悲鳴を上げた。
「うわ、いきなり出てきた!」
古都子の悲鳴に反応して彼女の方を見やったヴァイオレッタは、側面にびっしりとプラズマトーチを生やした円盤型ドローンがライノガンズに襲い掛かった瞬間を目撃した。
そのドローンはいわば、戦闘用ルンバとでも言うべき形状で、円盤下部に設置された超音波ホバーとスラスターで高速移動して、側面のプラズマトーチで襲いかかるというもののようだ。
そして、ライノガンズはあっという間にルンバによって撃破された。ちなみに、ルンバの機体名表示は“芋砂だけを殺す機械”と成っていた。ヴァイオレッタは対戦前の参加者リスト表示を見た段階で、相手がこういう“裏とり”を行ってくるだろう事を予測できなかった自分の甘さを後悔する。
彼女が後悔の念を振り払うように正面を見ると、敵チームのドローンたちが砲弾を撒き散らしながら一斉に突撃してくるところだった。
古都子が撃破されたことを皮切りに味方は挟撃され総崩れ。ヴァイオレッタも衆寡敵せず撃破された。その後の試合展開は、裏とりに特化したルンバと敵チーム主力による連携の前に彼女たちの味方チームはなすすべもなく負けることに成った
「こんなクソマッチ認められるかぁーー!」
試合終了時に、先ほど味方をキルスティーラーと罵ったポイ厨が絶叫していた。
その絶叫を聞きながら、アレはアレで楽しんでいるんだろうけど、ああいう楽しみ方は理解できないの。と、あくびをしながらしみじみと思うヴァイオレッタであった。
ちなみに、古都子は聞き覚えが有る名前だな。と思い、試合参加者リストを確認して、前の試合とこの試合に共通して参加していた絶叫の主“金本譲司”の名前を見つけた。
そして、なるべく関わらないようにしよう。と考えるのだった。
ストックが無いので今後も投稿間隔は不定期で開くと思います
気長に待っていただけると嬉しいです




