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極東311  作者: 西田啓佑
12/15

012.出発

「ふむ。そういう事か」

「はい。お祖父様」


 ヴァイオレッタが金田たちと決闘を行うと報告し、費用の幾ばくかを経費で落としたいと要望した場所は、ダン老人の執務室だった。

 老人の執務室は小学校の講堂ほどの広さを持ち、壁面にはすべてディスプレイが埋め込まれていた。もしも、このディスプレイにアラベスクやステンドグラスが映しだされていたのならば、教会としても使用できそうな部屋である。ヴァイオレッタと対面している今は、寒冷化によって海抜の下がった石巻市鮎川浜金華山あらため、石巻山系金華山の麓とその周辺が映しだされていた。


「良いんじゃないのかね?むしろ、私は公開ショーにしても良い気がするよ」

「え?」


 ヴァイオレッタが戸惑っている間に、ダン老人は無言のままダルクデバイスなどを介して、プロフェシーにプランを検討させた。

 検討内容は、決闘の経過と結果の変化による、古都子とヴァイオレッタへの精神的影響である。ダン老人としては二人を適切に成長させられるのならば、金本と富田の殺害も視野に入れていた。


「実物のドローンの実証試験にとは考えていましたが、そういう考えは思いつきませんでした」


 彼女はダン老人をまっすぐ見据えて、返事をした。それに対して老人は、孫に買って欲しい玩具を撰んでごらん?と聞いてみる調子で、彼女に聞き返す。


「ヴァイオレッタはどちらにしたい?」


 彼女は、恥じ入るように答えを返す。


「正直、経緯も経緯ですし、見世物になるのは気乗りがしません」

「確かにそうだね。ならどうだろう。ただショーグンの実証実験をするだけでは面白くない。一つ。新兵器の実証試験をしてもらいたい」

「それで、見世物にならずに済むのなら、お引き受け致します」


 彼女の拒絶に対して、快く納得したダン老人は、お使いごとを頼むように彼女に一つの条件を提示した。すると、彼女はその提案を迷う事なく引き受けた。


「よかろう。では、一切合切はこちらで持とう。候補地も選抜しておく、他のことに関してはシャルロッテと相談して好きにやってみると良い」


 ヴァイオレッタがダン老人の執務室である都市運営理事長室からオムニ邸に戻ってからしばらくすると、アイザックが訪問していた。

 彼らは応接間でババ抜きあらためジジ抜きをしていた。メンツは古都子とアイザックとシャルルとシャルロッテである。なお、シャルルは引っ越してからオムニ社に用立てて貰った専用のバイオロイドを操っている。そして、シャルロッテは応接用のドローンを用いて参戦していた。


「ただいまなの」

「よう。お邪魔しているぜ」

「おかえり!ヴァイオレッタ。さっきまで神経衰弱とジジ抜きをやっていたんだけど、シャルルたち、神経衰弱が鬼強なんだよ!チートかと思ったよ」


 古都子、はじめてリアルでアイザックと会えて嬉しいようである。ノリ的にはオフ会なのだろう。なお、色気はない。棺桶に入って遊ぶヴァーチャルゲームに、若干飽きていたのかもしれない。

 アイザックの格好は、赤いスカーフをワンポイントに着用したミリタリルックである。ただし、武装は持っていない。都市内で武装をしても、殺人は可能でも護身は不可能なのである。なぜなら、殺人ナノマシンに対抗できるのは防護用ナノマシンだけだからである。そして、都市内においてはナノマシンから逃げるのは、都市機能を麻痺させないかぎり不可能である。


「アイザック、なんでそんな無謀な真似に付き合ったのよ」

「いや、時間つぶしにはなるかと思ってな。それに、いい経験になるだろ」


 アイザックは、明らかに古都子の反応を見て楽しんでいる。古都子の世間知らずっぷりが面白いのだろう。なお、古都子は世間知らずではない。ただ、知っている世間がこの時代のモノではないだけである。


「まあ、そうかもなの。あのね。古都子。プロフェシーであるシャルルやシャルロッテは人工知能でコンピュータなの。だから、写真記憶が可能なの。だから、記憶力では人間では絶対に勝てないの」

「そうなんだー。一度出た札は必ず覚えているから、おかしいなぁ。とは思ったんだよ。今度からは気をつけるよ。けど、すごかった」


 負けたことよりも、プロフェシーたちの手際の良さに感動しているようである。


「でまあ、ジジ抜きに変えたんだよ。これなら運ゲー面が強いから問題ないと思ってな」

「まあ、基本、カードゲームで運と気まぐれ以外の要素でプロフェシーたちに勝つのはまず無理なの」


 気遣いのできる男と空気の読める女は、それ以上トランプについて話そうとはしなかった。そして、思い出したようにシャルロッテに声をかけると、ヴァイオレッタも空いているソファーに腰掛けた。


「シャルロッテ。とりあえず、何か飲み物を頂戴」

「かしこまりました。ヴァイオレッタ様」


 ヴァイオレッタがリクエストすると、室外がら別の応接用ドローンがやって来て、彼女に給仕をした。プロフェシーたちは複雑な状況でなければ、複数のドローンを制御することも可能である。

 そして、彼女が見守る中、ジジ抜きに決着が付く。負けたのは古都子だった。


「あーあ。負けちゃった。みんな強いなぁ」


 ちょっと悔しそうに、ソファーに座ったまま背伸びをして古都子はつぶやく。そして、アイザックが誰にでもなく、何気なく聞いた。


「まあ、古都子は顔に出るからな。ところで、プロフェシーは表情読めるのか?」

「センサーさえあれば表情だけでなく、体温や脳波などの生体情報によって簡単な心理状態を観測することは可能です」

「それ、もう、どうにもなんねーじゃねーか」

「ジジがどのカードかも場に捨て札が貯まれば演算可能でした」


 受け答えするシャルルに対して、アイザックは呆れていた。そして、更に聞く。


「もしかして、二体のドローンは連携していたのか?」

「いえ、それはございません。アイザック様。プロフェシーは個人情報とトラフィックを守るために、都市運営にかかわらない情報は極力同期しない仕様です」

「つまり、シャルルとシャルロッテは大本でつながっていても、それぞれ別個体と考えて問題ないの」


 ジュースを飲みながら、ヴァイオレッタはシャルルの回答を分かりやすくまとめた。


 ジジ抜きが終わったあと、ヴァイオレッタとアイザックは早速本題に入った。古都子はウェアラブル端末とダルクデバイスを介してネット閲覧をしている、


「で、詳細は決まったのか?」


 場所はここで、移動手段はあれで、用意できるドローンはどんな感じで、という話をヴァイオレッタがホログラフを使って説明している。


「俺に異論はない。当日はハンスも立ち会いたいらしいから、奴の分のショーグンも用意しておいてくれ、あと……。場所なんだが、もう少しずらせないか?今の位置だと、オレの知り合いが住んでいる集落が巻き込まれそうなんだよ」

「わかったなの。お祖父様にお願いしてみるの。たぶん、問題ないと思うの」

「手間かけて、すまねぇな」


「ただ、そんなに大幅にはずらせないと思うの。完全に汚染山地だけを戦場にすると、それこそ地形による有利不利が固まりすぎて、データとして意味がなくなるし、一方的すぎる戦いになりかねないから」

「まあ、言いたい事はわかる」


 平地で戦車部隊にゲリラ兵が挑むのは馬鹿げているし、逆に密林でゲリラ兵に戦車部隊が挑むのも馬鹿げているのだ。

 

 そして、決闘当日。

 古都子の疑問にハンスが答えている。


「ハンスくんは都市から、この馬型ドローンを動かしているの?」

「いえいえ、これがそれがしそのものでござるよ。このボディはバイオロイドの一種で、それがしの脳幹もこの中に詰まっているでござる」


 四人はというか、見た目三人と一頭は、オムニインダストリアルが用意したホバーカーゴというホバー移動をする巨大なシェルターカーゴ運搬車で決闘の場所に移動している。ホバーカーゴは戦闘用ドローンやナノマシンベースを輸送するのに一般的に使われる移動手段である。クラウド境界線での戦闘にも用いられる。その場合、都市との通信は不可能なので、オペレーターもこれに乗り込むことになる。人工知能によるドローンの制御を行うのなら、人工知能の筐体も運ぶ必要がある。


「ええぇー!凄いなぁ」

「確かに、凄いなの。こだわりとか、酔狂って意味で」


 ハンスの返事に、古都子は素直その技術力や珍しさに感心し、ヴァイオレッタは別の意味で感心していた。驚きとはじめての連続で、もはや古都子は完全にピクニック気分であった。そんな古都子に、アイザックは真剣な面持ちで注意を促した。


「美槌。外に出る時は絶対に放射線測定機をオフにするなよ。カリカリ鳴っている間は、まあたいした問題はないが、警告音がなったら急いでこのホバーカーゴに戻るんだ」

「うん。分かったよ」


 都市の外は都市内と比較にならないほど危険で一杯なのである。まあ、古都子に施されたインプラントはそれらにもある程度対応はしているのだが、ここでそれを知って理解しているのはヴァイオレッタだけだった。古都子も聞いてはいるのだが、理解できなかったせいで意識していない。


「ところで、こちらはショーグンに乗るとして、相手は何に乗るのでござるかな?」

「相手もショーグンなの。私は既存のドローン。ガンベットとかグラスホッパーあたりを指定してくると思ったんだけどね。結局、決闘するのなら、同じ条件が良いからショーグンをよこせって話になったなの。今日まで必死に練習していたんじゃないかな?」


「じゃあ、結局、勝負の行方は腕次第の五分五分ってところか」

「そうなるの」


「あとは、新兵器をどっちが巧く使いこなせるか?ぐらいか。相手にはちゃんとおしえてあるのか?」

「もちろん。その辺はぬかりないの」


 そして、戦いが始まる。


場面のキリの良い所で話を区切ると文字数に幅が出すぎますね。すみません

たぶん3000-6000字ぐらいで一話に成ると思います


面白いゲームみつからないけど、決めるべき設定が雪だるま式に増えて、中々進まない


こ、これがフレーム問題?

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