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神の威光

「え? 入場できない?」


 夢のスタート地点である町の門前で、俺たちは足止めを喰らっていた。


「いやいや、そうは言ってないだろ。入場税を払えって言ってるだけだ。あんたと、上に乗ってる嬢ちゃんの分で、銅貨8枚な」


 当然、我々は無一文だ。当たり前だ。『ちょっと変わった喋る馬』と『蛮族の被害にあって奴隷になった女神』に持ち合わせなんてモノはない。


 くそ、こんな時だけ人間扱いしやがって。普段は、喋るだけの馬として扱うくせに!!


 この世界、喋る動物は珍しいことは珍しいが、そこまででもない。割と普通にいる。


 今も足止めされる我々の横を悠々と、比喩ではなく文字通り『豚さん』が、連れの農夫と税金を払って町中に入っていく。声から察するに、雌と思われるあの豚さんは、いったい町に何のようがあるのだろうか。自分の気分的に後味が悪いので、「売却されるわけでは、ありませんように」と祈っておいた。


 それはともかく、動物に人間と同じ税金をかけるとか、おかしいとしか言いようが無い。そもそも、喋れるだけで人間扱いとか、おかしいだろ。体が馬で、通常は馬扱いなんだから、税金も馬として扱っていただきたい。


 いつもは、あだ名で『賢者』とかヒトのことを呼んできて、「馬にしては頭良いな、おまえ。野菜を奢ってやろう」という感じに上から目線で見下してくるくせに! 税金だけは、人間扱いで取るとか納得いくか! 


 くそう、人間どもめ! お前らが馬鹿にしてつけた『賢者』の名を、実力で勝ち取ってみせてくれるわ!!


「待って下さい。こちらにおわす御方は、植物を司る女神様ですよ。あなた方は神様から税金を取ろうっていうんですか?」


 門番が胡散臭げにこちらを見る。やはりミントでは、威厳にかけるか。だが、そうでなくては。これは、実力を示す良い機会だ。ここからは、口先だけで乗り切ってみせる!!


「神様だって? なら、何か証拠を見せてもらいたいねぇ」


 明らかに信じていない、小馬鹿にした顔で門番が言う。このヤロウ……、ほえ面かかせてやる!!


「女神様、この者にお力をお示しになっていただけませんか?」


「え? ええ、はい」


 ミントに話しを振ると、どうやら聞いていなかったようだ。ぼんやりした返事を返してくる。だが、地面に雑草を生やしてくれた。


 あいかわらず、しょぼい。

 

 まあ、余計なことを言われるよりはいいか。


「どうです? これが女神様のお力です」


「雑草が生えただけに見えるが……」


 門番は、このお粗末な力に訝しげだ。


 そのとき、門番の後ろから悲鳴が上がる。中年の門番の後ろにいた若い門番が上げたもののようだ。


 こちらとしては、若い女の子の黄色い声の方が、良いんだけどなぁ。まあ、それはいい。


 若い門番は雑草を指差すと、恐れ戦きながら、喋りだした。


「ヒ、ヒィィィ!! そ、その雑草は……、一度生えたら無くならないと言われているミントじゃないですか!! そんなものを生やされたら、雑草抜きが永遠に終わらなくなってしまう。やめてくれぇ!!」


 良いリアクションをありがとう。よし、この流れに乗ろう。


「そうです。これは女神様のお怒りがカタチとなったもの。これ以上、女神様に不遜な態度を取るのであれば、この町の周辺の畑という畑に、この雑草を生やして回ることになりますよ」


 こちらの脅しに、不遜な態度だった門番が顔を青くしだした。若い方の門番は腰を抜かして、アワアワしている。


 くくく、いい気味だ。楽しくなってきたから、もうちょっと脅しておーこうっと。


「なんなら、畑を回る際に、あなた方の所業を声高に叫んで回ってもいいんですよ?」


「や、止めてくれ! そんなことをされたら、農夫たちになぶり殺しにされてしまう。か、神様だっていうことは分かった! 通っていい。ただ、あんたのほうは……」


 この期に及んで、まだ税金を取ろうとするとは、コイツは門番の鏡だな。だが、そんなものを払う気はサラサラない。実際は、払えないんだがな!


「私は女神様の乗り物ですよ。私に税金を課すということは、女神様に払えというのと同じコトになりますが……」


「わかった!! あんたも通っていい。早く行ってくれ!!」


 青い顔で震える門番たちを尻目に、町の門をくぐる。


 ふう、何とかタダで町に入ることが出来たぞ。さて、町に侵入したからには、ここで何とか金儲けをしないと。


 なんせ、ミントの食生活がかなりヤバいんだよな。ここに来るまで、馬のように雑草しか口にしていないからな、アイツは。同じモノを食べていた自分が、そのことを一番良く知っている。


 無い袖は振れないとはいえ、さすがにちょっと、可哀想だった。ここのところ、ろくな目にあっていないようだし、たまには良い思いもさせてやりたいと、慈悲の心が湧いてきている。


 べ、別に雑草女神のために、頑張って門を潜り抜けたわけじゃないんだからね。勘違いしないでよね。


 ……それに、お金があれば、ハーレムが作りやすくなるでしょ。奴隷ハーレムとか、胸が熱くなる話なわけだし。金の力で、美少女をはべらかすとか、ユニコーンでなくてもやってみたいことのはず。いや、出来れば、人間の姿でやりたかったなぁ……、ハァ……。


 ま、まあ、それは置いておいて。あとは、ストレス解消に、これといって役に立たない、背中に乗っているだけの女神の頬を札束でひっぱたいてやりたいかな。まあ、この世界に、紙幣はないだろうからできないだろうとは思うけど。


 いや、コインでもイケるか? こう、袋につめたヤツで、バシッバシッと。それぐらいやれば、ちょっとはコイツもマシになるだろ。フゥハハハハ……。


 振り返って、ミントの様子を窺うと、何だか悔しそうな顔で前を見据えていた。無事に町に入れて、何が不満だというのか、解せぬ。


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