クエスト07:強大なる宿敵に挑め!
『古代神殿レオンハット』――
西大陸の果て、徒歩で行ける範囲にある最後の迷宮だ。
つまり、ここをクリアすれば世界のほぼ半分を踏破したことになる。その割にはあんまり遠くまで来た気がしないのは仕方がない。広さは四国の半分ぐらいだし。
さて、この古代神殿については、温泉街アネルで聞いたあるウワサがある。
一つは、この神殿に未知の下層が発見され、そこに勇者の最強の武器“勇者の剣”が安置されているらしいこと。
もう一つは、その勇者の剣を目指して、伝説の勇者ガルティオ氏がこの神殿に向かったらしいこと。
……怪しいと思わないだろうか。
そう。未知の下層にしても勇者の剣にしても話ができすぎている。
そもそも「勇者の剣があるらしい」って噂は誰が確認したんだ。あるのを見たんなら取って帰れば良いじゃんか。そう言ったらシンディに、
「夢が無いわねえ。選ばれた人しか抜けないように岩とかに刺さってるに決まってるわよ」
そんな夢のあるお言葉を頂いた。
メタ的な話になるが、勿論こんな序盤のダンジョンに最強の剣が置いてある筈も無く、勇者剣情報は伝説の勇者であるガルティオ氏を誘き寄せるための魔王軍の罠だ。
物語上の今の時点では、僕――ゲームの主人公としての勇者のこと――よりもガルティオ氏の方が、魔王軍にとっては優先的に排除すべき敵とみなされているのだ。
言い方を変えると、魔王軍にとっての僕は、“将来自分達を滅ぼす敵”ではなく、“ガルティオ氏を追い込むための人質の一人”に過ぎないということだ。
実際のところ、レベル1から始めてここまで普通に冒険して普通に成長した場合だと、勇者パーティはまだまだ弱く、ガルティオ氏やここで戦う中ボスとは実力的にかなりの隔たりがある。
「さて、この階段から先が噂の下層か。ルナ、ざっと見て何か変わった点とかある?」
「……カビの生え方が違う。確かに最近まで隠されてたっぽいの……」
明かりで壁や階段を照らしつつ、慎重に下層に降りていく。
「ここからはモンスターも強くなるから気をつけて。できれば無用な戦いは避けて進もう」
声を潜めて指示を出しつつ、忍び足で下層を進んでいく。
この先で起きるはずの激戦に備えるなら、少しでもリソースを節約していきたい。
何せ、この迷宮で戦わないといけない相手は、魔王軍幹部、邪神官ゲドと言い、性格は卑劣かつ残忍で策略と強力な呪文スキルとで勇者パーティを苦しめるかなりの強敵だ。
その解りやすい悪役的立ち位置は、魔王以上にユーザーの敵愾心の受け皿になり、ストーリーに彩を与える名悪役としてネット掲示板でも「外道さん」の愛称だか蔑称だかで親しまれている。
ただ、ゲームが現実となった今では正直出会いたくない敵第一位である。
そんな敵とこんな序盤で戦って勝てるのか? と疑問に思うかもしれない。
実はこのゲド戦、ゲームの中ではいわゆる「負けイベント」になってて、ここでゲドに負けることでストーリーが先に進むのだ。
負けて動けなくなった主人公をゲドが卑劣にも人質として利用し、勇者ガルティオ氏の抵抗を封じる。
そして反撃することを許されないガルティオ氏は、ゲドの手下二名に嬲り殺しにされる。
しかしガルティオ氏が最後の力を振り絞り、勇者パーティを親の愛のパワーで脱出させ、そこで力尽きる。
それから東大陸に飛ばされた勇者一行は、失意や無力感の中で、再起と反撃の第二章が開始される。といった流れだ。
「ちょっとユウちゃん、急ぐのは解るけど……焦ると失敗するわよ?」
「……うん、ごめん」
はやる気持ちが余程顔に出てたのだろうか、シンディに厳しい表情で注意された。
一旦足を止めて深呼吸をする。いつの間にか握った手の平にじっとりと汗が浮かんでいた。
そう。本来なら負けイベントであるゲドとの戦いに、僕は勝つつもりでいる。
仲間にも、勿論負けイベントのことは言っていないが、今回の敵が相当な難敵であることを伝えている。
勝つ為の作戦は、前衛には僕一人だけで立ち、他の三人は後衛で身を守っていて欲しいというものだ。勿論前衛組のシンディとアヤメには不評だったが、頭を下げたり好きな食べ物を奢ったりとかして何とか納得して貰えた。
「――ユウさん、この先の曲がり角に敵の気配があります」
「解った。下手に長引かせて増援が来ると面倒だから≪雷電≫で突破しよう」
途中、二回ほどモンスターと遭遇したが、いずれも僕が先手取って≪雷電≫の呪文をぶっ放し瞬殺させて頂いた。MPをケチったら戦闘が長引いてかえって消耗しました、なんてことになったら目も当てられない。
それと、今回の激戦に備えてアネルの街で装備品も一新した。
まず武器は僕とアヤメが中級戦士ご用達の鋼の剣、鈍い銀色に輝く肉厚の刀身が歴戦感を醸し出してこれだけで凄く強くなった気がする。アヤメも昨夜は、恋する乙女のようなうっとりした表情で刃を研いでいたので相当気に入ったと見える。
それとシンディには鉄の槍、これも価格と攻撃力のバランスの取れた良武器だ。
ルナは通常攻撃の機会が殆ど無いので、少し前に宝箱から拾った火炎の杖のままで我慢して貰っている。一応道具として使うと初歩的な範囲攻撃である≪火線≫の呪文がコスト無しで撃てるので雑魚戦では便利なんだ。
防具は、アヤメとシンディが鉄の胸当てを買い、シンディに鉄の盾を買わせて皮の盾はルナに回した。
アヤメは実は盾が装備できない職業なので盾のスロットに青鱗の手甲を装備させている。手甲系は格闘家と戦王の専用防具で、盾より防御力が劣る代わりに攻撃力が少し上がるのだ。
あと、四人お揃いで頭防具に銀の髪飾りを買った。防御力と魔法防御と状態異常耐性がバランスよく上がり、絵的にも綺麗な良アイテムだ。無骨な兜に比べると女性陣の受けが良いし見てる僕も嬉しい。
そしてこの時点で軍資金が尽きたので、僕の鎧装備は未だに旅人の服のままなのはご愛嬌だ。でも棍棒生活は脱却したので今のビジュアルは鋼の剣を振り回す街娘といったところか。
「いよいよだ。みんな、気を抜かないでね」
遂に『古代神殿レオンハット』最奥部、祭壇のような空間に到着した。奥の一段高くなった床に、垂直に刺さった黄金色に輝く剣と、それに手をかける歴戦の勇士っぽい風格の男性一人が見える。
後姿なので顔は判らないが、今の僕と同じ色の青い髪を短く刈り込んだ、無駄なく鍛え上げられた肉体を持つ大柄な男性だ。きっとあの人が――
「あの人が、勇者ガルティオ様……?」
「ということは、ユウさんのお父様の……」
前衛職として憧れがあるのだろう。シンディとアヤメは感動したように目を輝かせた。
だけど、この展開は――
「危ない! 罠だ! 避けてッ!!」
声を限りに、僕は叫ぶ。
おじさんは一瞬こっちを振り向いたかと思うと、迷いの無い動きでその場から飛びずさり、その直後、
突如、剣の刺さっている所周辺から光が溢れ、爆音と共に巨大な火柱が吹き上がる!
火力が強すぎるのか元々の材質の問題か、火柱に包まれた剣は一瞬でドロリと溶け落ちてしまった。
「助かった! 君も勇者なのか!?」
おじさんがこちらの方を向いた。彫りの深い、ワイルドなお顔だ。映画俳優なんかに居そうだとちょっと思った。
ちなみにちゃんと服は着ている。某盗賊団の親分みたいな覆面パンツ姿だったらどうしようと思ってたのは内緒だ。
「僕は――」
言葉と共に、ガルティオ氏に合流しようと思ったが、敵の動きはそれより早かった。
「――ほっほっほっほ、運の良い方ですねえ。しかし――」
耳障りな甲高い声と共に、火柱の中から何者かが出てくる。
紫のローブとフードに身を包み、緑色の肌をした、老人のような姿の魔人。
忘れもしない、ゲーム中でガルティオ氏を幾度も(プレイした回数だけ)殺してきた、憎き仇敵。
こいつが、邪神官ゲド。
「――勇者ガルティオさん、あなたをこれ以上動き回らせる訳にはいかないと、我が王デスドラース様はお考えです」
ゲドが腕をさっと振ると、周囲に魔人の増援二体が呼び出される。こいつらはゲドの手下で、片方は名前忘れたけど馬の頭に斧槍を持った武人、もう片方は名前忘れたけど鹿の頭に三日月刀二刀流の武人。見ての通り馬鹿で脳筋だ。
「よって、ここでお亡くなりになって頂きます」
「ふん、そう上手く行くかな」
ガルティオ氏も剣を構えて応戦の体勢を取った。馬鹿コンビがじりじりとガルティオ氏との間合いを詰めていく。
「上手く行かせるのが知恵の見せ所ですよ。さて、ガルティオさんは自分の痛みには耐えられても他人の痛みはどうでしょうねえ? それも、愛する一人娘の痛みとなると――」
「なっ! まさか!?」
ガルティオ氏の顔に動揺が浮かぶ。だが馬鹿コンビが行く手を塞ぐような位置取りをし、動くに動けないようだ。
「ほっほっほっ、無駄な抵抗をすると、大事な娘さんの綺麗な肌が切り刻まれて可愛いお顔が焼け落ちるかもしれませんねえ」
「貴様ァ!」
ガルティオ氏は吼えるが、剣筋は明らかに鈍い。馬頭の斧槍と鹿頭の二刀流をなんとか捌くので手一杯そうだ。……無論馬鹿コンビもあれで戦闘は強いので二対一で捌ききれるのも十分人間業じゃないけど。
「下衆め……」
あ、珍しくシンディが怒ってる気配だ。アヤメもルナも、言葉こそ無いが僕が初めて見る厳しい表情でゲドを睨みつけている。
「安い挑発だよ。熱くならずに作戦通りに、ね」
敵意がストレートに僕本人に向いた分、逆に心が落ち着きを取り戻す。後ろの三人ではなく僕に攻撃が集中するならむしろ戦い易い。
「大丈夫! こっちは気にしないで! 僕は負けないから!」
ガルティオ氏にも声を届け、鋼の剣を眼前に構える。
これから始まるのは、今までみたいな一方的な蹂躙じゃない、僕にとって初めての“戦闘”だ。
一歩間違えれば死ぬ。その厳然たる事実を前に、全身の皮膚がピリピリと軋むように痛み、心臓も警鐘のようにドキドキと高鳴る。
でも勝つための作戦は立てた。装備だって現時点での最良を整えた。実力も十分足りてるつもりだ。
――あとは覚悟を決めるだけ。そうだろう? 僕よ。
「ほほほほ、反抗的な子にはお仕置き必要で――」
ゲドの悠長な話を待たずに、僕達は動き始める!
ゲーム中でも台詞が長い敵であったが、現実になった今ではわざわざ話し終えるまで待ってやる義理はない。どうせ大した事は言ってないので隙あらば遠慮なく攻撃しようというのが作戦その一だ。
【敏捷】の高さに物を言わせて最初に動いた僕はまず、ポーチから透明な液体の入った瓶を取り出し一気にあおる。
このアイテムは「アネルの力水」という消費型アイテムで、使用者は五ターンの間、武器攻撃で与えるダメージが1.4倍に上昇するものだ。
勿論一ターン分はこのアイテムの使用に行動を取られるが、続く四ターン全てを攻撃に当てれば5.6回分のダメージになるので収支ではこちらが上だ。
それに僕の攻撃力と敵のHPから割り出した計算では、この0.6回分の攻撃が今回重く効いてくる可能性が高い!
「その舐めた態度、後悔させて差し上げますっ!」
アヤメが怒りの声と共に振りぬいた剣が、鋭いカマイタチを引き起こす。これはスキル≪真空波≫の効果だ。遠隔攻撃扱いなので後列からでも減衰せずにダメージが出せる、今回の作戦に最適なスキルである。これが作戦その二。
が、空気を震わせ飛翔する真空の刃はゲドのローブを浅く切り裂くに留まった。
「どうしました、その程度の攻撃でこの私を――」
「じゃ、次はあたしねっ!」
続くシンディが後列から≪突貫≫を繰り出すが、これも槍の切っ先が僅かに刺さるのみであった。
やはり、彼女達の今のレベルに対してゲドの防御力と体力が高すぎるのだ。
「――揺れ煌く光の絹よ、此に現れ友を護れ――≪耐寒≫なの!」
ルナの呪文に応じ、ほのかに温かい光の膜が僕達を包み込む。治癒術士呪文の≪耐寒≫で、その名のとおり寒さによるダメージを軽減する防御呪文だ。
ゲドの攻撃パターンは大きく分けて三つ。そこそこ強力な物理攻撃、かなり強力な<氷>属性全体攻撃、超強力な<炎>属性単体攻撃だ。このうち物理攻撃は後列に退避することで受けるダメージを半減でき、<氷>攻撃も今の防御呪文で半減できるようになった。残った<炎>攻撃は、実は僕以外が食らうと半減しても即気絶するほどの大火力なのでヤマから外すことにした。これが作戦その三。
このゲームではHPがゼロになっても即死亡することはなく気絶扱いだが、それでも仲間が倒れる姿は見たくない。なので僕に攻撃を集中させるためにも早めに注意を引きつけておかなければいけないところだ。
「ほっほっほっ、ヒヨッコがどれだけ頑張ろうと痛くも痒くもありませんな」
多分計算ずくで煽ってるんだろうな。でも今はその余裕、いや油断に最大限付け込むべきだ。
「次は僕だ!」
「ほっ、どこからでもかかって――」
一歩、石床を踏み割る程の勢いで踏み込み、腰溜めに構えた鋼の剣を横に一閃!
魔法職のゲドには反応も視認も不可能であろうスピードで胴を横薙ぎに切り裂く!
「――ぐああああああああああああぁぁぁぁッッ!?!?」
凄まじい光と音を残して、剣がゲドの胴を通り抜けた。
魔人特有の緑色の血かしぶき、古代神殿の壁に毒々しい斑点を飛ばす。
「そ、その剣はッ!?」
ゲドの顔から、余裕の色が消える。振り抜いた僕の鋼の剣は、圧倒的なまでの光と熱を発していたのだった。
「――それは、まさか≪雷神剣≫か!? 信じられん。俺にもまだ使えないのに……」
攻撃エフェクトが派手すぎたからだろう。ガルティオ氏まで僕の剣に注目していた。
そう。これが僕の、いや勇者の最強の攻撃スキル≪雷神剣≫。単体攻撃技ではあるものの、耐性を持つ敵が少なく有効打を与え易い<雷>属性で攻撃する上、素のダメージ倍率も高いという正に最終兵器だ。
このスキルの効果で、さっきもまるで焼けたナイフでバターを溶かし切るかのようにゲドの胴を易々と斬り払ったのだ。
勿論強力な分消費も重く、今の一撃で精神力がごっそり零れ落ちた感覚に襲われる。
「話には聞いてたけど、これが……」
「いや、驚くのは後にしよう。ここからが本番だ」
呆然と呟くシンディを手で制し、光が収まって元の金属的質感を取り戻した剣を構え直す。
「貴様は――危険ですッ!!」
ゲドの口調が微妙に荒くなった。余裕が無くなったということはそれだけ僕の攻撃に効果があった証拠だ!
このまま押し切れば勝てる! 僕の胸に希望の光が灯る。
相貌に怒りの炎を燃やしたゲドが、鋭い爪の生えた手を振り上げ、僕に向かって振り下ろしてきた。
けど大振りで判り易い。後ろに跳んだ僕の目の前を凶悪な爪が通り過ぎる。と、その時。
「かかりましたね! ≪氷雪嵐≫!!」
――しまった! 今の爪攻撃は僕を間合いから外して呪文の時間を稼ぐ為のフェイントだったか!?
後悔先に立たず。ゲドの指先から破壊的な大寒波が迸る!
「――うわっ!!」
≪耐寒≫の呪文でダメージを半減している筈なのに、それでも身体の熱が一気に奪われ、無数の氷片が肌に突き刺さり、血を噴き出す時間も与えられずに傷口が凍結する!
「み、みんな大丈夫か!?」
ゲドから目を逸らさず意識だけ後衛に向けて、三人とも何とか動けるのを確認する。≪耐寒≫が無ければ纏めて薙ぎ倒されていたかも知れなかった。
シンディとルナがすぐさま回復呪文の詠唱に入りだした。今の時点では誰も複数人同時に回復する呪文を覚えてないので、時間をかけて一人ずつ癒していくしかない。
「……はあっ! はあっ! お返し、ですっ!」
アヤメだけは職の特性上、攻撃一辺倒になる。再度≪真空波≫をゲドに飛ばし、
ダメージは殆ど出ないにしても、一瞬でもゲドの注意を逸らしてくれるのは僕にとっても値千金の価値がある。凍りつく身体を無理やり前に進め、つんのめるように再度肉薄する。
「っうおおおおおぉぉっ!!」
多少のバランスの崩れは咆哮と共に力技でねじ伏せ、斜め下から逆袈裟に≪雷神剣≫で斬り上げる!!
スパークする光と熱を帯びた刃の軌跡が、ゲドの脇腹から肩へ一直線に駆け抜ける!
確かな手応え。それは確実にゲドの生命力を削っているはずだが、流石に武器への負担も大きい。新品なはずの鋼の剣はたった二度の≪雷神剣≫で早くも亀裂が入り、ボロボロに刃こぼれしていた。
「貴様アアアァァ!!」
ゲドの残りHPは、もう半分を切っているだろう。
顔を苦痛に歪めつつも、再度鋭い爪を振り上げる――けどさっきと同じ避け方はしない!
僕は身体をねじるように横に向け、隙を見せないようあえてもう一歩踏み込む!
「――つっ!」
ゲドの攻撃を完全には避けきれず、爪の先端が僕の脇腹を抉った。激痛と灼熱感が全身を貫く。
だけど今度は奴の動きが止まる! 僕は歯を食いしばり、振り上げた剣に再度≪雷神剣≫の力を注ぎ、さっきとは逆の軌道で袈裟懸けに振り下ろす!
「ぐぎゃああああああぁぁぁぁッッ!!」
三度目の≪雷神剣≫がゲドの身体を、そして命をごっそり削り取る。が、まだ辛うじて踏みとどまっている!
ここまでの激しい攻防で、僕は全身傷だらけで激しく肩で息をするが、ゲドの方もボロボロになっている。僕の見立てではあと一回≪雷神剣≫を叩き込めば倒せるはずだ。
そう考えて再度鋼の剣を持ち上げた時――
――ぱきん、と無情な音を立てて、刀身が根元から砕け散った。
■――――――――――――――――――――――――――――――――――
なぜなに『ラビドラ』!
第5回:今回登場のスキル解説
≪火線≫
攻撃呪文スキル。勇者、魔法使い、魔剣士、賢者が修得。消費MP4
弾ける火花をぶつけて、敵1グループに<炎>属性ダメージを与える。
ダメージ目安は≪火弾≫の2倍、【知力】を伸ばせばゲーム中盤ぐらいまで主力として使える呪文だ。
「火炎の杖」を道具として使うと、1戦闘に1回だけこの呪文をコスト無しで発動できる。地味に便利。
≪耐寒≫
防御補助呪文スキル。治癒術士、聖騎士、賢者が修得。消費MP6
5ターンの間、味方全員が受ける<水>属性ダメージを半分に軽減する。
他の防御補助スキルとの重ねがけはできず、後からかけたものが有効になる。
この呪文以外にも、同様の<火>属性防御呪文に≪耐熱≫、<雷>属性防御呪文に≪耐電≫が存在する。
≪氷雪嵐≫
攻撃呪文スキル。魔法使い、魔剣士、賢者が修得。消費MP9
酷寒の氷と冷気をぶつけて、敵全体に<氷>属性ダメージを与える。
ダメージ目安は≪火弾≫の5倍、ゲーム中盤から終盤で活躍する強力な呪文だ。
適正レベルだと<氷>耐性を持たない敵ならゲーム終盤の雑魚相手に2発でギリギリ倒せ、もし【知力】を255まで上げれば1発で倒せるかどうか、ぐらいの威力になる。
≪真空波≫
近接攻撃スキル。格闘家、戦王が修得。消費MP5
敵単体に<斬>属性で攻撃する。ダメージは通常攻撃の約1.2倍。
遠隔攻撃扱いとなり後列でもダメージが減衰しない。
格闘家では貴重な<斬>属性攻撃なのもポイント。
≪雷神剣≫
近接攻撃スキル。勇者専用。消費MP40
敵単体に<雷>属性で攻撃する。ダメージは通常攻撃の約3倍と、他の武器攻撃スキルに比べて破格の高さを誇る。
<雷>属性は物理属性や<炎>属性に比べて耐性を持つ敵が少ないため、単純な倍率以上の効果が得られることも多々ある。
勇者専用の最強クラスの攻撃技。但しその分消費も高く、正に決戦兵器。
普通に育てた勇者だと、ラスボス近辺のレベル40前後で最大MPが150ぐらいなので、ほかのスキルを節約しても一度の戦闘にやっと三回使える程度という燃費の悪さを誇る。補助スキルを乗せて一撃に勝負を賭けるのが正しい使い方。
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