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クエスト00:プロローグ

読み飛ばす人用、3行で判るプロローグ


・お気に入りゲーム『ラビドラ』のアップデートパッチが配信されたよ!

・新コンテンツの「女勇者」を選んだら画面が光って気絶したよ!

・*「おきなさい おきなさい もうあさですよ ゆういち や……」


 それは、同じ大学の学友でゲーム仲間でもある孝明(たかあき)からの一通のメールから始まった。






『差出人:Koumei

 件名:【速報】ラビドラ更新データ配信


 本文:マジお勧め』






「……マジか」


 色々と突っ込みどころのあるメールだが、それよりも『ラビドラ』の更新データという文言が僕――佐々木勇一(ゆういち)――の心を捕らえて離さない。


 あ、ちなみに『ラビドラ』とは正式名称『Labyrinths and Dragons』というロールプレイングゲームのことで、現在日本におけるファンタジーロールプレイングゲームの源流となった元祖であり本家、基本にして古典とも言える超有名ゲームのことだ。

 オリジナル版は僕が生まれる前の古いコンピュータゲームでグラフィックや音楽も今と比べると質素の一言らしいけど、大人気作品だけあって最新のハードでもリメイクされていて、大人も子供もゲームに触れる機会さえあれば誰でも一回はプレイしたことがあるだろう。


 メインストーリーもこれまた王道で、勇者の家系に生まれた主人公の少年が十六歳の誕生日に魔王討伐の冒険に出て、行く先々の村や町でイベントをこなし、途中父親である勇者ガルティオの死を乗り越え、囚われの姫君ローザを救出し、船に乗ったり父親の敵を討ったり空を飛んだりしつつ、最終的に魔王デスドラースを倒してローザ姫と結ばれハッピーエンドというものだ。


 僕もこのゲームには相当ハマり、全イベントや全アイテム網羅は勿論、主人公のレベルを最高の99に、【筋力】【敏捷】【耐久】【知力】【幸運】の全能力値を最高の255に、【最大HP】と【最大MP】も最高の999に上げ、最強の勇者を作ったりした。

 実際は普通にレベル99まで上げても能力値はなかなか最高にならないから、特定のモンスターから低確率で入手(ドロップ)するステータスアップアイテムをしこたま回収している。

 ぶっちゃけ廃人になるくらい時間かかったがそれも良い思い出だ。


「更新データねえ……デバッグか? 新イベントか? まさか新職業追加とか?」


 一人暮らしが長いとつい独り言が出てしまう。ともあれ自室のゲーム関連品専用棚から愛用のメタリックブラックの某携帯ゲーム機を取り出してPC(パソコン)経由でネットに繋ぐ。

 携帯ゲーム機を立ち上げて、メーカーのページに繋いで待つことしばし……


「よし、ダウンロード完了、っと」


 早速「お知らせ」リストに目を通し、どこがアップデートされたのか確認する。


『更新:勇者の性別に女性が選択できるようになりました』


「へぇ、遂に女勇者解禁か」


『ラビドラ』では主人公たる勇者は男性に本来は固定されていたが、この点でユーザーからは女勇者も使いたいという要望も多かった。

 僕としては冒険物の主人公は少年なのが感情移入もし易いから特に気にしてなかったけど、例えばプレイヤーが女性だったりする場合は確かに女勇者の方が物語りにのめり込めるだろうし、他にも絵的に映えるだとか百合好きな嗜好だとか女勇者がモンスターに負けてイロイロされるシチュエーションの同人誌が出回ったりだとかいわゆる最初に発売された時から時代的・社会的背景が変わってきたためにメーカー側も高度な政治的判断が必要になってきたというワケだろう。

 うん。全ては複雑化した社会問題が原因ということだね。


 どうでもいい話だが、この女勇者がアリかナシかはネットの掲示板でも頻繁に議論になり、『積極的必要派』『消極的容認派』『中立派』『否定派』『女勇者は俺の嫁派』等入り乱れていつも長々と言い争う割に毎回結論が出ない問題で、『ラビドラ三大論争』の一つとまで言われている。


 それはそれとして、僕個人は女勇者にはさほど心惹かれていなかったとはいえ折角の新コンテンツ。今日は特に出かける用事も無いことだし、これから『ラビドラ』三昧といきますか。

 後々面倒なことにならないように、一旦ゲーム機を閉じて洗い物だけささっと済ませてついでにコップと麦茶の入ったポットを準備する。去年の夏休み中に半日ぶっ続けでゲームしてたら脱水症を起こしてぶっ倒れたことがあったので水分だけはこまめに補給するようにしないとな。


 よっし、これで準備万端。夜まで戦えるぞ。夕食を諦めれば明日の朝まででもいける。

 僕は意気揚々と『ラビドラ』を起動。重厚なファンファーレと共にタイトル画面が映し出されたので「はじめから」を選んでゲーム開始。


『主人公の性別を選んでください』


 これまで見覚えの無い、新しい選択肢が出たので「女」を選んだ。すると、


「え?」


 突然――

 ゲーム画面が、いや、ゲーム機全体が強烈な光を発した!

 たまらず目を閉じるが、それでもなお暴力的な光量が瞼を貫き網膜に襲い掛かる!


 光が眩しすぎて脳みそのどこかが刺激されたのかそれともただ単に疲れが溜まってるだけなのか、段々と意識が遠くなる……

 眠りに落ちる直前に僕が思ったのは、「寝る前に電源アダプタ刺しとかないとバッテリーが切れる」だったのはゲーマーとして間違ってないよね……


 ……………………

 ………………

 …………

 ……






「起きなさい……起きなさい、もう朝ですよ、ゆういちや……」


 ……誰だろう、この声?


※序盤の節目になる「クエスト04」まで、本日中に投稿する予定です。


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