空飛ぶピエロ
私の世界は退屈でした。
それでも変化を起こしたのは貴方でした。
貴方と出会って楽しかったんです。
だから思ってしまったのです。
この時を永遠にしたいと。
どうしたら永遠に出来るのかと。
そんなことを考えてしまったのです。
だから貴方は被害者なのです。
ガチャっと重たい扉を開いてゆく。
扉を全開にすると風が強く吹き抜ける。
バサバサとタイがなびく。
扉を閉めて屋上の真ん中から空を見上げた。
鬱陶しい位の青空。
透けて見えるくらいの綺麗な水色だ。
こんな世界が嫌いだったんだ。
でも、貴方が好きにしてくれたんだよ。
屋上に張ってあるフェンスによじ登る。
スカートだろうと関係なしに。
ガシャンガシャンと耳障りな音。
フェンスを超えると高さを実感する。
ドキドキする。
恐怖や不安じゃない。
期待や興奮などの高揚感。
黒いセーラー服は私の通う学校のもの。
そしてここも私の通う学校。
……そろそろかなぁ。
口が釣り上がる。
そして予想通り屋上の扉が開く。
そこには愛しい愛しい彼の姿。
肩を大きく上下させて息を整える彼。
私のためにここまで走ってきてくれたのだ。
あぁ…私はなんて愛されているのだろう。
だから、これを永遠に……。
彼が私を止めようとこちらへ近づく。
何かを言われる前に私が言葉を発する。
「愛してる。誰よりも何よりも」
髪がなびく。
邪魔くさい…こんなことなら切っとくべきだった。
「だから私はこの時を永遠にするの。貴方の中で永遠に生き続けるの」
彼が叫ぶ。
それでも私は笑う笑う。
「永遠に、愛してる」
そして彼の方を向いたまま、私は後ろ向きに飛んだ。
こうすれば、私は貴方の中で生き続ける。
私のことを永遠に覚えておいてくれる。
貴方の心に生きれる。
永遠に切れない鎖で貴方を縛るの。
私は壊れたピエロのように笑った。