表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/28

情報を整理しよう

そう決めた私はその日の夜、新しいノートを机の上に広げた。

二人のためにも、なるべくゲームの記憶を書き留めておきたい。


まずは舞台設定


世界は中世ヨーロッパ風でありながら、今時の文明の利器も存在しているというハチャメチャな世界。

ちなみに魔法や竜といったファンタジーなものは存在しない。


ゲームの舞台は貴族たちが通うとある学園。

貴族の中でも選りすぐりの者たちしか通うことのできない、屈指の難関校だ。


そこへ学業推薦という特例中の特例で入学するのが私たち三姉妹。

庶民でこの学園に通っているのは私たちしかいない。


学園には『騎士団』と呼ばれる生徒会のような組織と、『四銃士』と呼ばれる風紀委員のような組織が存在し、生徒たちの熱狂的なほどの支持を集めている。



たしか、ジュリアを選択すれば騎士団と、ジェシーを選択すれば四銃士と恋愛ができたはず。


ジュリアはその高すぎる能力から騎士団の一員で、ジェシーは入学式に四銃士に興味を持たれるのが始まりだった気がする。


他にも先生たちが何人か攻略可能で、先生ルートは主人公にどっちを選んでも入れる。

そのかわり、二週目以降じゃないと出現しないんだよね。



思い出したことを全てノートに書き出す。


前世の記憶とは思えないほど、鮮明に覚えてる。



次は時期だ。


ここで一番最初の疑問、“どうして前世の記憶を今思い出したのか、どうして今まで忘れてたのか”の答えがわかった。



ゲームスタートの時期はいつも同じ


ジュリアが騎士団として二年間、私が陰気な生徒として一年間過ごした翌年。

 

ジェシーが入学し、ジュリアが三年生、私が二年生、ジェシーが一年生として学園に通う一年間。



つまり、今年。


そして入学式は三日後。



ゲーム開始のタイミングでちょうど思い出したというわけだ。

これはますます二人の恋を応援しろと言われているような気がしてならない。



よしっ!次はいよいよ攻略対象者についてだ!!



ところが、ペンが止まった。

どんなに頭を捻っても、攻略対象者に関する事柄がいっさい浮かんでこない。


……これじゃあ意味ないじゃんっ!!一番重要なところなのにー!?


対象者が何人居て、どういうイベントがあるかもわかるのに、肝心の顔や性格が出てこない。


前世であんなにやり込んだっていうのに……。なんで?



その時、コンコンと控えめにドアがノックされた。


「どうぞ」と声をかければ、ジェシーが隙間から顔だけを覗かせる。


「お姉様、まだ起きていらっしゃるのですか?」


その問いに視線を時計へ向けると、もう日付が変わろうとしていた。


「早めに寝なくては、体を壊してしまいます…」


部屋の明かりが廊下に漏れてしまっていたのかも。

どうやらジェシーはそれを見て、私の健康を心配してくれたらしい。なんて優しくて可愛い妹なんだろう。


「そうだね、もう寝るよ」


机の上のノートを閉じ、微笑みかけるとジェシーは、その宝石のように輝く碧い目を細めて笑った。

細く柔らかい髪がその拍子にサラサラと揺れる。


人形みたいな容姿に儚げな印象。

私の手助けなんて必要ないかもね。こんなに美人なんて反則だよ、反則。


おやすみを言ってジェシーは出ていった。

私は明かりを弱くし、改めてノートを見直す。


指で字の列をなぞるように追っていく。




三日後に、始まるんだ。


大好きだったゲームのストーリーが。



私、頑張る。二人のために。


そして



幸せになることができなかった、ジーナのために。


今度こそジーナを、平凡な女の子にしてあげるんだ。



徐々に瞼が下がり、薄れゆく意識の中で。

私はギュッとノートを握りしめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ