私の決意2
こんなのって……。
ジュリアとジェシーに抱きつかれているからかろうじて立ってはいるものの、本当は膝からガクッと崩れ落ちそうだ。
「お姉様?」
「ジーナ?」
そんな私の様子に二人が心配そうな声をあげる。
「だ、大丈夫。ちょっと目眩がしただけ」
男っぽいジュリア、丁寧な言葉のジェシー。
ジーナの言葉使いはそこまでかしこまってないけどサバサバもしてない。
きっと間違えてはいないはず。
私の発言に案の定安心した様子を見せた二人。
…………そうか。
私はもう、ジーナなんだ。
リリーク家の次女、ジーナ・リリークとして生きていかなきゃいけないんだ。
暖炉の側にバケツを置き、洗面所へ駆け込む。
そこにある大きな鏡に映るのは黒髪の少女。
不気味なほど白い肌。暑苦しいマント。
私は邪魔な前髪をかきあげる。
……うん、やっぱりジーナも美人なんだよね。
そればっかりは得した気分。前世の私の容姿は、良くて十人並みだったから。
目の前にはゲームの画面の向こうにいた薄幸の少女がいる。
アメジスト色に輝く瞳には、静かな決意が宿っていた。
…………私、決めた。
ジーナとして第二の人生を歩む。
でも、ネガティブなジーナを演じるのは嫌。
姉妹の恋の邪魔なんてもってのほか。
一人で、目立たないように。それでいて前向きに
絶対に幸せになってみせる!!
そう決意した私は、さっき持ち出してきたはさみを手に取った。
「もうお姉様どこいってたのですか、ご飯が冷めてしまいま………お姉様っ!?」
洗面所から出てきた私をみとめたジェシーは悲鳴をあげた。
無理もないと思う。
床につくほど伸びていた髪は半分ほどの長さ、胸あたりまでになっていたし、顔全てを覆ってしまっていた前髪は、ギリギリ目にかかるかどうかというほどに短くなってしまっていた。
「ジーナ…なんかあったの?」
先に食事を取っていたジュリアも手を止め、怪訝そうに眉を寄せる。
「ううん、なにも無いよ。ただ邪魔になってきたから、思いきって切っちゃった」
そう言って笑えば、二人は驚いたように瞠目する。
あ……そういえばジーナって笑わない子だったかも。ま、いっか。
「あ、あぁぁ。お姉様が、お姉様が笑った…」
「ジーナ!!なんて可愛いのっ!?」
私の笑顔を見たジェシーは泣き崩れ、ジュリアは頬を染めて抱きついてきた。
そんな大袈裟な…と思わなくもない。
でもそれだけジーナが笑うことは珍しいんだろうな。
「姉さん、ジェシー、私は改心したの。もう暗い考えはしない。前向きに生きていくことにしたの」
いきなり人格が変わるのもおかしいしね。
怪しまれないように二人に言えば、キラキラした目で見られた。まるで、神様を見るみたいな。
「さすがジーナ!自慢の妹だよ!」
「……私は、夢でも見ているのでしょうか?」
ジュリアは跳んで喜び、ジェシーは瞳を潤ませながら顔を綻ばせる。
自分のことのように喜んでくれる二人に、心が暖かくなった。
なんて、いい姉妹なんだろう。
前世で一人っ子だった私には新鮮な光景だった。
憧れてた姉妹がこんなにいい人たちで良かった。
こんな人たちの恋の邪魔なんて絶対したくない。
むしろ、幸せになってほしい。
私はゲームの知識を生かして、二人の恋を応援するんだ。