08 外見も年下ですが、中身も年下でありました
「逆鱗、でござりましょうか?」
「ああ」
でも彼は見たところ、ちょっと小生意気な普通の幼児だ。
一体どんな呪いが……と考える。
実は姫が王子に変えられたのかと思ったが、名前はレーヴィットとあまり女性的な響きではない。それに、こんな尊大な態度の姫君なんて嫌だ。
あと考えられるのは、見た目は子供、中身は大人というあれだ。幼児らしくない物言いや態度は王族だからかと思った。
幼児らしくない表情。
あ……。
中身と外見が合っていない?
「殿下は……おいくつでございますか?」
わたしの質問に、殿下は面白そうに目を細める。ほら、やっぱり子供の表情じゃない。
「お前の目では、いくつに見える?」
「外見……拝見しましたところ、御年四歳か五歳くらいで、ござりましょうか?」
「今年で十五歳になる」
「え、うそっ! 若っ!」
わたしの反応が予想外だったのか、殿下は冷やかな笑みを浮かべる。
「うそ、若い、とは? お前の方が年上とでもいうのか?」
「はい! わたし、いえわたくしめは今年で十六歳になりまする」
本当にわたしの方が年下だと思っていたらしい。殿下は瞠目すると、呻くように呟いた。
「……ずいぶんと童顔なのだな。まだ童かと思ったぞ」
なんか悔しそうだ。わたしの方が年上だったのが悔しいとか?
なんでも自分が上でいたいのかなあ……困ったお坊っちゃまだ。なんておくびにも出さず、にっこりと殿下に笑顔を向ける。
「標準的だとは思いますが、日本人、わたしの国の者は世界的にも幼く見えるそうでございまするよ」
「ほお……」
「念のためお聞きしたいのですが」
よいですかね? という視線を向けてみる。
「申せ」
「この国の方々はとっても長生きで、成長が遅いってわけではございませんですよね?」
「基準はわからぬが、長生きをしてもせいぜい百年程度だ。成長速度は、むしろお前よりも早いと思うが?」
そっか。じゃあ年下でも、殿下の方が年上に見えるってことか。あーよかった。こんな尊大な態度の幼児なんて嫌だし。
「つまり、リーアさんを怒らせてしまったがために、小さくされてしまわれたということで、よろしいでござりましょうか?」
殿下とリーアさんの顔を交互に見る。殿下は否定も肯定もしないということは、その通りってことでよさそうだ。
でも意外だ。あの態度のせいが大きいとは思うけど、殿下って年上かと思っていた。まさか年下だとはね。
「なんだ。そのおかしな顔は」
あら、殿下ってば失礼極まりないですね。
「はい。殿下が見た目通りのお年ではなくて、良かったと思っておりますでございます」
「……ほお」
冷ややかに片眉を上げて、ガンを飛ばしてくる。
ほら、すでに反応が可愛くない。
「して、お前は呪いが解けぬ理由はわかるのか?」
「はい、まあ……」
なんとなく、リーアさんの気持ちがわかった気がします。