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13 皇子様に協力をするしか道はない

 バカは休み休み言え、か。

 確かに、口付けなんかで呪いが解けたら苦労なんかしないよね。

「では、やっぱりかけた本人が解くしかないですかね」

 話は元に戻るけど、リーアさんのやる気スイッチを押すしかない。でも。

「わたしか殿下を再教育なんて、無理ですよ」

 見掛けはちびっこでも、中身はわたしとひとつしか歳がかわらない男の子。しかも王子様としてかしずかれてきたような相手に何を教えるというのやら。

 恐らく一流の教師たちの教育を受けてきたに違いないし。間違いなくわたしより勉強できそうだし。

 白旗を上げたわたしに、殿下は心底呆れたように言った。

「お前はバカか」

「はいはい、どうせバカでございますよ」

「人の話は最後まで聞け。このバカ」

「人のことをバカと言う方がバカなのでございますです」

「お前に言われる筋合いはない」

 ひどい。なんて口の悪い王子様だ。

 そこまでお利口ではないけれど、しつこく言われるほど馬鹿でもないつもりだった。でもさっきからバカバカ言われると、やっぱりわたしってバカなのかと思います。

 さすがにここまで言われると、鋼の神経と言われるわたしでも落ち込んできた。淀んだ目を殿下に向けると、いきなり小さな両手がわたしの頬を、ばちんと挟み込んだ。

「いった!」

「話を聞け」

 多分わたしの両頬には紅葉のような手形がついているに違いない。痛みを堪えながら、目の前の幼児を睨む。しかし殿下の眼力には勝てなかった。

 幼児のくせに目力強いってすごい。あ、本当は幼児じゃないか。

「魔法も呪いも知らないお前がここにいるには、理由が必要だろう。お前は俺の呪いを解くために召喚された者として側にいろ。恐らくその方が安全だ。呪いを解くために俺の再教育が必要で、魔力を強めるためにリーアに魔法の手ほどきを受けるためにこの屋敷で世話になる。無理やりだが、お前がここにいる理由が必要だ。わかったなら俺の言うことを聞け」

「は、はあ……」

「返事は『はい』だろう」

「はい!」

 やだもう。殿下ってば変なところがリーアさんの影響を受けている。

「あと!」

「はい!!」

 殿下の倍の声で返事する。

「そのおかしな話し方をやめろ」

「おかしな話し方とは、なんでござりましょう? 某の口の利きようがお気に召されないと、おっしゃいますのでございましょうか?」

 殿下の目付きが険しくなる。

「だから、その話し方だ」

 ごめんなさい、わざと言ってみました。

「分かりにくい上、聞いていてバカにされているようで腹が立つ」

 バカにしたつもりはなかった。ただ、殿と従者のやり取りが面白くて悪のりしてしまっただけ。

 でまあ、敬意なんて抱いていないうえ、滅茶苦茶な敬語で接せられた殿下からしてみれば、バカにされたと感じてしまうのも無理はない。

「失礼しました……」

「わかればよい」

 殿下は我が儘そうではあるけれど、結構寛容だ。さすが次期王様は懐が深い。

「違う」

 ん? 何だ?

「俺は次期王位継承者ではない」

 突然、不機嫌な顔と声で言われた台詞に、思わず首を傾げる。

「なんですか突然」

「お前の誤解を訂正したまでだ」

 どうやら思ったことを口に出してたようでした。

「すみません、殿下って一人っ子っぽいから、てっきり第一王子かと」

「いや、第一皇子ではある」

「そっか。年功序列っていうわけじゃないんですね」

 じゃあ、実力主義? ということは、殿下は第一王子だけど、王様の器じゃないってこと?

 さすがにわたしも、それを聞くほど無神経ではない。

 あーでも、余計なこと言っちゃったな。急に黙り込んでしまった殿下に罪悪感だ。

「ゴメンね、殿下。立ち入ったことを言っちゃって……しまって」

「……いい、気にするな。あと、イラッとするから語尾を訂正するな」

「はーい」

 俯いたままで、わたしの方を見ようとしない。気にするな、とは言っているけど、どうやら触れちゃいけないことだったみたいだ。


「返事は『はい』だ」

「はい……」

 殿下の仮の教育係と言われても、わたしごときが相手じゃすぐに嘘だとバレそうである。見せかけだけでも、何か「教育係」っぽいことをした方がいいだろうな。ということは、それらしく見えるように、リーアさんから魔法の手ほどきも受けるべきだろう。

 よし、リーアさんに交渉だ。でもその前に、殿下の教育係役の方を先に実行しなければ、リーアさんに納得してもらえない、かな?

 うーん……。わたしが殿下に教えられることって何かあるかな?


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