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第8章

掘ってて気づいたことがある。昨日の土が柔らかかった訳が。

あの不自然なほどの土の柔らかさはどう考えても、掘り起こした後の柔らかさだ。

ジジィが掘り当てたのが3日前。そりゃ、柔らかいだろうさ!ジジィが掘り起こしたのは他でもない、ここだったんだから。

丁寧に白骨死体を取り除いて、その奥にあったアタッシュケースを開けて、確信した。

その中は、からだった。


取り出した白骨死体を丁寧に並べた。すると、その骨格はどう考えても子供のそれだった。

桜井が、あいつが、あのジジィが()ったのだとしても、あのジジィは関係無くて、ジジィは金を取り出しただけだとしても、俺は桜井を許さない。

俺は桜井を許さない!

許さない・・・・!


「あら、お帰り。どうだった?お金は?・・・・・・・・・・・・骨、は・・・・?」

帰ったら嫁が恐々と聞いてきた。嫁に、真実を知らせるなんて俺にはできない。俺は、嫁に思いつめてほしくない。嫁には幸せに暮らしておいてほしい。

「骨はな、いや、あの骨に見えたモノはな。しろが使ってた骨の玩具なんだよ。」

帰りの間中ずっと考えていた嘘を舌の上で転がす。

「本当?」

哀しそうな顔で嫁が聞いてくる。ああ、よく見たら嫁、泥だらけじゃないか。こう見えてとっても真面目だから頑張ったんだろうな。

「ああ。やけにリアルだったよ。そして、金なんて無かった。やっぱりそんな上手くはいかないよ。お前もさ。金のことばっかり考えてないでさ。今のままでも十分幸せじゃないか。なあ。そうだろ?」

最後まで一気に話して嫁の顔を伺ったら、泣きそうな顔して笑ってた。そしてまるで呟きはじめた。

「馬鹿ねぇ。あなたって。馬鹿ねぇ。本当に、馬鹿よ。」

「・・・なんだよ。」

「あなた、昔からそう。嘘つくときは妙に饒舌になるのよね。分かったわ。骨はやっぱりあったのね。そして、金も在ったのかしら。」

「・・・ちがう。骨も、金も無かったんだ・・・・。本当なんだッ!」

知らせてはならない。昨日見た骨は子どもの骨だなんて。しかも、俺が掘り出してからまた埋めたなんて。嫁の傷つく顔を見たくない。もうこれ以上言及しないでくれ。

「あなた。私をそんな弱いと思ってるの?馬鹿ね。私が、骨ぐらいでビビるわけ無いじゃない。あなた1人で抱え込まないでよ。2人でどうにかしましょう。もともと私が多恵に嫉妬して金が欲しいなんて言ったのが悪かったのよ・・・。ねぇ、そうでしょう。あなた。」

言及しないでとは言ったけど。そんな優しい口調で言われたら、話してしまうじゃないか。いつも冷たくて、食事も服も照明だってケチってるくせに。何でこんな時だけ優しいんだ。反則だ。

「ごめん・・・沙世。沙世が悲しむ姿、見たくなかったんだ・・・。」

「清志。そんながらじゃ無いでしょう。馬鹿は馬鹿なりに素直に話せばいいのよ。」

喋ったら即刻冷たいし・・・・。

「まあ、お茶でも飲みなさい。」

「うん。」

やっぱりちょっと優しい。

うぇ。・・・水飲んだ方がましだ。

「あと一つ。」

「何?」

「そこの犬っころ、何?」

あ、忘れてた。



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