第5章
次の日。あのジジィが行ったという山を嫁としろと俺とで登ってみた。流石にこの季節、木には全然葉っぱがついてなくて常緑樹がやけに目立っていた。低地の方には桜がたくさん植えられていて揃いも揃って丸裸になっている姿はむしろ見ものだった。しかし、
「ワンワン!ワン!ワン!」
犬が元気よく吠えている。少しうるさいなぁ。家から出るときはなかなか離れようとしないで、大変だったってのに。急に元気になりやがって。
「さあ、犬。さっさと大判小判の在りかを教えて。」
嫁が犬に話しかける。結構山道を歩いているので疲れているのだろう。昼過ぎに出たが、もう3時ぐらいを回ってる。俺もそろそろ疲れてきた。
「ココ掘れワンワン。」
急に立ち止まって吠える犬。あれ?今『ココ掘れ』とか言ったような・・・・。疲れてるからかな。
「分かった、ここね。」
嫁が勢いよく鍬を持ってザクザク掘りはじめる。どうでもいいけど、あのジジィよく山に鍬なんて持って行ったよな。そう考えると、ちょっと不自然じゃないか?
ま、考え過ぎかな。
「あなた。ボケっとしてないで掘りなさい。」
鍬を投げ渡すのは危ないと思う。
「うん。」
余計な事言ったら次から飛んでくるのは鍬じゃなくて殺意だ。
しばらく無言で土を掘り下げる。幸い柔らくて掘りやすい土だった。
掘り下げること20分。本当にここになんかあるのか?と思い始めた所で何か固いものにぶつかった。
嫁が期待に満ちた目で見てくる。ここは名誉挽回だ。俺はその硬い物を手でつかんで思いっきり引き上げたのは、白くて硬くて棒状でまるで理科準備室に鎮座しているあれの一部みたいで―――――骨骨骨っ!骨、骨があっ!白骨死体が、骨だ!
「骨骨骨っ!骨、骨があっ!白骨死体が、骨だ!」
初めて口と意識が合致した気がする。
というか、骨を見て落ち着いていられるのは連続殺人犯かそっち系の科学者ぐらいじゃないか?
そこでふと気になって嫁を見てみると、凄い真剣な表情で俺の手の中にある骨を見つめていた。流石嫁。骨ぐらいでは動じないか。・・・あれ。確か嫁はホラーものに弱かった気がするけど・・・?
「・・・これは、骨かしら。」
「・・・だな。」
俺もやっと落ち着いてきた。骨ショックは半端ない。
「・・・そう。」
重々しく呟いた嫁はそのままフラッと地面へ倒れた。今まで掘っていた土がクッションになってそんなに外傷は無い様だ。骨ショックは半端ない。
俺は、どうしたら良いんだ?