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第1章

むかしむかし、と見せかけて結構最近に。

おじいさんがと見せかけて29歳の男性が両親の遺産である畑付きの一軒家に住んでた。

おばあさんがと見せかけて28歳の女性が節約に命をかけて慎ましやかに暮らしていた。


花を咲かせた華やかな男の隣に住む、男のお話。

始まり始まり。あ、そこの君。主人公が地味そうだからって立ち上がらないでくれ。

主人公は、俺なんだぞ?傷つくじゃないか。


「知ってる?隣の家、犬を飼い始めたんだって。」

嫁が節約に節約を重ねて編み出した、たくあんのみ(・・)の昼ご飯を5秒で食べ終わった時だった。

白く眩しい白飯を片手にたくあんをぼりぼり食べながら、嫁が話しかけてきたのは。

「ふーん。そりゃ知らなかった。犬なんて、金がかかるだけなのに。」

「そうでしょう?餌代が、夫の食事代を超すなんてあり得ないわ。」

ハードルが高すぎる。たくあん1枚以下の飯なんて、そこら辺の草しかないじゃないか。しかも今の季節そこら辺の草すら枯れてるぞ。

「・・・そうだな。」

しかし、俺はそんな命を脅かすツッコミはしない。そんな無謀な真似をしたら笑顔で『明日から、昼ごはんは水ね♪』とか言い出しかねないし。こんなに寒いのに冷水だけを飲むって自殺行為だろ。・・・それ以外の心配はあえてしたくない。

「どんな犬なんだ?」

「しろって名前の白い犬だって。」

嫁は何処か吐き捨てるように言った。なんだか憎悪が込められているような気がする。・・・命の為に気にしないでおこう。

「そのままだな。でも、多恵(たえ)さんそんなに犬好きじゃないって言ってたのに。どうしたんだろう。」

「ふん、どうせ多恵が『可愛そう!家においで』とか聖人君子ぶりっこして家に招き入れたんでしょ。」

吐き捨てるどころか、折角の米を飛ばしながら嫁が答える。飛ばすぐらいなら、俺にくれ。ちなみに、多恵さんとは隣の家の可愛らしい夫人だ。ちなみに俺とは幼馴染。嫁とも親交があったはずだ。

「昔からそういう人だろ。多恵さんは。」

「昔からぶりっこで皆に嫌われてたわね!」

いや、昔から誰にでも優しく、みんなに慕われていたと言おうとしていたんだが。何故か嫁は多恵さんを凄く憎悪の対象にしてるようだ。ま、昔色々あったからしょうがないとは思うけど、それにしても少し大人げないと思う。

多恵さんは綺麗で聡明で誰にでも親切で、会うと妻がいるにもかかわらず興奮してしまう。

そんなことを考えていたら、嫁は苦々しい口調のまま無実の俺を睨みつけ、低い声で命じた。

「もう、この話は終わりよ。人が食ってるのを見つめてないで、畑でも耕したらどう。」

怖かった。


これは、冬の童話祭の参加作品です。

あまり童話に見えないという突込みは心の中にしまってください。

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