ep.18 戦神の加護 (1)
石畳の城下町から平原へと続く大きな門が開かれ、その向こうから鎧を纏った集団が現れる。
列を成して城の方へと向かう集団を、城下に住まう者たちは皆固唾を飲んで見守った。
深く血の匂いを漂わせる男たちが城下町の大通りを半分ほど行った時、先頭を進む黒い男の前に、幾つかの影が躍り出た。
素早く静止しようとする配下の動きを止めて、漆黒の髪を持つ男が眼前に立つ青年たちに発言を促す。
獣の耳を携えた青年たちは、皆みすぼらしい格好をしていたが、しかしその瞳は強い意志に輝いていた。
「殿下、クラウス軍司令! 俺も、獣人の俺たちでも、軍に入れますか⁈ 俺たちの力は、この国を魔女から守るのに、役に立ちますか⁈」
「……ああ、その為にはまず登城し、正規の手順を踏んでもらう」
クラウスの低く冷たい声は、静まり返った城下町に重く響き渡るようだった。
彼に指示を受けた兵が、徴用の手続きをする為に、獣人の青年たちの身柄を預かった。
そこへ、ここまで黙ってやり取りを見守っていた別の青年たちが、弾かれたように駆け寄っていく。
彼らは皆獣の耳を持たず、服装からして恐らくはこの城下に住まう商人か何かの息子たちであり、そして同様に国の力になりたいのだと訴えた。
「殿下、キリがありません。我々の隊で引き受けますので、お先に城へ戻り、この度の報告を」
若者たちに囲まれ始めた兵が、クラウスに向けてそう言った。
クラウスは頷き、配下の騎士たちと軍兵たちを引き連れて、再び城に向かって進み始める。
「クラウス総司令、魔女の兵を退けてくださり、ありがとうございます!」
「必ずや再び、争いのない美しい王国をこの手に!」
先程までの静寂とは打って変わって、道端に集まった民は口々にそのようなことを叫んだ。
歓声のようなそれらを背中に受けながら、クラウスはただ無言で歩みを進めた。