第七話 初心者ダンジョン③
俺とルナは更にダンジョンの奥へと進んでいた。
「‥‥あ、そうだダイスケさん。お怪我は大丈夫ですか?かなり痛々しい怪我ですが‥」
「確かに‥ぐっ!めちゃくちゃズキズキする‥。」
ゴブリンを倒した事でドーパミンが出ていてあんまり痛みを感じていなかったのだろうが、今になってすごく痛むな‥。
「よし、じゃあダイスケさん、止まっていて下さい。今からスキルを使って簡易的だけど手当てをします。」
ルナは目を閉じた。
「ヒール《回復》!」
そう言い、緑のオーラが俺を包んだ。
そうすると、痛みが和らぎ、傷もみるみる消えていった。
「おっ、凄え!痛みが和らいだ!ありがとうルナさん。」
「どういたしまして。」
ルナさんは微笑んだ。
‥‥ルナさんのスキルは傷を癒すだけで無く、俺の心も癒してくれたようだ。
おっと、今度は心臓が痛くなって来た。このままだと胸を突き破って心臓がどっか行ってしまいそうだ。溢れる気持ちはここら辺で抑えよう。
俺は瞑想状態に入り、鼓動の速さを通常通りに戻した。
「‥?ダイスケさん‥?まだ痛みますか?」
急に目を瞑って突っ立っていたら誰でも不思議に思うよな。
俺は瞑想を切り上げた。
そして再び二人で歩いていると下へ行ける階段があった。
降りてみると、明らかに雰囲気が違う。
ボス部屋は近いかもしれない。
「注意してください。」
「はい。」
床を踏む音と天井から滴る音が響く。そして寒気を感じる。
さっさとボスを探して倒してこんなところから出たい。
早足気味に歩いていると、宝箱があった。本当なら喜ぶ所だが、ここはダンジョンだ。ミミックが擬態している姿かもしれない。
俺は武器を構えて宝箱を恐る恐る開けた。
‥‥何だこのみすぼらしい杖は。
その瞬間、ルナが目を輝かせて
「やったあっ!杖だ!これで魔法が使える!」
まるで玩具を買ってもらった子供の様に喜んだ。
‥そうか、ルナは杖をダンジョン内で杖を無くしていたんだった。魔法が使えるなら更に心強い。
ルナが不要になったナタを俺に渡してくれた。
俺は不要になった棍棒を捨てた。
「ちょっと魔法を試しに練習しても良いですか?」
「いいよ。」
「ファイヤーボム《烈火爆弾》!」
ルナがそう言って遠くへと火の玉を放ち、壁に当たった瞬間、火の玉が破裂した。
「おお‥」
俺は唖然とした。
「よし!いつもの勢いを取り戻せたぞ!やったー!」
「‥ルナさん、安心するのはまだ早い。ボスはどれだけ強いかは分からない。喜ぶのはボスを倒してからでな。」
「‥そっ、そうですね!失礼しました!」
ルナさんは赤面し、我に返った。
そうして二人で歩いて行くと、
‥‥‥あった‥ボス部屋だ‥。
周りの雰囲気とは全く違う重そうな大きい鉄の扉がそこにあった。
扉にはBOSSと赤い何かの塗料?で書かれていた。
俺は足が震える。
その震えは恐怖ではない何かの感情によって引き起こされていた。
「待ってろよスキルちゃん!あと一歩なんだ!」
「スキル‥?何の話ですか?」
ルナは首を傾げる。
「それは勝ってから話そう。取り敢えず勝つ事が最優先だ。」
「‥‥必ずボスを倒そう。」
俺はルナと手を合わせ、勝つ事を誓った。
扉を開ける。
ギイイイッッッ‥
と大袈裟に扉が音を立てる。
扉が開いた衝撃で砂がパラパラと落ちてくる。
そこには定番のボスであるドラゴンが待ち構えていた。
ガオオオオオオッ!!!
と叫んで威嚇してくる。
まるでいらっしゃいませと言わんばかりの歓迎だ。
「あんまり歓迎されてないようだな。行くぞルナさん!」
「はい!」
ダイスケにとってはスキルが賭かった戦いである。
二人vsボスドラゴンの戦いが始まった。
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