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第十一話 町へ

 2人顔を見合わせて笑っていると、俺の腹には飢えているライオンが吠えたのかって位、盛大にお腹が鳴った。


「ははは、お腹空きましたよね。私もですよ。丁度少し歩いた所に町があるんでそこでなにか食べませんか?ダイスケさん。」


「いいね。さっ、行きましょう。」


 このダンジョンがあるのはフレシア村の隅っこだが、残念な事にフレシア村にはこのダンジョンとでかい畑と家が少しある程度だ。


 病院と言えるのか怪しいアラン先生の診療所があるが、ダンジョンで怪我した勇者たちはそこには行かず、隣のクネルと言う町には一応ちゃんとした病院があるので皆そこに運ばれて行くらしい。


 実際、アラン先生の診療所に運び込まれた勇者は過去に片手で数える程しか来ていなかったな‥

  

 そんな事を思いながら、歩いているうちにクネル町に到着した。  


夕方にも関わらず、町は非常に賑やかだった。


所々から活気のある声が聞こえてくる。 


「トマトがいまなら半額!半額だよぉー!」

「冒険者なら必須の傷薬!無いならここで買ってきなぁー!」

「お土産に是非!クネル町名物のクネルまんじゅうはいらんかね〜」

 

 そうそう、これだよこれ。町に来たって感じの騒騒しいけど、どこか落ち着くような感じ。

 

さて、問題はどこで飯を食べるか‥だ。


1人ならさっと牛丼屋で牛丼をかき込むが、今回は2人だ。

どうする俺。


ここは無難にレストランか、かっこつけて喫茶店にするか‥

 

「そうだ、ダイスケさん、私の行きつけのステーキ屋さんがあるんでそこ行きましょうよー」


行きつけのステーキ屋さん!?いいねぇ!


「超ナイス!行こう行こう!」



俺たちは年季の入った木の扉を開ける。


カランカランカラン‥


ドアについた小さい鐘が鳴る。


その瞬間、ぼわっと熱気と煙が押し寄せる。


反射的に

「おわっ!熱っ!なんだここはサウナかよ!溶けて死ぬぅぅう!」

と愚痴をこぼす。


「うるせぇなガキ!勝手に蒸発してろ!」


奥の厨房で豪快に肉を焼いていた大柄なオッサンが叫ぶ。


‥結構ノリいいな‥


ルナさんが熱気に動じず言う。

「やっほールイスおじさん!」


 ルナさんが挨拶するとオッサンは硬い表情から柔らかい笑顔に変わった。

「おぉールナ!またステーキが恋しくなったか?」


「うん!それでそれでね!私たち今日、ドラゴン倒して来たの!」


「おお凄えな!流石じゃねえか!今日は奢ってやる!たらふく食え!‥‥そっちの今にも蒸発しそうな兄ちゃんはどうしたんだ?」


「この人はダイスケさんって言う人!助けてくれてね、一緒にドラゴンを倒したの!」


「どうも‥初めまして。ダイスケです。」


俺はオッサンに自己紹介をする。


ジロッとオッサンは俺を見つめて来た。


思わず目を逸らす。


「‥‥まぁ、悪そうな奴じゃないな!俺はルイスだ。よろしくなダイスケ。」


よかった。殴り飛ばされると思った。


「さぁ2人とも席につけ!今日は上物の肉が入ったんだ!特別に食ってもいいぞ!」


 そうすると、オッサンはどかっとデカい肉塊をまな板に乗せ、豪快に肉包丁をザクシュ!と振り下ろし、肉をグリルに乗せ、ジュージューと肉を焼く。


 煙と熱気がまた押し寄せるが、今はそれすらも美味しく感じた。


‥隣のルナさんは獲物を見つめているライオンのように焼かれている肉を見つめている。


 少しすると、俺たちの前に皿いっぱいの大きさのステーキが運ばれて来た。


「さぁ食いな!」

とオッサンの声と共に、俺たちは


「いただきまーす!」

と言い、ナイフとフォークを両手に握り、ギコギコとステーキを切る。


大きめにステーキを切り、口に頬張る。


その瞬間に言う言葉としてはただ一つ。


「うまっ!」


めちゃくちゃ美味い。最高だ。


そうすると、あっという間に2人共ステーキを平らげていた。


いやぁ、食った食った。


「おじさん、ごちそうさま。」


「おう、早いな。」


 そう言うと、オッサンは奥からゴソゴソと茶色い飲み物が入った瓶を取り出し、栓抜きで栓をポンっと外し、ジョッキに半分ずつ飲み物を注いだ。


そして俺たちの前に置かれる。


「お祝いのコーラだ」

 

「何から何までありがとう、おじさん。」 


「ああ、いいよいいよ。ドラゴン討伐記念の報酬第二弾だ。いやぁ、お前達を見ていると何か‥その‥懐かしさを感じるんだ。俺だって昔はドラゴンを討伐した事あるんだぞ。まあ、今はちょっと歳食っちまったから無理かもしれないけどな。」


「いやいや、そんな筋骨隆々の体格で歳食ったなんて説得力0すぎ。今でもドラゴンをワンパンしちまいそうだけど。」


「お世辞でもそう言ってくれて嬉しいな。」


「ハハハ」

「ハハハ」

 

「いやー、気分良くなって来たなぁ。よし久々に飲むか」


 そう言うと、オッサンは奥の厨房からでっかい酒瓶を持って来て豪快にラッパ飲みをした!

 

ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク‥


 店内には俺とルナさんとオッサンしか居なかったが、オッサンが酒を飲む音が響き渡る。 


「ちょ、何してんの死ぬぞ」


注告も聞かず、音は中々止まらない。


「ぷはーっ。」


「おい、オッサン。何してんだよ大丈夫か?」


「ああ、スマンスマン。喉乾いてたらつい飲み過ぎしまった。」


次の瞬間


「いやー最近さー本当に客がこなくてょぉー商売あがったりなんだよぉぉー」


「‥もう酔いが回って来たのか。‥でも確かにそうだな。俺たちが来た時も夕食のピークタイムなはずなのに他の客はほとんどいなかったな。」


「この気持ち分かってくれよぉーっ」


次は急に泣き出してきた‥もうどうすれば良いんだよ‥。


バタンッ‥


「‥おい!大丈夫かよっ!」


オッサンが倒れちまった!?ヤバいヤバい!


俺とルナさんは慌てる。


‥いや、息はあった。寝ちまったのか。


揺さぶっても全く起きない。


「ちょ、困ったな。仕方ない。ルナさん、一緒にルイスのオッサンをソファ席まで運ぼう。」


「せーのって‥重っ!」



俺たちはなんとかオッサンを運んだ。

‥ドラゴンより厄介な人かも知れない。


「他の客が来たら面倒だ。外の扉にかかってる営業中の札を準備中にしてくるよ。」


 そう言って俺は扉にかかってる札をくるっと回して営業中から準備中に変えた。


もう外はかなり暗くなっていた。


 家の事もあるが、オッサンの事がちょっと心配だ。

まあステーキの恩もあるし、もう少しだけここにいよう。


まだ夜は長そうだ。


読んで頂き、ありがとうございました。

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