要救助者はテロリスト?-5 仕事を通じて
大捕物が終わって、結局その日の勤務では大きな災害もなく、平和な1日を終えて朝を迎えた。
ミライはそのまま、女子寮にリザとクロエと共に送ってもらったーーー
ルーシーは残業のようで、まだ警察署で仕事をしているような話を小耳に挟んでいた。
大変だなーと思いつつも朝から満水にされている寮の大浴場に飛び込んだミライはホッとした。
ぷかぷかと体を浮かべてゆらゆらする感覚を味わいながら今回の一件のことを思い返していた。
ミライが知っている事実はこうだった。
王女の襲撃をしようとした犯人は今回のテロリストグループと同じだったらしい。
ミライが出場したクイーンズタワーも放火事件もそのグループの一味で、市役所への攻撃を実行するために行った物だったらしい。
ただ、予想外の火の手になったらしい。そして、その犯人をミライが救助した。
彼は今回の事件の責任をとって、あの場で火に撒かれて死ぬことを考えてたそうだったが....
『必死になって自分を引っ張り出す、あの少女の姿を見て....使命を果たそうとする心意気に責任の取り方を変えないといけない』
という供述をしたそうだ。
その話を聞いたミライはどこか嬉しく感じていた。
誇らしいと言うのも一つかもしれないーー
それと同時にどこか複雑な感情も溢れていた。
彼がそんなことしなければ、他の要救助者達はあんな思いをしないで済んだのにと言うことだ。
でも、ルーシーに言われた。
「ミライのおかげで反省の機会を与えたんだよ。だから、ミライは立派だよ」
と言う言葉がその感情を少しだけ明るい方へ送ってくれた。
そんなことを考えていると浴場にくたびれた顔をするルーシーが入ってきた。
「はぁぁ。とりあえず、一旦戻ってきたよミライ」
ルーシーはそう言うなり、オラオラと言いながら身体をシャワーで流してミライの横に飛び込むように入ってきた。
「一旦休憩で風呂だけ入りにきたのよ〜まだまだ、聴取があるみたいなのよね。
それにしてもあのアジトの場所を抑えられたのはかなりよかったみたいで....
私は知らないけど、警察はマークしてた組織の壊滅に一歩近づけたとかって話もちきりだよ」
「そうなんですね...なんかそれを聞くとーーー」
「そうそう、それにマリンセイルで大規模なテロも計画されたとかで、秘密の武器庫まで見つかったんだよーー
だから、ミライはすごいことをしたんだよ」
ルーシーはどこか興奮気味にそう言ってたが実感がわからないでいたがーー
そして、ルーシーが一息置いて言った言葉を聞いてその実感を感じられた。
「要救助者が多くあるような災害を防げたのよ....」
それを聞いたミライはふと自分が手当てをしたあのテロ事件のことを思い出したーー
あんな事件がもっと起きてたと思うとゾッとするし、それに...あの火災現場のことを思い出してそれを防げたと言うのはどこかよかったと思えることに気がついた。
「もーそんなに褒めても何も出ませんよ」
ミライはどこか照れ臭くなって、そう言ってルーシーの方へ近づいて彼女の肩を揉んだ。
「あ、すごいいい感じ...でも、そろそろ行かなきゃ。まだ仕事が続くから」
「うん。オッケーいってらっしゃい」
ミライはそう言ってルーシーの背中をポンと叩いた。
叩かれたルーシーはどこかニッコリとした表情を見せてミライにこう言った。
「お疲れ様。じゃあ、またあとで」
ルーシーはそういうと湯船から出て急ぐように浴室から出ていくのをミライは見送った。
ミライはルーシーが出た後を見計らって、自分もそろそろ出ようと思い脱衣所に出た。
部屋に戻ったミライは机の上に置かれた手紙があるのに気がついてそれを開くことにした。
文の最初には感謝を示す言葉が丁寧に書いてありその差出人を見てどこか嬉しい気持ちと誇らしい気持ちになった。
手紙の差出人は、警備任務の時に救護をした女性とその家族からだった。
あの火災で救助した中にも親戚がいたそうでそれも合わせて感謝を伝えるための言葉が並んでいた。
「これが私たちの仕事だよ。ミライーーー」
そう後ろからリザの声が聞こえて、振り返るとそこにはトレーニング終わりであろうリザが立っていた。
「こうして感謝されるーーー私たちの仕事はそんな仕事だ。
今回はミライにとってかなり過酷な経験だったと思ってドン隊長と一緒に心配してたんだが...
今の表情を見てどこか安心したよ」
ミライはそれを聞いて急に恥ずかしくなって顔を赤らめてリザから視線を逸らした。
それを見たリザはこう言った。
「いいんだよ。時には笑みを見せないとねーーーその思い大切にしておきなよ」
「は、はい。なんか恥ずかしいですが...人を助けたって言う実感を感じた気がします。
きついお思うこともありましたが、私...
すごくよかったって思います」
ミライはそう心の中で思ったことをリザに伝えた。
リザは微笑んでこう言ったーーー
「これからきっとまだまだ、きつい現場はあるかもしれない。
でもこの思いは大切にしておいてね。
忙しさに忙殺されて何か大切なことを忘れる時もあるかもしれない。
でも、私たちの仕事はその時にある感謝を聞くことができるんだよ。
そのために頑張るのも一つかもしれない....どんなに挫けそうになっても、その経験がきっと助けになるよ」
「はい!分かりました!」
ミライはそう返事を返すとリザが思い出したかのようのこう言った。
「あ、そうだ!ドン隊長からだけど、今晩バーベキューをするから来てねって言ったよ。
私は用事で行けないから、ミライは行ってきて楽しんできてよ」
「了解です!」
ミライのその返事を聞いたリザは思い出したかにようにハッとしてこう言った。
「ごめん。ミライ、急ぎなのを忘れてた!私はもう言っちゃうね!」
「分かりました!」
ミライはそう元気よく返事を返すと、リザは手を振って素早く部屋を後にしていったーーー
リザが出ていったあとでふとあることを思い出した。
それは兄が消防士として勤務したての時だった。
当時、病気がわかって落ち込んでたミライに対してふと現場であったことを話してくれたのだったーー
どんな内容だったから少し朧げになっていた。でも、仕事のことだから詳しくは語ってくれなかったのもあるのかなと感じる。
兄も同じく惨事を経験した。
その時、燃え盛る炎に圧倒されながらも中に人がまだいると言う情報を聞いたので、
最先着だった兄のポンプ隊は屋内進入を行ったとかーー
怖いながらも煙の中でかろうじて息をする人を見つけて兄はそれを引き摺り出した。
諦められなかったことを兄が言っていた。なぜなら....
『俺が助けないと誰が助ける。怖いから諦めたいからなんて言ってられない、俺は消防士だ』
と言ったのをミライははっきりと覚えていたーーー
その時に言った兄の表情がふと思い浮かび、窓の反射で映った自分自身の顔もどこかそれに似ているような気がしていた。
どこか一歩ミライは進めたような気がしたーー
「とりあえず、ちょっと眠いから寝ますかーーお昼寝最高ですーー」
そういってベッドにミライは飛び込んで目を瞑った。
大変なことだった....
けど、ほんの一つだけかもしれない。
それでも自分が想像して憧れて兄や父のような人に近づいたのかなとミライは感じてどこか嬉しくなっていた。
そんなことを思っているとワクワクして昼寝どころではないのかなと思っていた矢先、気がついたらすっかり日は傾いて疲れ果てたルーシーが肩をポンポンと叩いて起こしにきていた。
「ミライ!ドンさん迎えにきてるよ!!バーベキュー行こ!」
「お、オッケー!」
ミライはそう言うとひゅっと起き上がって準備を始めたーーー
ルーシー「ミライって疲れるとこんな感じなんだね」
ミライ「うん...やっぱり疲れた見たい。流石にこんな時間に起きるなんて思いませんでした...」
ルーシー「ドンさんが待ってるから早く行こ。それに私昨日から何も食べてないから早く、美味しい肉食べたいんだよ!急いで」
ミライ「明らか、最後が本音のような....オッケーです。急いで行きましょうぞ!私もお腹すいた...」
ドン「早くしてくてよ!店で申し出に肉に火は入れ始めてるから、到着した頃にはメリッサが切り分けてるかもしれない」
ミライ「急ぎますよ!ルーシー」
ルーシー「え、早っ!」
ミライ「肉ぅぅ!」
ルーシー「元気だ....あ、待ってミライ!」




