ココの日常①
“今日の一冊”で紹介させていただいたので、番外編を投稿しました。
この話は、アルファポリス様で、既に投稿していた話になります。
私の名前は“ココ”と言います。
今は、チェスター辺境伯夫人となった、フェリシティ様にお仕えしています。
今のフェリシティ様は、本当に幸せそうで、毎日笑顔で過ごしています。
そう言えば、最近は青色の瞳を殆ど見ていない気がします。
良い意味で、感情豊かになっている─と、言う事なんでしょう。
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私の両親は、私を生んだ後直ぐに病気で亡くなり、私は孤児院で育てられました。そして、10歳の頃に、当時のチェスター辺境伯の目に留まり、そのまま使用人として迎え入れられた──のではなく、とある女の子の護衛兼侍女として鍛え上げられる事となったのでした。
辺境伯様は、本当に容赦がなかった。それでも、厳しくともそれが嫌ではなく、楽しいとさえ思いました。
そして、私が出会ったのが、フェリシティ=エルダイン様でした。琥珀色の髪に青い瞳の可愛らしい女の子でした。出会った頃のお嬢様は、いつも笑顔でした。
それなのに────
ーあんのクズ王子。一体どうしてやろうかしら?ー
いっその事、裏でサクッとやっちゃう?やって良いかなぁ?王妃陛下も、許してくれるんじゃないかなぁ?
自分で確認する事すらせずに、T(ティー←名前を呼びたくない)嬢の言う事を鵜呑みにして、お嬢様から笑顔を奪ったクズ王子。騙されてるとも知らずに、T嬢に笑いかけるクズ王子。
ーある意味お似合いか?ー
そう思うと、少しだけ気持ちが落ち着いた。
そして、あのクズ王子はやらかして、王妃陛下からも罰を受けた。T嬢も。
そんな2人とは反対に、お嬢様─フェリシティ様はエスタリオン様と思いを通じ合わせて婚約。
学園生活中からの、エスタリオン様の外堀埋めと、シリル様の働きで、それはそれは可及的速やかに決まった。
ー腹黒人間の仕事は早いー
とは、口に出しては言いません。
兎に角。エルダイン辺境伯のお蔭で、カルディーナ王国における心配の種も跡形も無く取り払われた。
後は、あのクズ王子がどんな行動をするのか未知数だった為に、私とフェリシティ様は、あまり時間を置かずにカルディーナ王国へと出立した。
それは、正解だったようで、私達が出立した後、何度かクズ王子からお嬢様への突撃があったようです。それが、謝罪の為なのか何なのか─勿論、突撃の理由を訊く事もなく、シリル様が全て跳ね除けたそうです。
ーひょっとしたら、怒らせたら一番怖いのは、エスタリオン様もですが……シリル様かもしれませんー
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旦那様であるエスタリオン=チェスター様は、本当にお嬢様─奥様となったフェリシティ様の事が………好き過ぎる。
どんなに忙しくとも、必ず家に帰って来る。どんなに夜遅くなっても、奥様が寝てしまっているだろう時間になっていても、必ず帰って来て、必ず同じベッドに潜り込む。
「フェリと、一緒に寝るだけで癒やされるんだ。」
「仕事が忙しい時は、無理して帰って来ずに、宿に泊まった方がいいのでは?」と、奥様が、旦那様の体を心配して言ったところ、そんな返答をしていた。
閨ごとの翌日なんて、本当に大変なのだ────奥様が。
朝が強かったフェリシティ様。なのに、朝はなかなか起きられず、いつもより少し遅めのブランチになる。
際どい処に花が散らされていて、着る服のデザインに数日困らされる。ヤンではないだろうけど、一度失ったと思った初恋の相手への愛情?は、半端無くて怖ろしいものがあるな─と思う。
それでも、奥様が幸せそうに笑っているから、これで良いのか─とも思っている。
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「コールドラン子爵は、余程アナベル嬢を気に入っているらしいな。」
奥様が寝た後に帰って来た旦那様が、近況報告をしてくれた。
コールドラン子爵は、色んな趣味の持ち主。一体どんな趣味が?と、前に旦那様とエルダイン辺境伯とシリル様が居る時に訊いた事があったが、3人ともが黒い笑顔を浮かべた為、私はそれ以上訊くのは止めたのだ。
「あの子爵はアナベルを後妻に据え置いたそうだ。そして、毎夜毎夜……楽しんでいるらしいよ。」
ーえ?ヤダ、そんな怖い話はしないで下さいー
「それとは逆に、ブリジットの姿を、誰も見てないらしい。一体……何処に行ったんだろうね?」
ーうわぁ─それ、絶対に“知ってるけどね”って言う顔ですよね!?訊きませんけど!ー
ピシッ─と、自分の顔が固まったのが分かった。
「そうそう。それと、急に居なくなったエルダイン邸で働いていた使用人達も、それぞれ、ようやく次の仕事先が見付かったらしいよ。」
ーいやいや、連れ去ったのは私達の仲間──影の者達じゃ───なかった事になってるんですね!?ー
奥様─フェリシティ様に害を加えていた使用人達の仕事先──絶対にマトモではないですよね?何処に決まったか?何て訊かなくても、目の前に居る旦那様が笑っているのだ。マトモではない所に間違いはないだろう。
「この話、態々奥様にする必要はありませんよね?」
「勿論。あぁ、クズ王子と腹黒女が“白い結婚”だと言う事も含めて、態々フェリに言う事はないよ。」
ー今、もう一つ要らない情報が入っていましたけど、それ、言う必要ありましたか?ー
「はぁ──。分かりました。」
軽く頭を下げてから、私は旦那様の執務室から退室した。
こうして、時々近況報告をされるが、本当に…色々と怖ろしいモノがある。たまには、嬉しい近況報告も耳にしてみたいものだなぁ─と思いながら、私の今日1日の勤めを終えた。
もう1話(新作を)続けて投稿します。




