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いいね、ありがとうございます。


義母と妹が、リオの配下の人達に連れ去られた翌日、タウンハウスの使用人が8割程──これまた、消えていた。


ーえ?消えたって、怖くない?ー


その8割とは、料理人を含め、私に対して害を加えた使用人達だった。まぁ、後の2割も、私と接点がなかった使用人だけど。

兎に角、今のエルダインのタウンハウスは不気味な程に静かだ。義母と妹も居なくなり、父は辺境地に帰るし、私はカルディーナ国へと行く為、これから先、このタウンハウスに今迄のように沢山の使用人が必要になる事はあまりないだろう。暫くの間は、残った使用人だけで回して行くそうだ。

ちなみに、カーソンも父と一緒に辺境地へと戻るそうだ。



それからの事はあっと言う間だった。

エルダイン領に帰って来た─と思えば、既に、私がカルディーナ王国へ行く支度が整っていた。


ーえ?そんなにも早く、私に出て行って欲しいって事?ー


引き攣った顔をしているだろう私の横に居るリオは、何故か苦笑していた。




今すぐにでも旅立つ事もできたけど、疲れを取る為と、受け入れ先の伯爵家の都合もあるだろうと、3日後にカルディーナに向けて出立する事になった。


その間、兄と少しだけ話をする事ができた。





「それじゃあ、お兄様はジュリアス殿下の側近にはならず、エルダイン(ここ)の領地運営のお手伝いをするんですね。」


「生徒会役員に選ばれて、ただ断れなかっただけで、もともと、側近なんてものには興味なかったからね。1年だけ我慢すれば良いと思ったから。」


相変わらずの無表情な兄だ。リオや父からは聞いているけど、本当に何を考えているのか分からない。

何でも?表情に出る父より、貴族には向いているのかもしれない。


兎に角、兄が私に何も言わない、隠すのなら、私も知らないふりを通すまでだ。それでも──


「お兄様。お兄様のお陰で邸から出られて、学園生活は比較的穏やかに過ごす事ができました。ありがとうございました。これからは……父と共に、頑張って下さい。」


それだけ言って、座っていた椅子から立ち上がり、兄と話をしていたリビングルームから出ようと、ドアを開けた時─


「カルディーナに行っても……元気でな……」


と、後ろから声を掛けられて、私は顔だけ振り向いて「ありがとうございます。」とだけ言って、部屋を後にした。








「おかえり」


自室に戻って来ると、両手を広げたリオに迎えられた。


「ん?その手は何?」


ー格好良さをアピールしてるの?え?ナルシストなの?ー


何て思っているうちに、リオが私との距離を詰めて、そのままギュッと───抱きしめられた。


「ふぅ──っ!」


ーそんなギュッって力を入れられると、変な声が出るからね!?いや!それよりも!!ー


「リオ?そんなにも抱きつくの…やめてくれる!?」


「これ位は良いだろう?婚約者なんだし。」


「“婚約者”は、免罪符じゃないからね?兎に角、離してくれる?」


モゾモゾと動いてはみるけど、全く微動だにしないリオ。


「──フェリが甘えてくれない。」


リオは、むうっ─と、拗ねたような顔をしながら腕の力を緩める。2人の間に少しだけ間が空いたけど、未だに腰に手を回されて固定されたままだ。


「甘えてくれない─って……。私は、十分リオには甘やかされてると思うけど?」


「俺が()()()()んじゃなくて、フェリから俺に()()()欲しいって事。」


「えー……なによソレ……ふふっ」


「まぁ、これから時間はたっぷりあるから、フェリが俺に甘えてくれるように頑張るよ。」


何を頑張るの?とは訊けなかった。そう訊く前に、またリオにキスをされたから。触れるだけのキス。またすぐに離されて、至近距離で視線が合った。それから、またリオの顔が近付いて来て、私も目を閉じて受け入れると、今度は少しだけ長いキスをされたのだった。








そして3日後。予定通りに、私とリオはカーディナル王国へと出立する。

お別れは、アッサリしたものだった。他国と言っても、王都よりも近い国だしね。

兄は相変わらずの無表情だし、父は…涙が溜まっていたのは気のせいだろう。そして、カーソンは、私が好きだった焼き菓子等を詰めたバスケットを用意してくれていた。


お互い軽く挨拶を交わした後、リオと私とココは、リオが手配していたチェスター辺境伯の馬車に乗り込んだ。




「窓を開けようか?」


ソロソロと動き出した馬車の中で、リオが声を掛けてくれる。


「──ううん。開けなくて良いわ。」


父と兄とカーソンが見送ってくれているだろう─と思うけど…


「──本当に、“今更”なのよね……。今更優しくされたって……すぐには許せないよね?本当に……今更よ………。」


「フェリ……。そうだな。許さなくて良いと思うよ。フェリが望むなら、俺がいつでも仕返ししてあげるから。」


そう言って、リオはその言葉とは反対に、優しい笑みを浮かべて私の肩を優しく抱き寄せてくれた。







今はまだ、振り返らない






今は、前だけを見て進んで行く



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