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46 これもまた、今更

ブクマ、ありがとうございます。

辺境伯としての意味をもたなくなったエルダイン辺境伯は、昔とは違って伯爵の位と同等扱いとなったけど、チェスター辺境伯は今でも侯爵と同等扱いされている。

それは、過去に“サファイアの瞳”を持った者を守護してきた恩恵か?とも思ったけど、リオの口振りからは、違う理由があるのでは?と思った。教えてくれるのなら嬉しいが、教えてもらえないのなら、それはそれで諦めるしかない。


「フェリ、()()を訊き、知る意味を理解してる?」


相変わらず綺麗な微笑みを浮かべたままのリオ。

そして、私の横で顔を引き攣らせている父。


「えぇ、しっかりと理解しているわ。私は……リオの気持ちを受け取ったのだから。リオと共に歩んで行くと決めたのだから。」


ハッキリとリオに伝えると、スッと目を細めて嬉しそうに笑った後、手を握られて、その指先にキスを落とした。


「───っ!?」


「それなら、フェリには全て話すよ。」








「王家の影?」


「そう。それこそ、争いの絶えない時代は王族を武力をもってして護っていたらしいんだけど、今では、主に情報の収集をしている。それなりの危険性もあるから、結局は自分の身を守る為にも色んな武術を習得するんだ。この事は、国王両陛下と極一部の貴族しか知らない。」


なるほど。だから、チェスター辺境伯は、未だに侯爵並の地位を保っているのね。


「だから、フェリは安心して俺の所に来れば良いよ。フェリは、俺が必ず護るから。」


今度は、フワリと優しく微笑むリオ。その笑顔を見ると、ホッと安心する自分が居た。





「──あ、少し気になる事が…お父様……」


私の横で、相変わらず項垂れている父に声を掛けると、ソロソロと顔を上げて「何だい?」と、小首を傾げた。


「訊いて良いのか分からないけど…その……アナベルは…お父様の子なの?」


ブリジットとは別れたと言っていたし、兄のシリルは認知していたと言っても、母が儚くなる迄は違う邸に住んでいたのだ。それなのに、態々、この父がブリジットに会いに行き、そう言う事をするだろか?


「うん。アナベルは私の子ではないよ。アレはね、使用人だった男との間の子なんだ。妊娠したと気付いた後、理由をつけて私を呼び出してね。そこで、あの女─ブリジットは私に媚薬を盛って、私との既成事実を作ろうとしたんだ。でもね、私もそこ迄馬鹿じゃないから、媚薬の入ったお茶をブリジットに飲ませて、その間男の寝ていた部屋に放り込んでやったんだよ。」


それから、2人が目覚める前にブリジットを部屋まで運び、ベッドに寝かせた後、父も横に入り込み、あたかも─な状況を作り上げた。

間男との子を妊娠した時に、ブリジットを切り捨てても良かったのだが、切り捨てた後、ソフィアに関してブリジットが何をするか言うか分からなかった為に、このままの関係を続ける事にしたそうだ。


「ブリジットが好き放題しているのも、今のうちだ─と言うか、もう終わらせるけどね。」


と、父がようやく顔を上げて笑顔を見せた。


「フェリシティの安全は確保できたから、シリルも喜んでブリジットとアナベルを追い出すと思う。」


ーあ、追い出すのはお兄様なんですね?お父様は……お父様には無理なんですね?ー


なんて、これも口に出さない方が良いよね?


「それじゃあ、お兄様は、そのままエルダイン辺境伯の嫡男として残るんですね?」


「そうだね。シリルが残って、私の後を継いでくれると言うなら、私は大歓迎だからね。きっと、父上─エルダイン前辺境伯のお祖父様も、シリルなら喜んで………()()と教えてくれると思うよ。」


と、何故か父は、最後は遠い目になって少しだけ震えていた。


ーこんな父だったとはー


とは言え、やっぱりこれも、“今更”だと思ってしまう。

下手に隠さずに、ちゃんと伝えてくれていたら、もっと違う関係を築けていたと思う。それが少し…残念だったな─と。

それに、私も苦しい思いをしたのだ。「はい、そうだったのね。」なんて、簡単に心を許せる訳も無くて──何とも複雑な心境である。


「フェリシティ。別に、私やシリルの事は気にしなくていいよ。今更こんな事を言って、都合良くフェリシティに好かれようとは思ってないから。私もシリルも、守り方が間違ってると自覚してたからね。フェリシティが辛い思いをした事には変わらないから、フェリシティは、私達を許さなくても良いんだよ。」


男前?な発言をしている父ではあるが──


ー目に涙が溜まってますけど?ー


なんて事は言わないし、見なかった事にします。

その言葉を、ありがたく頂戴しておきます。

目の前で、笑いを堪えているリオの事も、気付かなかった事にしておきます。


兎に角、私にとっては、何とも色々あった濃い2日となったのでした。






この時の私は忘れていた。



今から帰る邸に、義母と妹が居る事を───



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