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37 ダンス

いいね、ブクマ、ありがとうございます。


「貴方達も、今迄ありがとう。これからの事を少し話をしたいから、8時少し前に遣いを立てるから、申し訳無いのだけど、私の執務室迄来てもらうわね。それ迄の間、貴方達は自由よ。」


第一王子とティアリーナ様がダンスを踊っている最中に、王妃様からそう言われた。


“自由”


ー本当に、自由なんだー


そう思ったタイミングで、第一王子とティアリーナ様のダンスも終わり、参加者が拍手を送る。


ダンスを踊っていた2人が軽くお礼をした後、ペアになりダンスを踊ろうとする人や、食事に向かう人、お喋りを始める人など、皆各々自由に動き出した。


視界の隅に、第一王子とティアリーナ様が入ったけど、私は気にする事なくホールに目を向けて──


「フェリ」


すぐ近く迄来て私の名を呼んだリオに、しっかりと視線を向けた。


「取り敢えずは…“おめでとう”かな?まだ……一波乱ありそうだけど。」


「あるでしょうね。ずっとこっちを見てるから。取り敢えずは……ありがとう。」


「はい、これ、受け取ってくれる?」


と、リオは自身のポケットに差し込んでいた、赤い1輪の薔薇を私に差し出す。


「えっと……もう既に…バイオレットローズをもらったわよ?」


「うん。あれは、フェリの色だけど、これは俺の色。今日のフェリは何の色でもないだろう?かと言って、アクセサリーは着けられないから、その代わりにね。俺の色を……着けていただけますか?」


いつもの自信満々なリオはどこへやら。少し眉毛を下げて不安そうに私を窺って来るリオ。いや、これも、リオの計算のうちかもしれないけど。

それでも、そんなリオに私の気持ちは…傾いてしまっているのだ。やっぱり、チョロいのかもしれない。


「はい、喜んで。」


自然と笑みが零れて、その薔薇を受け取った。

すると、リオが珍しく少し顔を赤くして、手で口元を覆った。


「フェリが可愛い─」


「ん?何て?」


リオの声が小さかった事と、丁度また演奏が始まった為によく聞こえなかった。


「──いや、何でもない。さぁ、俺達も踊ろう。」


いつもの腹黒な笑顔ではなく、爽やかな笑顔で手を差し出して来たリオは、いつもよりも格好良く見えてドキッとした。


ー恋をすると、同じ相手でも違うように見えるから不思議だなぁー


ただの幼馴染みだったリオの笑顔を見ても、何も感じなかったのに。意識してしまうと、同じ笑顔な筈なのにドキドキしてしまう。こんな感情は、第一王子に対しては…一度も持った事はなかった。確かに、幼い頃、一緒に走り回って遊んでいた時の第一王子の事は好きだったと思う。でも───と、そろそろ曲が終わり掛け、私が体を離そうとすると、逆にグイッと腰を引き寄せられて、そのまま私の耳元に口を寄せて


「続けて踊っても?」


「──え?」


「フェリを、誰にも……渡したくないんだ……」


「────ゔっ……。」


あまりにも恥ずかしくて、私はそのまま顔を隠すようにリオの胸に顔を埋める。


「オッケーと言う事で…良いよな?」


頭上で嬉しそうに囁いたリオは、更に私の腰にあてている手にギュッと力を入れて───



結局は、そのまま3曲続けて踊ったのだった。




そんな私達の様子を、ずっと見ていた第一王子には、私は全く気付いていなかった。





それから、パーティーがお開きになる8時少し前。

王妃様が言っていた通りに、女官に声を掛けられてホールを後にした。







*王妃執務室*


「4人とも、長い間ご苦労様でした。貴方達は婚約者とはならなかったけれど、優秀な事には変わりないわ。自信を持って次に進んで欲しいと願っているわ。これからの事は、私が責任を持ってフォローさせてもらうわね。本当に、今迄ありがとう。」


王妃様は、王妃教育の間には見せる事がなかった、とても可愛らしい笑顔で私達を労ってくれた。


因みに、第一王子とティアリーナ様は、パーティーの最後迄ホールに居る為、執務室(ここ)には、王妃様と候補者だった4人しか居ない。


「それと、気付いているとは思うけれど……第二王子であるジュリアスが立太子する事になったわ。その為、メルヴィルは、婚約者であるティアリーナ嬢のグレイソン公爵家に入る事が決まったわ。」


ーやっぱり、ジュリアス様が立太子するのねー


「それで──」


と、王妃様が更に言葉を続けようとした時、部屋の外が騒がしくなった。

すると、王妃様の側に控えていた侍女長が軽く頭を下げた後、扉の方へと向かい、扉を開けると


「母上!一体どう言う事ですか!?」


と、第一王子が大声を上げながら執務室に入って来た。

そして、その後ろには、困惑顔をしたティアリーナ様も居た。


ーやっぱり…来たわねー


私はそっとため息を吐く。そのまま視線だけ王妃様に向けると、王妃様はニッコリ微笑んで第一王子とティアリーナ様を見ていた。


「メルヴィル、ティアリーナ嬢、待っていたわ。私も、あなた達と話がしたかったのよ。テレッサ嬢、ノーラ嬢、ミンディ嬢は申し訳無いのだけれど、今日はこれで下がってくれるかしら?」


何が起こっているのか分からないが、王妃様に言われればそれに従うしかない為、3人は王妃様に挨拶をして退室し、残ったのは王妃様、第一王子、ティアリーナ様、私の4人。




「話は長くなると思うから、皆、座ってちょうだい。」


王妃様に声を掛けられ、私達4人はソファーに座った。






ーさあ、これから…どうなる?ー





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