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36 お披露目


「ご案内致します。」


パーティー参加者が入場し終えただろう時間─6時少し前に、この部屋迄案内してくれた城付きの女官が、また訪れて来た。


「分かりました。」


ココはこの部屋で待機となる為、私はココに視線を合わせて静かに頷く。


「お嬢様、いってらっしゃいませ。」


ココに満面の笑みで見送られた。






******



案内されたのは、ホールの入り口の扉の前。今は、その扉はピッチリと閉じられている。

その扉の前には私と同じような格好をしている4人が1列に並んでいて、その4人の前─先頭に王妃様と並んでティアラを戴いている候補者が、第一王子の婚約者である。


ーさて、この扉が開いた瞬間、どうなるのかしら?ー


と思っていると、扉の向こう側─ホール内から少しのざわめきが起こった。扉が閉じられている為、中で何が起こったのか全く分からない。

そのざわめきも落ち着き暫くした後、扉の両サイドに控えていた騎士が動き出し、内側から扉が開かれた。


王妃と婚約者が並んだままでホール内へと進んで行くと、そこでまた小さなざわめきが起こる。そのままその2人が進んで行き、少し間を空けてから候補者だった4人が順番にホールへと入って行き、最後の候補者が入場すると、後ろで扉が閉まる音がした。

そのまま振り返ることなく前へ進む。

王妃様と婚約者は、ホール壇上に立つ国王陛下と第一王子の前迄行き、候補者だった残り4人は左側に並び立つ。


その左側へと逸れる時、ふと視線を感じてチラリとそちらに視線だけ向けると──


顔色を悪くして目を見開いている、第一王子と目が合った。


そして、その口が


“なぜ?”


と、動いた。


それでも、私は何も見なかったかのように視線を前に向ける。そして、候補者だった4人が左側に並び、ホール側に体を向けると、王妃様と婚約者もホール側に向き直る。



その婚約者の頭に輝いている宝石は青色──



ティアリーナ様の色だ──



「卒業生の皆さん、本日はおめでとう。今日、このような善き日に、もう一つのめでたい発表をさせていただきます。皆さんはもう、気付いているかと思いますが─こちらが、本日より()()()()であるメルヴィルの婚約者となります。」


王妃様が軽く挨拶をした後、その婚約者に視線を向けて促すと、彼女は半歩程前に出て──


「ティアリーナ=グレイソンでございます。宜しくお願い致します。」


そう挨拶するティアリーナ様は、花が綻ぶような微笑みだ。ホールに居る誰もが「ほう─」と、溜め息を漏らす程。体全体からも、喜びに溢れているのが分かる。そして、ホール内に起こった拍手喝采の中、2人はもう一度国王陛下と第一王子の方へと向き直り、そのまま王妃様が第一王子のもとへとティアリーナ様を連れて行く。


ホールに入る前のざわめきは──


()()()()メルヴィル”


と、王妃様は言った。


立太子した場合ターコイズブルーのサッシュを身に着けるのだが、その第一王子は……着けていない。


()()()()()なんだろう。


今、第一王子の顔色が悪いのは、そのせい─と捉えられているだろう。実際は──。


その時、グレイシーとリオが視界に入った。その2人は……ものすごく……綺麗な笑顔だった。


これから、第一王子と婚約者になったティアリーナ様とのダンスが始まる為、王妃様がティアリーナ様を第一王子の側へと促す。

誰もが見惚れる程の笑顔のティアリーナ様とは対象的に、相変わらず顔色の悪い第一王子は、王妃様とティアリーナ様の2人に忙しなく視線を漂わせている。


「──メルヴィル」


と、一向に動かない第一王子に対し、国王陛下が名を呼ぶと、第一王子はビクッと体を震わせた後、ソロソロとティアリーナ様へと手を伸ばし、ティアリーナ様はその第一王子の手を取った。

それからティアリーナ様が第一王子の横に立ち、その手を第一王子の腕へと絡ませ、2人で並び立つ。


これで、婚約者決定だ。


ーようやく、私は…晴れて…自由の身だ!!ー


笑いそうになるのを、小躍りしそうになるのを、無表情のままでぐぅ─っと堪える。そんな私をグレイシーとリオがニヤニヤして見ている。


ー後で覚えておきなさい!ー


「2人ともおめでとう。ティアリーナ嬢、これからメルヴィルを宜しく頼む。」


国王陛下が笑顔で祝福すると、ティアリーナ様も笑顔で答える。


「それでは、これから皆には心ゆくまで楽しんでいってもらいたい。本当に、卒業おめでとう。」


第一王子とティアリーナ様がホールの中央へと移動した後、2人のダンスが始まった。

至近距離で顔を見合わせるダンス。そこで、ようやく?ティアリーナも()()()()と気付いたのかもしれない。

ダンスを始めてすぐ、あれ程の笑顔だったティアリーナ様だったのに、今では困惑したような表情で第一王子を見上げている。

その、見上げられている第一王子は、心ここに在らずと言ったように視線が定まらす、顔色も悪いままだった。




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