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34 王妃の頼み事

卒業式迄、後1ヶ月。



今日も学園のサロンで4人でお茶をしている。


「卒業式の後に、立太子と婚約者のお披露目があるんだよな?」


と、リオが質問すると、エルド様がそれに答える。


「卒業式は午前中に終わるから、その日の夕方に王家主催の卒業祝いのパーティーが開かれるんだ。そこで、メルヴィルが立太子するなら、その場で国王陛下が宣言される。正式な立太子の式は、また改めて行われるけどね。で、その宣言の後で、王妃陛下が婚約者を連れて入場するって言う流れになると思う。」


「私達、候補者のその日の流れは、卒業式の後は王城に行く事になっているの。5人全員別々の部屋で待機して、パーティーの支度をするのだけど、そこに、婚約者となる人が居る部屋にティアラが届けられるらしいわ。5人皆、同じドレスを着るけど、ティアラを戴くのは婚約者だけ。選ばれなかった4人は、パーティーホールの端に控え立つって感じね。」


その婚約者の発表が終わると、その2人がダンスを披露し、それが終わると後は自由に過ごす事ができる。ダンスをするのも良し、食事を楽しむのも良し、会話を楽しむのもアリなのだ。


「婚約者から外れたフェリも、ダンスをしても問題無いのか?」


「ええ。婚約者から外れた段階で、ただの令嬢だからね。4人とも自由よ。」


きっと、その瞬間から婚約者から外れた令嬢にアピールを始める子息もいるだろうな─と思う。落ちぶれた辺境伯の私は別として、他の3人は全員優良物件だからね。


「それじゃあ、フェリ。俺とダンスを踊ってくれるか?」


「───え?」


「他の()が付いたら面倒だからな。」


「───むし………」


「そう。“フェリは俺のだ”って、知らしめておかないとな。」


「──なっ!?」


リオがまたサラッととんでもない事を口にして、ニヤッと笑っている。

こっちは恥ずかしいやら何やらで、言葉すら出て来ない。ただただ顔が真っ赤になっただけだった。







「あの2人、俺達の存在忘れてるよな?」


「忘れてるわね…。ま、2人が幸せ?楽しそうで良かったわ。」


と、グレイシーとエルド様が私達2人を、生温かい目で見ていた事には気付かなかった。







日は穏やかに過ぎて行き──








*卒業式2日前の国王の執務室*



「いよいよ明後日か……。」


「そうですね。」


そこには、国王両陛下と王妃付きの侍女─レイアの3人が居た。


「最後迄……()()には来なかったのだな?」


「はい。残念ながら……。」


国王の質問に答えた王妃の答えに、国王は落胆の色が隠せなかった。


「さて、それでは……どうするのだ?」


()()()()ですわ。()()()()には……丁度良いでしょう。レイア、貴方に……頼みがあります。明後日、レイアが婚約者の元へティアラを持って行くように。」


「──私が…ですか?」


普段、あまり表情を顕にしないレイアが、珍しくギョッと目を見開いた。


本来であれば、ティアラを婚約者の元へ持って行くのは王子付きの侍女だからだ。


「それで──メルヴィルの指示通りに持って行き、そこに居る令嬢を、レイアの目でしっかり見て、その令嬢が何か言ったなら、レイアの目と耳で判断して欲しいのよ。」


「“私の目と耳で”─で…ございますか?」


「ええ、そうよ。その判断に対しては、レイアには一切責任は問わないわ。王妃である私が責任を持つわ。レイアには、しっかりと、その令嬢を見て欲しいだけよ。」


レイアは更に戸惑う。

王妃付きの筆頭侍女であり、侍女長でもあるレイア。勿論、王妃から信頼されている自覚も自信もあり、自分も同じ─それ以上の信頼を王妃に寄せている。精一杯その王妃に仕えている。


その王妃からのお願いだ。勿論、“否”とは言わない─が。どう言う意味、裏があるのか全く分からないのだ。


「レイアなら、()()()分かるわ。」


と、王妃はレイアを安心させるように微笑む。

そうして微笑まれると、レイアも少し気持ちが落ち着き


「承知致しました。」


「レイア、ありがとう。ティアラは明後日。メルヴィルに、どの部屋に持って行くのか確認する時に渡すわね。無理を言って、ごめんなさいね。」


と、王妃は、今度は少し哀しげに微笑んだ。









*エスタリオン*



『やはり、色までは確認できませんでした。申し訳ありません。』


『流石は、王妃陛下だな。これが馬鹿の管理下なら、直ぐに判っただろうけどね。ご苦労様。後は、俺が動くだけだから良いよ。ありがとう。』


『是』



そう言ってまた、一つの影が去って行った。


結局、ティアラの宝石の色は判らず仕舞いだったが、これは想定内だ。ティアラは王妃陛下の管理下にある。そう簡単には情報を得る事はできないと思っていた。


その王妃陛下の子供がメルヴィル………。


「本当に、DNAは何処に行ったんだ?」


不思議で仕方無いが、そのお陰で俺は手に入れるチャンスを得たのだ。


「うん。やっぱり、最後にはお礼を言っておこう。」


1人笑いながら、ベットに潜り込んだ。




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