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33 ホラー?

「おはよう」


「──おはよう…ございます。」

「「「おはようございます。」」」


新学期初日。

教室でいつもの4人で話していると、第一王子の方から挨拶をされた。しかも、とても爽やかな笑みを湛えて─。


ーえ?何かあった?ー


と思ったのは私だけではなかったようで、グレイシーはキョトンとして、リオとエルド様に至っては顰めた顔をしていた。


「あの笑顔は何?」

「ある意味怖くないか?」

「冬休みの間に何か…あったのか?例えば─関係回復?みたいな出来事とか。」


「「何もなかった(わよ)。」」


エルド様の質問に、私とリオの声が重なった。


「冬休みの間は、私もリオも領地に引き篭もっていたのよ?殿下どころか王城にも行っていないから。」


冬休み前に会ったお茶会の時だって、第一王子とはまともに話もしていなかった。


「もうね……行動が予測できなくて怖いかもしれないわ…。」


そう言うと、グレイシーには背中を撫でられ、リオとエルド様に至っては、更に顔を顰めて何かを考えるように第一王子を見ていた。





そんな、ちょっとホラー?な2学期が始まってから1週間後。第一王子が3日続けて学園を欠席した。その3日目の放課後。





「どうやら、第二王子が王都に戻って来たらしい。」


「第二─ジュリアス様が?」



今日はエルド様が、()()()()()話がしたい─と言う事で、4人でオルコット邸にやって来た。


「うん。これは、別に極秘でも何でもないから、ここで話しても問題無いから安心してくれ。どうせ、すぐに知れ渡ると思うし。」


このタイミングで王都─王城に帰って来るって──。


第一王子の二つ年下の第二王子。来年度から学園に通う事になるから。


若しくは──


第二王子が立太子するかだ。


そう言えば、側近候補の兄が、カレイラ様から王妃様からの手紙をもらっていたよね。きっと、エルド様ももらってるだろう。


「もう、婚約者も王太子も決まってるのかもしれないな。あぁ、これは俺の推測だけだし、エルドに答えを求めていないから答えなくていいよ。」


少し困った顔をしたエルド様に、リオは手をフリフリと振る。


「兎に角、フェリシティが解放される迄後半年ね。解放されたら、オルコット邸(ウチ)でお祝いでもする?きっと、お母様も喜んで準備してくれると思うわ。」


「喜んで─って、それも不敬罪だからね?」


「うん。笑ってるフェリシティも同罪だからね?」


なんて、グレイシーと笑い合っていると


「そうだな。今のうちにエルドとグレイシーといっぱい思い出を作っておかないとな。卒業後は、俺がフェリをカルディーナに連れて行くから。」


「ぬぁっ──!?」


リオが当たり前のようにしれっと言う。普段は幼馴染みの範囲内で接してくるくせに、急に、ポンッと男の顔を出すのだ。心臓に悪いから勘弁して欲しい。


「カルディーナと言ってもエルダイン領の隣でしょう?すぐに会いに行けるわ。」


ーいや、私、またカルディーナに行くとは…言ってないからね?ー


軽くリオを睨めば、リオは嬉しそうに笑っているだけだった。







*ティアリーナ視点*



メルヴィル様の卒業迄、後3ヶ月。

私が卒業してからは、週に一度はテレッサ様と登城してお茶をしている。そして、そこに他の3人の候補者が加わる事もある。それでも、私は必ずメルヴィル様の視界に入る場所をキープしている。勿論、フェリシティを、メルヴィル様の視界に入れさせたりはしない。




エスタリオン=チェスター


彼の事を、一応は調()()()()()けど、“若いながらも辺境伯を引き継いだ”としか分からなかった。いや、それだけだと言う事だろう。


ただ、彼が留学生としてやって来てから、色々とうまくいかないようになった。


今迄、フェリシティを見下していた者達も、彼のフェリシティに対する態度を見て、“本当はそんな人ではないのでは?”と疑うようになったのだ。


ニコリとも笑わない。

殿下に対して無礼だ。

殿下に見放された婚約者候補。


もっと蹴落とすつもりだったのに。


メルヴィル様は、いつしか彼とフェリシティの姿を目で追うようになった。それも、少し切なそうな目をして。それがまた、余計に腹がたった。





ある日の5人揃ってのお茶会の後。


「フェリシティ様は、相変わらずメルヴィル様とは…あまりお話ししませんのね。」


と、メルヴィル様に言えば


「フェリシティ嬢は、遠慮しているのかもしれないね。」


と、フェリシティを庇うような発言をするようになった。

そして、自分からも動くようになり、私が何を言っても以前のように鵜呑みにする事がなくなった。


それでも──


メルヴィル様は、私と話をする時は、私の目を見て優しく微笑んでくれる。

フェリシティとは、視線を合わせる事はない。

フェリシティ本人が、メルヴィル様を拒絶している。

だから、私はメルヴィル様と目を、視線をしっかり絡ませる。

私の瞳の色を、メルヴィル様に刻み付けるように。


私は、()()()()()様を愛している。

王太子にならなくてもいい。

ただただ、メルヴィル様の側に居られれば───





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